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スーザン・ニューエル
Susan Newell (イギリス)



スーザン・ニューエル

 極めて衝撃的な事件である。

 1923年6月21日、スコットランドはグラスゴー近郊コートブリッジ。朝早くからスーザン・ニューエル(30)は娘のジャネット(8)と共に手押し車を押していた。荷が重いのかヨロヨロしている。通りかかった荷馬車の御者が声をかけた。
「親子で大変そうだな。グラスゴーまでなら乗せてってあげるよ」
「あら、ご親切に。お願いしますわ」
 よっこらせと敷物で包まれた荷を載せると、親子二人がその横にちょこなんと座る。
 パカポコパカポコ。
 のどかな田園風景である。
「奥さん、着いたぜ」
「どうもありがとうございました」
 よっこらせと包みを降ろす。 その時、何かが包みの中からこぼれ出た。
 少年の頭だった。反対側からは足もはみ出ている。御者は見逃したが、近くの2階から御婦人が見ていた。
 ギャーッ。
 たちまち大騒ぎとなり、親子はその場で身柄を押さえられた。遺体は前の晩から行方不明になっていた新聞売りのジョン・ジョンソン(13)だった。

 尋問されたスーザンは、手を下したのは夫のジョンだと弁明したが、彼には水も洩らさぬアリバイがあった。夫婦喧嘩の末に家から追い出された彼は姉の家に身を寄せていたのだ。それでも「夫が殺った」の一点張りだったのだが、やがて娘のジャネットが口を割った。

「おうちにかえってくると、ながいすのうえでおとこのこがしんでいたの。おかあさんがこまっていたので、しきものにつつむのをてつだったわ」

 母親と娘は夫の犯行である旨の口裏も合わせていた。ちなみに、ジャネットは前夫との間に出来た子で、現在の夫とは血の繋がりはない。

 さて、問題は動機である。検察が主張したところによればこうだ。
 その日、夫を追い出したスーザンはイライラしていた。そこに新聞売りの少年がやって来た。午後6時45分頃のことである。彼女は新聞を受け取ったものの代金は支払わなかった。少年は当然ながら代金をせがむ。これにキレた彼女は少年の首を絞め、気がついたら少年はぐったりしていた。
 もともと気性の激しい女だったようなので、あり得ない話ではない。
 この点、コリン・ウィルソンは性的な背景を示唆している。

「よく知られている事実だが、セックスに飢えた女性はしばしば年端のいかない男の子に近づく。新聞配達の少年は抵抗するか人に言い付けると言ったに違いない。それでスーザンはその子の首を絞めた…」

 いずれにしても、有罪になった彼女は絞首刑に処されたわけだが、まだ8歳の我が子の証言により縛り首になった女というのは前代未聞だろう。

(2007年5月27日/岸田裁月) 


参考文献

『犯罪コレクション(上)』コリン・ウィルソン著(青土社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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