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シンディー・コリアー
シャーリー・ウルフ
Cindy Collier
Shirley Wolf (アメリカ)



シンディー・コリアー(右)
シャーリー・ウルフ(左)

 1983年6月14日、カリフォルニア州サクラメント近郊の町、オーバーンのコンドミニアムで一人暮らしの未亡人、アンナ・ブラッケット(85)が惨殺された。
 その日のシャーリー・ウルフ(14)の日記にはこのように書かれていた。
「今日、シンディーと私は施設から抜け出して、おばあさんを殺害した。とても楽しかった」
(Today, Cindy and I ran away and killed an old lady. It was lots of fun.)

 シャーリーがシンディー・コリアー(15)と初めて会ったのは、まさにその日の朝だった。そして、瞬時に互いの中に似たものを見つけた。

 シャーリーは9歳の時から実の父親に犯され続けていた。生理が始まってからは避妊用のピルを飲まされていたというから酷い話だ。それが公に発覚したのは1年前のこと。父親は僅か100日間拘禁されただけで釈放されて、その父親から引き離すためにシャーリーは児童養護施設に収容されたのだ。加害者たる父親は野放しで、被害者たる娘は塀の中って、これまた酷い話である。

 一方、シンディーも義理の父親に犯された過去があった。その後は横道に逸れ続け、窃盗、強盗を繰り返し、少年院からオーバーンの児童養護施設に移送されたのが犯行当日、6月14日のことだったのである。

「逃げ出しちゃおうか!」

 意気投合した2人は軽い気持ちで施設から抜け出した。しかし、逃げるためには車がいる。そこで、近くのコンドミニアムの駐車場で「お気に入りの車」をいくつか選び、その番号の部屋を訪ねて回った。もちろん、鍵を奪うためである。
 最初の部屋は…呼び鈴を押したらオッサンが出て来た。奥さんもいる。これでは鍵を奪えないので諦めた。
 次の部屋は…呼び鈴を押したら若い兄ちゃんが出て来た。これまた腕力では敵わないので諦めた。
 その次の部屋は…呼び鈴を押しても返事がないので諦めた…。
 実はこの2人、当初から車の所有者を殺して鍵を奪うことを画策していたのだ。だから、呼び鈴を押して老人が出て来ることを期待していたのである。老人ならばなんとか殺せると算段していたのだ。
 そして、最後に出て来たのがおばあちゃんのアンナ・ブラッケットだった。「これならイケる」と判断した2人は「電話を貸して下さい」と頼み込み、侵入することに成功した。

 高齢のブラッケット夫人にとっては、彼女たちは孫も同然だった。紅茶でもてなし、1時間ほどの間、世間話に花を咲かせた。やがて、夫人のもとに息子のカールからの電話が入った。
「これからビンゴ・ゲームに行くんだけど、一緒に行かないかい?」
 彼女は快諾した。その間、シンディーとシャーリーは目配せをしていた。ブラッケット夫人が受話器を置くや否や、シャーリーが彼女の喉を掴んで床に叩き落し、シンディーに手渡されたキッチン・ナイフでその首を27回も突き刺したのだ。マトモじゃないよね、これ。

「今日、シンディーと私は施設から抜け出して、おばあさんを殺害した。とても楽しかった」

 ナイフで首を27回も突き刺して「とても楽しかった」のである。改めて云う。マトモじゃないよね、これ。
 その後、いくらかの金と車の鍵を奪った2人は、駐車場に停めてある1970年型ダッジに乗り込んだのだが、エンジンがまったく掛からない。違う鍵を奪ったのか、それとも車を間違えたのか。間抜けであるなあ。とにかく、2人は逃げなければならない。近くの49号線で親指を掲げてヒッチハイクを始めた。その姿はブラッケット夫人宅へと向かう息子のカールにより目撃されている。曰く、
「同乗していた妻に云いましたよ。『バカだよなあ。あんなに若い娘がヒッチハイクしているよ。ま、それだけタフだということなんだけど』」

 その数分後にカールは母親の惨殺死体を発見した。当初は精神病院から脱走したキチガイによる犯行だと思ったらしい。
「『サイコ』って映画があったじゃないですか。あれが連想されたんです」

 聞き込みをして回った警察は、どうやら2人の少女による犯行であることを突き止めた。そりゃすぐにバレるだろうよ。近所の呼び鈴を押して回っていたのだから。そして、そのうちの1人がシンディー・コリアーであることが発覚した。実は彼女はこのコンドミニアムで、祖父と暮らしていたことがあったのだ。住人とは顔見知りだったのである。

 翌日未明の午前2時30分、警察はシンディーが収容されている児童養護施設を訪ねた。彼女は押し黙ったままだったが、相棒のシャーリーはというと、僅か数分で自供した。
「私たちはとても興奮していました。今までやったことのないことをやっているのですから」
 間もなくシンディーも自供し、このように語った。
「正直云って、私たちは良心の呵責をまるで感じていません。殺した後、また別の誰かを殺したくなりました。それほど楽しかったんです」

 いやはや、衝撃的な事件である。少女たちの心に抑圧されていた憤怒が爆発した事件だったように思える。この点、シャーリーの弁護人であるトーマス・コンディットは事件をこのように評している。
「これは2人の少女の間に起きた不運な化学反応でした」
 まさにその通りだと私も思う。2人が出会わなければ、事件は起きなかったのだ。

 かくして、殺人容疑で有罪となったシンディー・コリアーとシャーリー・ウルフの両名は、少年法の適用の下、27歳まで監禁される旨が宣告された。そして、それぞれが別の施設に収容された。
 シンディーは施設内で短期大学の学位を取得し、1992年に仮釈放された後、ペパーダイン大学で法律を学んでいる。現在は結婚して、4児の母親だと伝えられている。
 一方、シャーリーは1995年に釈放されたが、その後も暴行や売春容疑でたびたび逮捕され、現在は行方知れずである。

(2012年11月23日/岸田裁月) 


参考資料

http://truecrimezine.com/little-girls-who-kill/
http://www.auburnjournal.com/article/auburn’s-‘baby-faced-killers’-featured-investigation-discovery
http://www.people.com/people/archive/article/0,,20085794,00.html
http://www.trutv.com/library/crime/serial_killers/weird/kids2/index_1.html
http://rawjustice.com/2010/09/04/10-of-the-most-homicidal-children-in-history/
http://en.wikipedia.org/wiki/Fun_(film)


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