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デビー・フォーニュート
Debbie Fornuto (アメリカ)



デビー・フォーニュート

 2002年7月11日、イリノイ州シカゴの捜査官たちは寝耳に水のニュースに我が耳を疑った。デビー・フォーニュート(47)が交通事故で死亡したというのだ。どうやら彼女が同乗していた車が赤信号を無視して衝突事故を起したらしい。
「なんてえこった。これで永久にお宮入りになっちまった」
 実は彼女は1972年から1987年にかけて6人の我が子を殺害したことが疑われていたのである。

 疑惑が浮上したのは1989年、別居中の夫、デロス・ゲッジアスが殺害されたことが切っ掛けだった。彼はシカゴ郊外のアパートで、カウチで寝ているところを銃で頭を撃たれて殺害されていた。
 やがて捜査官は奇妙なことに気づいた。被害者の妻たるデビーの実子(ゲッジアスと再婚する前の子も含む)がすべて2歳になる前に死亡していたのだ。死因はいずれも乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断されていた。こんなことがあり得るのだろうか?

 捜査官は早速、法医学者にお伺いを立てた。
「あり得ます」
 法医学者はこのように断言し、1冊の本を捜査官に手渡した。それは1972年10月に発行された『Pediatrics』という医学雑誌だった。中にはアルフレッド・スタインシュナイダーという医師の論文が掲載されている。6年間に5人の実子をSIDSで亡くした「Hさん」に関する論文だ。そして、法医学者はこのようにつけ加えた。
「5人があり得たのだから、6人もあり得るのです」
 へえ〜、そんなもんなのか。結局、捜査官は夫の死についてもデビーにリンクさせることは出来なかった。証拠が何もなかったのだ。

 事態が急転したのは1994年3月のことだった。先の法医学者が「あり得ます」と断言した「Hさん」ことワネタ・ホイトのケースが殺人容疑で立件されたのである。
 なんだよ、やっぱりあり得なかったじゃねえかよ。
 かくして、捜査は再開されたわけだが、なかなか捗が行かなかった。というのもワネタ・ホイトとは異なり、デビーが出頭要請に協力せず、一切の供述を拒んだからだ。かといって逮捕状を得られるほどの証拠はない。はて、どうしたものかと考え倦ねていたところに突然の訃報だったのである。

 デビー・フォーニュートが同乗していた車の運転手は生き存えて、逃亡の末に逮捕された。トーマス・マニックスという32歳の男である。飲酒運転だったようだ。このカップルは事故の直前に禁制薬物を所持していた容疑で有罪となり、執行猶予処分になっている。チャランポランな人だったのだなあ。

(2011年5月18日/岸田裁月) 


参考資料

http://www.crimezzz.net/serialkillers/F/FORNUTO_debbie.php
http://www.reviewjournal.com/lvrj_home/2002/Jul-13-Sat-2002/news/19181437.html
http://www.highbeam.com/doc/1P2-1453075.html


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