1950年12月26日にオレゴン州セイラムに生まれたランドール・ウッドフィールド、通称ランディは典型的なジョック(Jock)だった。ハイスクールではフットボール・チームの花形だったのだ。
スポーツ礼参の傾向が強いアメリカでは、運動音痴はナード(Nerd)と呼ばれて馬鹿にされる。しかし、学校を卒業後、社会的に成功するのはむしろナードの方なのだ。かたやジョックはというと、計算もロクに出来ないくせに横柄なので出世するのは難しい。多くの者がレッドネックと呼ばれて落ちぶれて行く。ランディもまたその1人だ。
もっとも、ランディの場合は落ちぶれるのが早かった。フットボール・チームの花形だった頃から強制猥褻の容疑で逮捕されていたのだ。コーチたちは優秀な選手を失うことを恐れる余りに、そのことを隠していたというから酷い話だ。プロチームからの誘いもあることはあったが、素行の悪さゆえに撥ね除けられて、その後はガタガタガタと転落の一途である。類似の事件を起こして、繰り返し逮捕されたのだ。
時は流れて1981年。ワシントンからオレゴンを経てカリフォルニアへと至るインターステイト・ハイウェイ5号線(I−5)沿線では強姦殺人事件が相次いでいた。
同年1月18日、共に20歳のシャリ・ハルとベス・ウィルモットの2人が事務所の清掃を終えて帰宅しようとしたところを、男に銃で脅されて猥褻行為を強要された。男は満足すると、2人に床に伏せるよう命じ、それぞれの頭に銃を撃ち込んだ。ところが、ベスの方は幸いにも生き延びて、彼女の証言に基づいてランディ・ウッドフィールドが逮捕されたのである。3月7日のことである。
かくして、かつての「学校の人気者」、ランディ・ウッドフィールドは上記の件を含む3件の殺人容疑で有罪となり、終身刑を云い渡された。I−5沿線で頻発した他の15件の強姦殺人も彼の仕業と見られているが、如何せん、警察は証拠を見つけることは出来なかった。
なお、米版ウィキペディアによれば、近年、DNA鑑定により2件の殺人がランディの仕業と断定されたようである。
(2009年4月22日/岸田裁月) |