ドナー隊の遭難 |
『黄金狂時代』より、靴を食べるチャップリン |
チャールズ・チャップリンの代表作『黄金狂時代』を再見する読者諸君は、その残酷なテーマに改めて驚かされることだろう。「欲」をテーマにしたこのブラックコメディは、雪山で飢えたチャップリンが己れの革靴を茹でて食べる場面で笑いのピークを迎える。 |
遭難者の墓標を見つけて怯えるチャップリン |
1846年8月、ドナー隊はイリノイ州を後にした。ただでさえ遅い出発であったにも拘わらず、彼らの馬車を牽くのは馬ではなく牛。ノロノロとした砂漠の旅は困難を極め、ユタやネバタの砂漠を横断する過程で、既に5人が命を落とした。 |
人がニワトリに見えてくる恐るべき瞬間 |
12月16日、最後の救援隊が山越えに挑んだ。しかし、幸先はよくない。2日目に怖じ気づいた2名がキャンプに引き返してしまう。そして、クリスマスの夜、荒れ狂う吹雪が彼らを襲った。 |
雪原を逃げるニワトリのチャップリン |
2月18日、救助隊はトラッキー湖畔に到着した。キャンプ地ではまだカニバリズムは行われていなかった。しかし、状況は惨澹たるもので、いくつもの死体が野ざらしにされていた。衰弱した生存者たちには死者を埋葬するだけの体力が残っていなかったのだ。 |
トラッキー湖畔でロケ中のチャップリン |
3月13日、第3救助隊が到着した。生存者のほぼ半分が食べられていた。ドナー夫人は重体の夫を残していくことを拒んだ。結局、雪解けまでこの地に留まることになった。夫人一人では心配だからと、ルイス・ケスバーグも残ることとなった。彼を残すことが一番心配だったのだが、今回は食料を十分に残しておくことができたので、よもやそんなことはあるまいと高を括っていた。 |
参考資料 |
『カニバリズム』ブライアン・マリナー著(青弓社) |