一家皆殺し事件を紹介するのは辛いものだ。幼い子供が犠牲になっていることが多いからだ。犯人が父親なれば尚のこと。彼はいったい何を思いながら愛しい我が子を殺めたのだろうか? 想像するだに虫酸が走る。
1986年4月22日、イングランドの最西端、コーンウォールの閑静な住宅地、レッドラスでの出来事である。コリン・ギルとその妻、そして4人の息子の惨殺死体が彼らの家で発見された。いずれも至近距離からショットガンで頭を撃たれている。凶器はコリンの脇に転がっている。無理心中の可能性が大きい。
コリン・ギルはコーンウォールの警察で12年間勤め上げた後、独立して探偵事務所を経営している男だった。そんな男がどうして家族を道連れにしなければならなかったのか?
間もなく妻のリンダ(38)が17歳も年下の若者と浮気をしていたことが判明した。なるほど。動機はこれだ。探偵としての勘で妻の浮気を悟ったコリンは、彼女がデートから帰宅するなり有無も云わさずに射殺。その後、2階に行き、睡眠中のスティーヴン(17)とロバート(14)、デヴィッド(9)とドリアン(2)を順に始末したのである。
ちなみに、年長のスティーヴンとロバートはリンダの連れ子だった。彼女は再婚だったのだ。この辺りにより深い事情が隠されているのかも知れないが、参考資料ではそれについては触れられていない。
息子たちの始末を終えたコリンは、階下に戻り、リンダに向けて更に2度発砲した。「お前のためにこんなことになっちまったんだぞ」とばかりに。検視解剖によれば、コリンは泥酔していたようだ。その後、1時間ほど妻の遺体に罵声を浴びせ続けた後(これはあくまで私の想像)、銃口を自らの口に入れて引き金を引いたのである。
ほおら。やっぱり重い気分になった。だから一家皆殺しは嫌なんだってば。
(2010年2月16日/岸田裁月) |