1991年12月、リオデジャネイロの警察にアルタイル・デ・アブレウという10歳の少年が両親と共に出頭し、驚くべきことを供述した。
「2日前、僕は6歳の弟のイヴァンと一緒にニテロイのバス停で物乞いをしていました。すると、若い男が近づいて来て、こう云いました。『教会のキャンドルに火をつけるのを手伝ってくれたらお金をあげる』。僕たちは喜んで彼について行きました。やがて、ひと気のない荒れ地に差しかかったところで、男は突然、振り返って弟の首を絞めました。僕は恐怖のあまり、その場に立ち尽くしました。男は弟を殺すと、僕の目の前で死体を犯しました。そして、その後に僕を抱き締めて云いました。『君を愛している。だから君も僕を愛してくれ』。僕は頷くしかありませんでした。その晩は森の中で彼と一緒に過ごしました。そして、翌日に隙を見て逃げ出しました」
男は迂闊にも己れの名前をこの小さな恋人に明かしていた。マルセロ・コスタ・デ・アンドラーデ(25)。間もなく職場の店で逮捕された彼は、素直に犯行を認めた。
アンドラーデが余罪を告白したのは2ケ月後のことだった。彼は1991年4月から12月までの8ケ月の間に、実に14人もの少年を殺害していたのである。そして死体を犯して、時にはマチェーテで首を斬り落とし、時には岩で頭を叩き潰し、その血を飲むことさえあったという。どうして血を飲んだのかと訊ねると、彼はこう答えた。
「彼らのように美しくなりたかったんだ」
マルセロ・デ・アンドラーデはロッシーニャの貧民窟に生まれ育った。祖父から虐待される毎日だったという。そして、10歳の時に犯された。14歳の時には生活費を得るために売春を始めた。暗澹たる少年時代である。やがて感化院に入れられるが脱走し、年寄りの愛人になることで生活していた。
23歳の時に愛人関係を解消し、母親が暮らすイタボライの貧民窟に移り住む。そして、低賃金ながらも真っ当な職に就く。ユニバーサル・キリスト教会に入信し、週4回も教会に通うほどの熱心な信者だったという。そんな男がどうして連続殺人に手を染めたのか? どうやら牧師による無用な入れ知恵が原因だったようだ。アンドラーデ曰く、
「僕は少年が大好きでした。その柔らかい肌に僕は魅了されました。ある時、牧師は云いました。人は13歳になる前に死ねば、必ず天国に召される、と。だから、僕は愛しい少年たちを天国に送ってやろうと思ったのです。愛しているからこそ、地獄には行かせたくなかったのです」
やれやれ。言葉もないね。
アンドラーデは現在、精神医療施設にいる。彼が釈放されないことを願うばかりだ。
(2011年2月3日/岸田裁月) |