女囚映画 |
『残酷女刑務所』で一つ文章を書こうと思ったけれども、どうも面白いものが書けそうにない。そこで「女囚映画」として一括りにすることにした。 で、そんな「女囚映画」のプロトタイプを確立した記念すべき作品が、前述の『残酷女刑務所』(71年)である。カルト女優パム・グリアの実質的デビュー作として知られる本作は、ジャック・ヒル監督のテンポのいい演出が奏功して、ロジャー・コーマン率いるニュー・ワールド初の大ヒットとなった。 大喜びしたコーマンは早速ヒルに続編を撮らせた。『ビッグ・バード・ケイジ』(72年)がそれだが、出来は前作には及ばなかった。 |
かくしてロジャー・コーマンが放った3本の「女囚映画」が世界に波及し、数多の亜流作が量産されることになる。日本に渡れば、それは『女囚さそり』となり、イタリアに渡れば、それは「ナチ収容所もの」と形を変える。 ところが、意外にも「ナチ収容所もの」を最初に製作したのはアメリカだった。『ナチ女収容所/悪魔の生体実験』(74年)がそれだ。残忍な女所長イルザにダイアン・ソーンを配したことで、「女囚映画」はここに完成を見る。以上に紹介した作品以外は見る価値がほとんどない。ほんとうにまったく同じ内容だからだ。 ただ、ダイアン・ソーンが主演する「イルザ・シリーズ」3部作は見ておいて損はないだろう。 その意味で83年の『チェーンヒート』は「女囚映画」最後の傑作であろう。リンダ・ブレア、ステラ・スティーブンス、ヘンリー・シルヴァ、シビル・ダニング、タマラ・ドブソンと怪優ぞろいで、これくらいに濃いキャスティングでないと「女囚映画」は楽しめない。 |
備考 |
ダイアン・ソーンにはもう1本『女体拷問人グレタ』があるが、これはジェス・フランコが監督した西ドイツ製のバッタもんで、正式なイルザ・シリーズではない。しかし、輸入DVDのタイトルは『ILSA, THE WICKED WARDEN』で、ややこしいことこの上ない。 |