クリフォード・オルソンの犯行そのものは特筆に値するものではない。欲望の趣くままに少年少女を犯して殺害した。ただそれだけだ。
1980年12月25日 クリスティーン・ウェラー(12)
1981年 4月16日 コリーン・デイノールト(13)
22日 ダーレン・ジョンスラッド(16)
5月19日 サンドラ・ウルフスタイナー(16)
6月21日 エイダ・コート(13)
7月 2日 サイモン・パーティントン(9)
2日 ジュディ・コズマ(14)
23日 レイモンド・キング(15)
25日 シグルン・アルンド(18)
27日 テリー・リン・カーソン(15)
30日 ルイーズ・シャルトラン(17)
「ただそれだけ」と云い切るにしては犠牲者の数と頻度が凄まじいが、こんな奴はいつの時代にもどこの国にも存在するのだ。つまらない虫ケラである。
話が俄然面白くなり始めるのは彼が逮捕されてからのことだ。
オルソンはかねてから容疑者としてマークされていたが、決定的な証拠がなかったために逮捕されないでいた。そして、1981年8月12日に少女2人を車に誘い込もうとしているところを現行犯逮捕されたのである。だから11件の殺人について起訴できるか、仮に起訴できたとしても有罪に持ち込めるかは微妙なところだった。
ここでオルソンは前代未聞の驚くべき取引を持ちかける。罪を認め、未だに発見されていない犠牲者の遺体の在り処を教える代わりに、1体につき1万ドル、既に発見されている3体分と併せて合計11万ドルを要求したのである。
無茶苦茶な話である。もし取引に応ずれば、国が税金で殺人の報酬を支払うことになってしまう。一方で、遺族の気持ちを考えれば、早く遺体を取り戻してあげなければならない。司法長官は悩みに悩んだ挙句、渋々ながら取引に応じた。但し、11万ドルは「てめえの息子の信託財産にしろよ」との条件が付された。
これに味をしめたオルソンは、
「他にもかなり殺してるんだけんども、合計20人分をまとめて10万ドルのバーゲン価格でどうだい?」
と新たな取引を持ちかけた。これにはさすがに当局も「お値打ちですねえ」とは云わなかった。11万ドルと引き換えにオルソンは終身刑に処された。
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