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サリー・ラインヴェルト
Salie Lineveldt (南アフリカ)


 

 サリー・ラインヴェルトは典型的な「無秩序」型の連続殺人犯である。その犯行はいずれも白昼で、指紋も隠そうとしていなかった。気が向いたら手当り次第に殺したという印象である。それでも逮捕に数ヶ月を要したのは、その大胆不敵な犯行と、第二次世界大戦下での混乱ゆえと思われる。

 最初の犠牲者はエセル・マレイという軍人の妻である。1940年10月3日、ケープタウン郊外ランズタウンの自宅そばの草むらで、瀕死の彼女が発見された。頭部を鈍器で殴られた上に強姦されている。直ちに救急病院に運ばれたが、意識が戻らぬままに死亡した。

 それから3週間と経たぬうちに、やはりケープタウン郊外ワインバーグで主婦のドロシー・ターリングが自宅で殺害された。遺体の状況はエセル・マレイと同じである。現場には犯人の掌紋と親指の指紋が残されていた。しかし、照合しても該当者はいなかった。つまり、犯人には前科がないのだ。性衝動を抑えきれない若者の犯行であることが推察された。

 次の犯行もワインバーグで起きた。11月11日、やはり家庭の主婦エヴァンジェリン・バードが自宅の玄関で殺害された。このたびは付近一帯を自転車でうろついていた若者の姿が目撃されていたが、逮捕には結びつかなかった。

 11月25日には4人目の犠牲者が出た。ケープタウン郊外ロンデスボシュでメアリー・ホーツが殺害された。現場の自宅には犯人の足跡と指紋が残されていた。

 これを最後に犯行は途絶えたが、逮捕までには更に数週間を要した。参考文献には逮捕の決め手となった事柄は記載されていない。とにかく、サリー・ラインヴェルト(20)は映画館前で並んでいるところを逮捕された。別件逮捕だったらしい。そして、この時に彼がはめていた指輪が犠牲者のものだったことから、連続強姦殺人事件の容疑者として起訴されるに至った。

 ラインヴェルトの犯行であることを裏づけたのは指輪だけではなかった。逮捕された時、彼には左手の親指がなかった。自ら切断したのだが、それは「現場には左親指の指紋が残されていた」との報道を受けてのことだったのだ。痛かったろうに。頭の悪さに涙が出る。
 残されていたのは左親指の指紋だけではなかったのだ。掌紋から足跡まですべてが一致したラインヴェルトは、精神異常を主張したものの受け入れられずに、有罪となり絞首刑に処された。

(2007年11月25日/岸田裁月) 


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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