西ベルリンでは1983年暮れから翌3月にかけて「ドアベル・キラー」と呼ばれる連続殺人犯が暗躍していた。被害者はいずれも老婦人で、呼び鈴に応じてドアを開けるや否や、押し入られて絞殺された。性犯罪ではない。目的は物盗りである。現金はもちろん、金目の物が手当り次第に持ち去られていた。
ヘッダ・ブエコウ(82)
エリー・グリベク(84)
ジークルト・ベッセナー(81)
エルナ・ホーディッケ(?)
セシーリ・ヒッデ(83)
最後のヒッデ夫人宅で警察はよくやく犯人逮捕に繋がる手掛かりを得た。それは犯人がうっかり落したと思われる衣料品店のレシートだった。店員はその手袋を買った男のことを憶えていた。
「お客さまが代金を支払おうとした時に、うっかりして身分証明署を落してしまったのです。その時に名前が見えました。シチェピンスキーでした」
うっかり落とし過ぎだぞ、シチェピンスキー。
間もなく捜査線上にヴァルデマー・シチェピンスキー(22)の名が上がった。彼は最近、失業したばかりで、マンションのローンの支払いに窮していたのだ。早速、しょっぴいて追求した結果、ホーディッケ夫人とヒッデ夫人、そして、まだ発覚していなかったケイテ・ディディフスの3件についてのみ犯行を認め、1985年6月7日に終身刑を云い渡された。
なお、シチェピンスキーは老婦人宅に侵入する際に、おもちゃのFBIバッジを見せて信用させていたという。おばあちゃんだから信用しちゃったのだろうが、ドイツでFBIて。もうちょっとマシな手口を考えて欲しかった。
(2009年11月28日/岸田裁月) |