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アーサー・ハッチンソン
Arthur Hutchinson (イギリス)



アーサー・ハッチンソン

 1983年10月23日、イングランド中部シェフィールド近郊の町、ドアでの出来事である。レイトナー家の庭では娘のスザンヌのウェディング・パーティーが盛大に催されていた。どうして新郎の家ではなく新婦の家なのかは詳らかではないが、文献によれば父親は弁護士、母親は医師とのことで、おそらく地元の名士なのだろう。
 会場は親類一同はもちろん、友人知人、近隣住人でごった返した。縁もゆかりもない者が紛れ込んでいたとしても誰も気づかなかったことだろう。事実、招かれざる客は紛れ込んでいた。アーサー・ハッチンソン(43)。窃盗の常習犯で、強姦容疑で勾留中に脱走し、指名手配されている男だった。

 パーティーは新郎新婦をハネムーンに送り出すことでお開きとなった。参列者は続々と帰宅して行く。ところが、ハッチンソンは帰らなかった。参考文献の言葉を借りれば、
「He was looking for somebody to rape.」
 暗くなるのを待って、息子のリチャード、主人のべイジル、奥方のエイヴリルの順にナイフで殺害し、次女のニコラを繰り返し繰り返し繰り返し強姦したのである。

 ハッチンソンはどういうわけかニコラだけは殺めなかった。彼女の手足を縛ると、夜明けと共に逐電。現場に残されていた指紋からすぐさま下手人が割れた。逃亡先のハートルプールで遂に身柄が押さえられたのは13日後、11月5日のことだった。
 取調べにおいてハッチンソンはアリバイを主張したが、指紋の件を指摘されると、
「パブで知り合ったニコラに誘われて、お宅に伺いましたよ。で、やりましたよ。もちろん合意の上ですよ。でも、殺っていません」
 などと苦しい云い逃れをする始末。その供述を信じる者など誰一人としておらず、結局、3件の殺人と1件の強姦で有罪となり、終身刑が云い渡された。

 ところで、ハッチンソンはどうしてニコラを殺めなかったのだろうか? この点、参考文献にはこうある。
「彼女を力でねじ伏せたハッチンソンは、決して裏切らないと思い込んでいたのではないだろうか。そうでなければ、決定的な証人たる彼女を生かしたことが説明できない」
 俺の女にしたってか? これが事実ならば、まるで中崎タツヤの漫画に登場する高校生のような妄想だ。43歳にもなって童貞と変わらぬメンタリティーとは、いやはやなんとも恐れ入る。

(2010年1月31日/岸田裁月) 


参考資料

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)
http://en.allexperts.com/e/a/ar/arthur_hutchinson.htm
『身から出た鯖』中崎タツヤ(少年画報社)


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