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ハンニバル
HANNIBAL

米 2001年 131分
製作 ディノ・デ・ラウレンティス
監督 リドリー・スコット
原作 トマス・ハリス
出演 アンソニー・ホプキンス
   ジュリアン・ムーア
   ゲイリー・オールドマン
   レイ・リオッタ
   ジャンカルロ・ジャンニーニ


 原作を読んだ私は 「こりゃパロディだな」と思った。オチがあまりにもアレだったからだ。クラリスがレクター博士に洗脳されて、「食人夫婦」になってメデタシメデタシ、ってなオチなのだ。
 そこで、私はこう解釈した。原作者のトマス・ハリスは『羊たちの沈黙』の予想外の人気に戸惑い、わざとこれを壊しにかかったのではないか、と。つまり、このままでは大衆はハリスに「レクターもの」しか期待しない。そこで「レクターもの」に終止符を打つために、荒唐無稽な『ハンニバル』を執筆したのではないだろうか、と。
 ところが、この推理がまるでデタラメだったことが後に判る。(アタシの推理はまるで当たらないね、どうも)。
 ハリスさん、どうやらマジだったようなのだ。
 映画版『羊たちの沈黙』でクラリスを演じていたジョディ・フォスターに心酔してしまって(要するに、惚れてしまった)、それで、自らをレクター博士に同化させて、こんな続編を書いたんだそうだ。
 これじゃ、好きな女の子にいやがらせする小学生と同じだって。
 ジョディに惚れてレーガンを暗殺しに行ったジョン・ヒンクリーと大して変わりがない。

 だから、レクター博士もストーカー並みの体たらくだ。圧巻だったのが、クラリスの乗用車に入り込み、その匂いを満喫し、ハンドルをベロベロ舐めまわるシーンである。いくら変態のレクター博士とはいえ「それをやっちゃあおしまいよ」ってな迷場面だ。原作を読んだ当時は随分と驚いたもんだが、今思うに、舐めたかったのはハリス自身なのである。(このシーンは一応撮影されたが、最終的にカットされた。当たり前である)。

 ベストセラーになった『FBI心理分析官』によれば、『羊たちの沈黙』にあったような連続殺人犯との1対1の尋問は、現在ではありえないのだそうだ。極めて危険な行為だからである。ましてや、男対女ならばなおさらだ。そんな禁忌を破ってドラマチックな物語を構築した『羊たちの沈黙』の作者自身が狂気に負けた。(しかも、その狂気がストーカー並みの安っぽさ)。それを超大作として映画化するディノ・デ・ラウレンティス御大。『羊たちの沈黙』の前作である『レッド・ドラゴン』の再映画化が控えているそうだが、『キングコング2』の二の舞いを踏まないよう、注意して欲しいもんである(註1)。

註1 観た。マイケル・マンの『刑事グラハム』よりはよく出来ていたが(マンのバージョンでは、レッド・ドラゴンの絵を食べるシーンが省かれていた)、あの取ってつけたエンディングは矛盾だらけだ。


 

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