ウェストリー・ダッド
ペドフィリアの殺人鬼、ウェストリー・ダッドは１９６１年７月３日、ワシントン州リッチランドに生まれた。８歳の時に同い年の従兄弟とおちんちんをいじり合うことで性に目覚め、１０歳の時には露出狂になっていた。年下の子の前でパンツを脱ぎ、おちんちんを晒すのである。当初はあどけないイタズラとして受け止められていたが、毛が生えて皮も剥ければそうは行かない。たびたびしょっぴかれて、更正施設にも入れられた。しかし、彼の病気は一向に治まらなかった。成人後もちょいちょい少年にイタズラして、そのたびにしょっぴかれていた。
これは後に判ったことだが、ダッドは日記に綿密な殺害計画を書き綴っていた。子供を如何にして攫うか。そして、如何にして責め殺すか。理想の拷問台をデザインし、悪魔との契約を夢想していた。
「俺はサタンに求めた。６歳から１０歳くらいの手頃な少年を我に与えたまえと。俺はその性器を吸い、犯し、弄び、写真を撮り、殺し、そして、手術を施すんだ」
（I've now asked Satan to provide me a 6-10 year old boy to make love to, suck and fuck, play with, photograph, kill, and do my exploratory surgery on.）
まあ、想像するのは勝手だけどさ、現実にやっちゃイカンだろ。
現実にやっちゃイカンことぐらいは、このバカも判っていたと思う。ところが、妄想に妄想を重ねる日々の中で、いよいよ堪らなくなって来た。遂に爆発したのは１９８９年９月４日のことである。バンクーバーのデヴィッド・ダグラス・パークに出向いたダッドは、コール・ニアー（１１）とウィリアム（１０）の兄弟を言葉巧みに森の中に誘い込み、縛って犯し、そして、ナイフで切り刻んだのである。２人の遺体が発見されたのは、犯行から僅か１５分後のことだった。
犯行後、しばらくの間はバレやしないかとビクビクしていたことだろう。ところが、１ケ月経てどもバレる気配はない。なあんだ。案外、大丈夫。となると、今度は我が家に連れて来て、思う存分いたぶってやろうかな。
１９８９年１０月２９日、川を渡ってオレゴン州ポートランドまで出向いたダッドは、リッチモンド小学校の校庭で遊んでいたリー・アイズリー（４）を言葉巧みに車に乗せて誘拐し、自宅のアパートで翌日未明まで責め苛んだ挙げ句、ロープで首を吊って殺害した。その間、写真を撮りまくりで、このバカにとっては至福のひと時だったことだろう。
なお、幼児の遺体はバンクーバー湖付近に遺棄されて、翌日の１１月１日に発見された。
さて、いよいよ大胆になったダッドは、今度は映画館での誘拐を試みた。１９８９年１１月１３日のことである。だが、子供に騒がれて失敗に終わり、慌てて逃げ出したものの観客の１人にとっ捕まり、ボコボコにされて警察に突き出された。間もなくペドフィリアの変態野郎であることが判明し、厳しく追及したところ、犯行の一切を自供した。
かくして死刑を宣告されたダッドは、心の底から後悔していたようだ。バカはバカなりに己れの罪深さを悟ったのだろうな。獄中でこのようなコメントを残している。
「脱走するか、獄中で誰かを殺す前に、私は処刑されなければなりません。もし脱走したら、看守を殺して、また強姦することでしょう」
（I must be executed before I have an opportunity to escape or kill someone within the prison. If I do escape, I promise you I will kill prison guards if I have to and rape and enjoy every minute of it.）
ワシントン州では処刑方法として絞首刑と薬物注射による処刑の２つから選択できるが、ダッドは敢えて絞首刑を選んだ。何故なら、それがリー・アイズリーの殺害方法だからだ。同じ苦しみを受けることで罪を償うつもりだったのだろう。また、彼はテレビでの公開処刑を望んだが、これは叶えられることはなかった。
かくしてダッドは１９９３年１月５日に絞首刑に処された。アメリカ国内における絞首刑は、ジョージ・ヨークとジェイムス・レーサム以来、実に２８年ぶりのことだった。
（２０１０年１２月２５日／岸田裁月）