ダリオ・アルジェント監督のホラー映画『フェノミナ』には、最後に兎唇で白眼のお子さま殺人鬼が登場する。そこで思い出されたのがこのジェシー・ポメロイである。この14歳の殺人鬼も兎唇で片目が白濁していたと伝えられているのだ。ところが、逮捕当時の似顔絵(左上)を見ると兎唇ではない。晩年の写真(左下)が残っているが、口髭のために兎唇であるかは判らない。一見普通の顔であり、『フェノミナ』のような化物ではなかったのだ、実物は。
1859年11月29日、ボストンで生まれたジェシー・ポメロイは、12歳の時に感化院に入れられた。7、8歳の男子児童を相手に虐待を繰り返していたのである。電柱に縛りつけて、サンドバックのようにパンチを喰らわしたり、顔を板きれで思いっきり殴って鼻の骨と前歯をへし折ったり、裸にしてナイフで切りつけたりとかなりの凶悪犯である。
1年半後に釈放されると、まもなく近所のメアリー・カラン(10)が行方知れずとなった。その1ケ月後にはホレース・マレン(4)が惨殺された。31ケ所も刺された遺体は、首が胴体から離れそうになっていたというから惨たらしい。
真っ先に疑われたのがポメロイだった。前科があるからだ。逮捕されたポメロイは素直に犯行を認め、他にも殺していることを仄めかした。
母親は町に住めなくなって転居した。新しい入居者が地下室を掘ると、少女の腐乱死体が埋まっていた。行方不明になっていたメアリー・カランだった。
ポメロイはこの他にも27人の殺害を自供した。しかし、警察が発掘できたのは12体だけである。
死刑判決は当然だったが、14歳の少年を死刑にはできない。已むなく終身刑が云い渡された。その後の58年の人生の中で、ポメロイは何度も脱走を試みている。中でも1883年のそれは豪快である。独房の壁を削ってガス管を探し当てると、これに穴を開けてマッチの火をつけたのである。
ちゅどーん。
独房の壁も扉も吹っ飛んだが、ポメロイも吹っ飛んだ。ついでに3人の囚人も焼け死んだ。迷惑な話である。
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