ジョン・デフェオの霊が写り込んだとされる写真 |
法廷において弁護側は、被告は妄想性痴呆症であり、故に責任は問えないと主張した。これに対して検察は、反社会的な人格であることは間違いないが、それは麻薬の摂取に基づくものであり、精神異常とまでは云えないと主張。陪審員もこれに同意し、ロナルド・デフェオ・ジュニアには終身刑が云い渡された。
なお、惨劇の舞台となった家は、後に『アミティヴィル・ホラー』の舞台としても広く知られることになる。1977年に出版されてベストセラーになったジェイ・アンソンによるホラー小説である。その映画化は『悪魔の棲む家』の邦題で我が国でも公開されたので御存知の方も多かろう。1年後に事件を知らずに引っ越して来たラッツ一家が心霊現象に苛まれる物語である。
《実話との触れ込みで、モデルになったジョージ・ラッツが家族そろってテレビに出演するなど社会現象となり、映画もそれなりにヒットした。ところが、怪現象の数々が「壁から変な液体が流れ出る」「奇妙な音がする」「地下室が臭い」等、全体的にショボくておはなしにならない。『世界まるみえ』とかの再現ドラマでならともかく、映画化するほどの話ではない》(拙著『最低映画館』より)
今日ではアンソンの小説はまったくの創作、ジョージ・ラッツの証言も嘘八百であることが判明している。経済的に逼迫していた彼は、弁護士のウィリアム・ウェバー(彼はデフェオの弁護人だった)と組んで幽霊話をでっち上げたのである。
そもそもラッツ一家が事件のことを知らなかった筈がない。当時、事件は全米で大々的に報道されていた。その僅か1年後の出来事なのだ。今でも『アミティヴィル・ホラー』を信じている人はおめでたいとしか云いようがない。2005年の再映画化に際して再び注目を集めた心霊写真(三男のジョンが写り込んだものと云われている)もインチキと云わざるを得ない。
註:問題の家は今もなお現存している。グーグルマップのストリートビューで付近を散策してみるのも一興だろう(住所:112 Ocean Ave Amityville, NY)
(2009年2月21日/岸田裁月) |