これほど胸の痛む事件はあまりない。10歳の少年2人が2歳の幼児を連れ出して、遊び半分に暴行を加えて殺害し、遺体を線路に放置してバラバラにした。1993年2月12日、リバプールでの出来事である。
世界中が震撼した事件だが、私はそれほど驚かなかった。子供による残虐な殺人は今に始まったことではない。英国でいえば、メアリー・ベルという前例がある。何年かに一度、こういう怪物が出て来るものなのだ。
コリン・ウィルソンは『殺人コレクション(上)』の『子供による人殺し』の項でこのように述べている。
「私たちは、大部分の子供は人殺しできるという事実に直面しなければならない」
威張り腐った担任教師や近所の頑固なカミナリ親父、暴力をふるう年長やガミガミうるさい両親を空想の中で殺した経験がない者はあまりいないだろう。しかし、ほとんどの場合、その空想は現実化しない。空想と現実の垣根は意外に高いのである。しかし、目の前に銃があればどうだろうか? 子供は躊躇なく射殺することだろう。
「子供は成人よりも素直な生き物である。傷つけられたら泣き叫ぶ。怒れば手で殴りかかる。何かが欲しければ、それをつかみ取る。子供を殺人者に仕立てるのはこの素直さである」
連続殺人犯の性格もまた極めて素直である。己れの欲望のままに行動している。つまり、彼らは「子供大人」なのである。
諸悪の根源は子供である。(←暴論)
註:コリン・ウィルソンの『殺人コレクション』はバルガー事件の5年前に書かれたものだが、まるで事件を予言していたかのようだ。
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