1964年6月11日、ケルン近郊フォルクホーフェンのカトリック小学校での出来事である。
殺虫剤噴霧器を改造した火炎放射器。
槍。
手製の棍棒。
以上のユニークな3点で武装した男が校内に入って来たかと思うと、門を楔で塞ぎ、校庭で遊ぶ子供たちに目掛けて火を放ったのだから堪らない。蜘蛛の子を散らすように子供たちは逃げ惑う。男はこれを追うことなく、教室の窓を棍棒で叩き割ると、中に目掛けて火を放った。
ドロシア・ビネール
レナート・フューレン
インゲボルグ・ハーン
ルス・ホフマン
クララ・クルーガー
ステファン・リシュカ
カリン・ラインホルド
ローゼル・ローリグ
以上の生徒の他にも、教師のウルスラ・クーア(24)が焼死。20人の生徒が大火傷を負った。また、これを止めに入った教師のガートルド・ボーレンラス(62)が槍で刺されて絶命。まさに大惨事である。
ひとしきり火を放った後、裏口から校外に出た男は、パラチオンを飲んで自殺を図った。ところが、この殺虫剤には即効性はなかったようで、悶え苦しみながらお縄となり、翌日にようやく死亡した。
男の名はワルター・ザイフェルト。その日が彼の42回目の誕生日だったこと以外はほとんど何も判っていない。ただ、数年前に妻に先立たれてからおかしくなり、統合失調症(いわゆる精神分裂)と診断されていた。わざわざ火炎放射器や棍棒を作ってまで小学校を襲った背景には、何らかの妄想があったのだろう。
(2009年1月29日/岸田裁月) |