ルイーザ・メリフィールド(46)が3人目の夫アルフレッド(71)と共に、イングランド北部ブラックプールに住むサラ・リケッツ(80)の家に住み込みの家政婦として雇われたのは1953年3月のことである。当初は、
「いい人が来てくれたわ」
とご近所さんにもらしていたリケッツ夫人だったが、3週間もすると、
「ルイーザが食事を満足に出してくれないのよ」
などと不平を述べるようになる。その1週間後にルイーザが医者を呼んで、リケッツ夫人に新しい遺言書を作る能力がないことを証明して欲しいと頼み込んだ。どうやら彼女は既に自分に有利な遺言書を夫人に書かせていたようだ。もちろん医者はそんなことは出来ないと突っぱねた。リケッツ夫人が急逝したのはその5日後、4月14日ことである。ルイーザに疑いの眼が向けられたのは云うまでもない。夫人の遺体からは燐酸が検出され、ルイーザとアルフレッドの夫婦は逮捕された。
家宅捜査では決定的な証拠は発見されなかったが、裁判はルイーザに圧倒的に不利だった。というのも、何人もの証人がルイーザから3千ポンドの遺産をもらう旨の自慢話を聞かされていたことを明かしたのだ。
「まだ先のはなしでしょ?」
と突っ込むと、
「いいえ、もうすぐなのよ!」
本当にその通りになったので誰もが驚いたのだ。リケッツ夫人に雇われてまだ1ケ月あまりだ。それで死期が判るのならば、殺人者でなければ神である。かくして有罪になったルイーザは死刑に処された。一方、旦那のアルフレッドは証拠不十分で無罪放免になった。
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