サム・シェパード |
婚姻当時のシェパード夫妻 |
「リチャード・キンブル。職業、医師。正しかるべき正義も時として盲いることがある。彼は身に覚えのない妻殺しの罪で死刑を宣告され、護送の途中、列車事故に遭って辛くも脱走した。孤独と絶望の逃亡生活が始まる。髪の色を変え、重労働に耐えながら、犯行現場から走り去った片腕の男を探し求める。彼は逃げる。執拗なジェラード警部の追跡をかわしながら。現在を、今夜を、そして明日を生きるために」 |
「手術器具の痕跡がある」とされた部分 法廷で父親から励まされるサム・シェパード |
法廷に提出された証拠はいずれも憶測の域を出ないものだった。 |
アリアーネ・テッベンヨハンスとぶちゅ〜 |
サム・シェパードを無罪へと導いたのは、後にアルバート・デサルヴォを弁護したことでも知られるリー・ベイリーである。新進気鋭のこの29歳の弁護士は、名を売るためにサムの事件を買って出た。 |
サム・シェパード、プロレスラーになる(右) |
映画ならばここでめでたしめでたしとなるわけだが、サムの物語はここでは終わらない。翌年12月に医師免許の復活が認められたが、精神的にガタガタになっていたサムはアルコールと睡眠薬の常用者になっていた。起こるべくして医療事故を起こして1年後にはまたしても廃業。アリアーネには三行半を突きつけられてしまう。踏んだり蹴ったりである。自伝はベストセラーになったものの、その印税は弁護費用に充てられた。ベイリーの「ちゃんと払えるようにして差し上げますよ」はそういう意味だったのだ。 |
参考文献 |
『現代殺人百科』コリン・ウィルソン著(青土社) |