ロスコー・アーバックル |
チャップリンと共演するアーバックル |
ロスコー・アーバックルという名前のコメディアンを諸君は御存知であろうか? 「でぶ君」の愛称で我が国でも親しまれ、全盛期にはあのチャールズ・チャップリンと人気を二分にしたという。サーカス芸人だったバスター・キートンに映画入りを勧めたのも彼である。淀川長治氏によれば「ニコニコ大会」という当時の活動喜劇フェスティバルでは、アーバックル、チャップリン、ロイド、そしてキートンの4人のフィルムがかからないと観客は納得しなかったという。ところが、現在、喜劇王といえばチャップリン、ロイド、キートンの3人とされている。アーバックルは何処に行ったのだ? |
ヴァージニア・ラップ |
さて、ここでヴァージニア・ラップという無名女優が登場する。シカゴ生まれの25歳。写真で見る限り、清楚な感じの美人である。 |
キーストン・コップス時代のアーバックル(右) |
でぶ君は予てからヴァージニア嬢にモノにしようと挑んでいた。しかし、彼女も一応は相手を選ぶようで、でぶの誘いには応じなかった。 |
タブロイド製「アーバックルズ・ボトル」 セント・フランシス1221号室:騒乱のあと |
と、ここまでが前掲『ハリウッド・バビロン』の記述をもとにした「事のあらまし」である。そして、これが当時のタブロイド誌や、果てはメジャーな新聞までもが書き立てた「真相」だった。記者たちは膀胱破裂の原因をアーバックルの変態性戯と決めつけた。曰く、拒絶されて腹を立てたアーバックルがコカコーラの瓶をぶち込んだとか、いや、シャンパンの瓶だったとか、実は氷で責めたのだとか。 |
バンビーナ・デルモント アーバックルの逮捕を伝えるハーストの新聞 |
まず、先ほどの「真相」をもう一度読み返して頂きたい。当事者以外に実名の者が登場していることにお気づきであろう。そう。「ヴァージニア、どうしたの!」とドアの取っ手を掴んで叫んだ、自称「ヴァージニアの友人」、バンビーナ・デルモントこそ、先ほどの「真相」を警察やマスコミに語った人物なのである。 |
ヴァージニア・ラップの墓 証人席のロスコー・アーバックル |
では、ヴァージニア・ラップは何故に死んだのか? この疑問に答える前に、彼女の悲惨な生い立ちについて触れておかなければならない。 |
オリーヴ・トーマス |
さて、それではアーバックルはどうして、物証もないのに、いい加減な証言だけで起訴されたのか?(検察はどうして、アーバックルの事件に予断を持って臨んだのか?)。 |
アーバックルのマグショット |
しかし、陪審員は極めて冷静だった。物証がなく、証人もいいかげんであることを知ると無罪を評決。アーバックルに対して以下のような声明文を読み上げた。 |
参考資料 |
『ハリウッド・バビロン』ケネス・アンガー著(リブロポート) |