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ハネムーン・キラーズ
THE HONEYMOON KILLERS

米 1970年 108分
監督 レナード・カッスル
脚本 レナード・カッスル
出演 シャーリー・ストーラー
   トニー・ロー・ビアンコ


 本作はマーサ・ベック&レイモンド・フェルナンデスの奇妙な事件を映画化したものである。ケチな結婚詐欺師がデブでヒステリックな痴女の虜となり、彼女の嫉妬に駆られるままに、カモのオールドミスを殺害して行く。常人の理解を越えた事件である。
 最大の疑問は「どうしてレイはマーサの虜となったのか?」である。
 脚本監督のカッスルはこの疑問に一切答えず、淡々と愛の物語を積み上げて行く。「愛とは理解不能なものなのだ」と突き放し、理不尽な殺人を提示する。観客はこれを受け入れるほかない。そして、いつの間にかその愛に飲み込まれて行く。
 最後、マーサは獄中でレイからの手紙を受け取る。
「親愛なるマーサ。俺が愛した女は、お前だけだった」
 ここで観客は、図らずしも感動してしまう。どうして感動するのか判らない。しかし、感動させられる。そして、感動している自分に驚くのである。

 本作は無名時代のマーティン・スコセッシが撮る予定だったらしい。ところが、製作者と意見が合わずに降板。それで映画に関してはまったくのシロウトのカッスルが監督も兼任することになったのだそうだ。
 そもそも、どうして作曲家であるカッスルがこの脚本を書いたのかが謎である。その経歴を調べてみたが、やはり『ハネムーン・キラーズ』は唐突だ。突然に監督し、以後、一切映画に関わっていない。思うに、ベック&フェルナンデスの事件をオペラ化しようとしていたのではないか?。それが形を変えて、映画へと発展していったのではないか?。どうもそんな気がする。

 そんな「シロウトが作った映画」なわけだから、荒削りで切れ味が悪く、配給がなかなか実現しなかった。しかし、口コミで評判になり、30年の歳月を経て、こうして我が国でも公開されるに至った。とてもよく出来た「B級ノワール」である。是非とも鑑賞して、その奇妙な愛の世界に飲み込まれていただきたい。


 

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