1964年春、19歳のヒッチハイカー、ラリー・レーンズはミシガン州カラマズーで親切に乗せてくれたドライバー、アール・フットの頭を銃で撃ち抜き、遺体をトランクに隠すとインディアナ州に向かった。そして、エルクハートでガソリンスタンドを叩いて従業員を殺害。金を奪って逐電するも、間もなく逮捕された。この無法者は以上の他にも、ミシガン州でガソリンスタンドの従業員を2人、ネヴァダ州でドライバーを1人、合計5人を殺害していることを認めた。
かくしてラリー・レーンズは第一級殺人で有罪となり、終身刑を云い渡されたが、捜査手続上の不備が指摘されて再審が争われ、結局、罪を認める代わりに少年鑑別所での不定期刑に留めるとの司法取引が行われた。1972年のことである。
と、ここまでならばごくありふれた事件である。本件が特筆に値するのここからだ。
1972年3月、シンシア・コールズの遺体がカラマズー郊外の路上で発見された。彼女は強姦された上に刺し殺されていた。その隣では生後18ケ月の彼女の子供が泣き叫んでいたというから痛ましい。
7月2日には、やはりカラマズー郊外に停められていた車の中から2つの腐乱死体が発見された。検視の結果、共に19歳のコーネリア・ダヴァルトとナンシー・ハートであることが判明。彼女たちも同様に強姦された上に刺し殺されていた。
8月5日には学生のジェニファー・カランが買い物に出掛けたまま行方不明になった。
そして、9月にラリー・レーンズの兄貴、ダニー・レーンズが容疑者として逮捕された。その犯行は弟が再審を待っている間の出来事だった…。
兄弟が共謀して殺人を犯す例はままあるが、それぞれが別個に殺人を、しかも連続殺人を犯す例はそうはない。極めて稀なケースである。
結局、兄貴の方は終身刑を科されたわけだが、この「カラマズーの兄弟」は拘置所ではお隣さんだったという。まったく因果な兄弟である。
(2009年2月8日/岸田裁月) |