1986年5月18日、コロラド州コロラド・スプリングスでの出来事である。午前2時30分頃、1人の男がバーに乱入し、店内にいた4人に銃を突きつけて叫んだ。
「金を出せ!」
と、ここまでならばごくありふれた強盗なのだが、奇妙なのはここからだ。男は被害者に金を差し出す暇を与えず、間髪入れずに発砲したのだ。結果、女性2人、男性1人が死亡した。もう1人の男性は頭部に被弾したものの、辛うじて一命は取り留めた。
その後、犯人は隣りの食料品店に乱入し、女性2人を射殺して逐電。結局、何がしたかったのか?
間もなく目撃証言から29歳の配管工、ギルバート・アーチベクの仕業であることが判明した。警官隊が彼の家を取り囲み、交渉人が説得に当たる。「お前の家は包囲されている」という例のやつだ。これを受けてアーチベクは、
「判った、判った。降参するよ。今、出て行くから待ってな」
数十秒後、1発の銃声が鳴り響いた。アーチベクは自らの頭を撃ち抜くことで事件に決着をつけたのである。
しかし、それにしても判らないのは動機である。この手の大量殺人の場合、犯人が自殺してしまうことが多いので、取り残された者としては呆然とする他ない。参考文献も動機については一切触れることなく、地元警察のコメントでお茶を濁している。
「こんな事件は初めてだ。平和な町の住民はみな困惑している」
(2010年2月17日/岸田裁月) |