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デルフィナ・ゴンザレス
マリア・デ・ヘスス・ゴンザレス

Delfina Gonzalez
Maria de Jesus Gonzalez (メキシコ)


 

 1963年、メキシコ中西部グアダラハラでの出来事である。この付近では近年、若い女の失踪事件が急増していた。捜査を進めた警察はジョセフィナ・グティエレスという中年女を逮捕した。彼女は若い女に「働き口を紹介してあげるよ」と言葉巧みに誘い出し、売春宿に売り捌いていたのである。

 と、ここまでならば単なる女衒のおはなしである。物凄いのはここからだ。

 グティエレスが女を引き渡していたのは、デルフィナ・ゴンザレスとその妹のマリアが経営する「ランチョ・エル・アンヘル(天使牧場)」という売春宿だった。警察が踏み込んだ時には姉妹はトンズラした後だったが、そこでは何十人も女性が麻薬漬けにされて売春を強要されていた。妊娠した者は両手を吊るし上げられて、腹を蹴られて流産させられ、脱走を企てた者は殺されたという。トウが立ってお茶を挽く者、麻薬のために廃人となった者もまた然り。生存者の証言に基づき付近を捜索した警察は、80人にも及ぶ女性と、堕胎された嬰児の遺体、更には11人に及ぶ男性の遺体を続々と発掘した。11人はおそらく懐に大金を忍ばせていた客である。つまり経営者姉妹は、従業員も客も人とは思っていなかったのである。

 まるで映画のような「悪魔の娼館」が過去十年にも渡って摘発されずにいたのには訳があった。経営者姉妹の背後にはエルメネヒルド・ソニーガという元陸軍将校がおり、彼のコネでもってこれまで手入れを封じていたのだ。
 数日後、姉妹はブリスマ・デ・ブストスという町に潜伏しているところを逮捕された。2人は遺体は自然死したものだと主張したが、それが通る数ではない。しかし、その刑は40年に留まった。
 南米では命の値段が安すぎると思うのは、私だけではない筈だ。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『現代殺人百科』コリン・ウィルソン著(青土社)


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