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6月27日(土)

 日記をつけることのおっくうさから、長期に渡って中断していた岸田日記だが、サミーがフランスから凱旋したことで続けざるを得なくなった。彼のトンデモない素行を報告しなければならない義務が生じたというわけだ。
 知る人ぞ知ることだが、サミーは我々マジソンズが結成する切っ掛けとなった男である。とにかく、その馬鹿っぷり、失礼、カリスマぶりに我々は圧倒され、
「こんなクダラナイ世界がこの世にあるのか!?」
 と、ひれ伏した次第である。サミー高田なくして今日の岸田裁月はなかったわけで、再会には感慨深いものがあった。

 20年前の好青年は、今では禿げ散らかった中年親父に変貌してはいたが、そのパワーは相変わらずで、我々マジソンズを圧倒した。
「ああ、こいつのために俺は下らない人生を歩んでしまったんだなあ」
 という怒りを抑えて、持ち上げるだけ持ち上げると、馬鹿はどんどこ昇って行く。1日2万ヒットの有名サイトになったことを報告すると、
「だろ? みんな俺の魅力だよ」
 オードリーの春日状態だ。挙げ句の果てに「マイケル・ジャクソンが死んだ日に、俺というスーパースターが帰って来たんだよ」などと自画自賛する始末である。だからこそ、私はサミーを愛しているのだ。こんな馬鹿はそうはいない。

 その後、カラオケに誘われて、大量破壊兵器並みの威力がある『夢芝居』を聞かされた。音程が一つも合っていない上、鼓膜が破れんばかりの大音量だ。断末魔の絶叫に近い。彼奴は確実にパワーアップしている(馬鹿っぷりが)。
 ちなみに、私はマリア四郎の物真似で『もだえ』を歌い、サミーに上から目線で「80点」と褒められたわけだが、ちっとも嬉しくなかったことは云うまでもない。


6月29日(月)

『殺人博物館』用の「グレタ・ペレツ」を執筆。併せて次の電子書籍用の「阿部定」に関する文献を読む。そう云えば『津山三十人殺し』という本に阿部定の供述調書が載っていたな。なるほど。これは参考になる。これだけ写してもいいくらいだ。

 ところで、今更ながら『ポスタル2』というゲームにハマっている。無差別大量殺人のゲームである。「大量殺人」に関する電子書籍『殺しすぎ』をまとめたので、このゲームをプレイしておくのが筋だろうと手に入れた。『ポスタル・ファッジ・パック』というやつで、有り難いことに前作の『ポスタル』も収録されている。マックのOSが変わってから前作はプレイ出来なくなっていたのだ。懐かしいなあ。「全米で発売禁止」の宣伝文句に惹かれて購入したのは10年ほど前のことだ。私はいつも「発売禁止」とか云われるとついつい手に入れてしまう。『バトル・ロワイヤル』も「審査員からボイコットされた」云々の帯の文句ゆえに購入したのだ。
 映画の『バトル・ロワイヤル』が久しぶりに観たくなった。明日、借りて来よう。

 それにしても、さっきから殺人に関する話しかしていない。いったい何なんだ、俺は。


7月1日(水)

 昨日から高熱に襲われて仕事にならず。「阿部定」も未完のままだ。やや焦り始める。そんな中で井上社長から頼まれていた小品の小説『シャブ太郎』を一気に書き上げる。
「シャブ太郎さん、シャブ太郎さん。お腰につけた覚醒剤、一つ私にくださいいな」
 シャブ太郎という出オチのような名前の男が、作者である私に責めさいなまれるメタフィクションだ。

「阿部定」の方は古今亭志ん生師匠の小咄から書き始めたので、軽妙な語り口になった。早く書き上げて前に進まなければ締め切りに間に合わぬ。まだまだ書かなければならない殺人者が残っているのだ。近年映画化されたガートルード・バニシェフスキーとか、アイリーン・ウォーノスとか。
 ちなみに、今度の電子書籍は女性殺人者を特集した『女でも殺す』の予定である。


7月2日(木)

「阿部定」の項を苦心惨憺の末に書き上げる。その供述調書が余りにも面白いので、大幅に引用したために思わぬ長編になってしまった。

「石田は『冷たい手をしているな』と云って手を握り、私を抱きしめてくれました。その後、折りさえあれば抱き合ったり、キッスしたり、お乳を弄ってもらったりしていました」

「4月27日の夕方まで居続け、寝床は敷き放しにし、昼となく夜となく情交し、芸者を寝床にまで呼んで酒を飲み、乱痴気騒ぎをし、夢中になっておりました」

「夜明け方から5月1日の夜まで食事もせず、酒を飲んでは関係しておりました。その間、石田は冗談に『お前と一緒になればきっと骸骨になる』と云っていました」

 すべてがこんな調子で、まさに「お定色ざんげ」といった内容である。「オチンチン」や「オチンポ」などという単語も頻繁に登場する。当時はこの供述調書が、恰もエロ本の如く地下で売買されていたという。然もありなん。

 なお、本日はこの他にももう1本、阿部定事件と対をなすような事件を書き上げた。これも相当にキているので期待して頂きたい。


7月3日(金)

 電子書籍用の書き下ろし『荒川放水路バラバラ事件』を執筆。思いのほか長編になってしまった。この事件への母の思いが私に執着を感じさせたようだ。
 母はこの事件の直後、
「バラバラ事件ってなあに?」
 と方々に訊いて回ったのだそうだ。そのたびに、
「子供がそんなこと口にするもんじゃない!」
 と窘められたのだという。子供が喰いつくぐらいに事件は市井の関心事だったのだ。なるほど。当時としてはかなりスキャンダルな事件である。発見者が少女、被害者が●●。おまけに犯人が●●の●●だったのだから、こりゃ話題になる。幼少時代の母親が喰いつくのも宜なるかな。私にとっては「玉ノ井バラバラ事件」同様の関心事であった。

 ところで、近年に限ったことではないのだが、マジソンズのうち、俺だけがハードワークであることに今更ながら腹を立てている。俺が書き下ろしている間、誰かが埋めてくれよと思うのだが、それが叶わぬのがマジソンズの構造的な問題だ。この際、構造改革をせねばならぬ。もう一人、優秀且つ勤勉な人員が必要だ。そうでなければ身が持たない。

 あっ、そうだ。犯罪小説『スリージーズ』は7月末から始まるよ!

 この告知が命取りになるように思えてならない。


7月5日(日)

『殺人博物館』用の「ガートルード・バニシェフスキー」を執筆。思い入れが強い事件なので力が入り、書き上げるのに随分と時間がかかってしまった。

 この事件は近年『 アメリカン・クライム』のタイトルで映画化されている。『カポーティ』でネルを演じたキャサリン・キーナーがバニシェフスキーに扮し、悪夢の如き折檻の数々を再現しているわけだが、彼女は些か人間的に過ぎる。もっと鬼婆のように演じてもよかったのではないか。もっとも、それではホラー映画になってしまうが。

 奇しくも、この事件をモチーフにしたジャック・ケッチャムの『隣の家の少女』も同じ時期に映画化されている。こちらは完全なホラー仕様のようだが、残念ながら日本未公開のままである。例の「女子高生コンクリート詰め事件」にも通じるインモラルな内容ゆえ、已むを得ないのかも知れない。

 映画の出来不出来は判らないが、原作の方の『隣の家の少女』はなかなかよく出来たダーク・ファンタジーである。現実の事件では少女のことを誰一人として助けようとはしなかったが、小説では主人公が命を掛けて守ろうとする。それが初恋相手という設定にホロッとさせられる。『バトル・ロワイヤル』のような「不道徳な青春小説」でもあるわけだな。是非一読することをお勧めする。


7月6日(月)

『殺人博物館』用の「メアリベス・ティニング」を執筆。途中で「なんだかサンドウィッチマンの葬儀屋のコントのような事件だなあ」と思ったので、某動画サイトで確認して、そのくだりを引用する。
 サンドウィッチマンのコント(というか漫才)は極めてよく出来ている。参考にするところが多い。葬儀屋のネタはM1で掛けたネタよりも傑作だと個人的には思っている。葬儀屋といえば『空飛ぶモンティパイソン』の第2シーズン最終回のスケッチが有名だが、あれと並ぶほどの完成度である。近年の我が国の笑いの質は格段に向上している。空恐ろしいほどである。

 その後、書き下ろしの「アンナ・ツィメルマン」に若干の修正を加える。1年半ほど前に『異常な殺人博物館』用に書き下ろしたもので、「さぞ稚拙なことを書いているんだろうなあ」と思って見直したら、結構笑えたので「俺もまんざらでもないなあ」と自画自賛した次第。サンドウィッチマンには遠く及ばないけどね。最後に「私見」を述べて、事件の概要を明らかにした。あれは●●を助けるための犯行だったんだよと。これにより事件の異常性がよりはっきりとしたことだろう。


7月7日(火)

『殺人博物館』用の「ラインツ病院・死の天使事件」を執筆。極めて異常な事件であるが、何分にも事件の詳細が不明なので話が膨らまない。ただの紹介文に終わってしまったのが残念だ。
 併せて「ビヴァリー・アリット」等、数本に手を加える。


7月9日(木)

 電子書籍用の書き下ろし「アイリーン・ウォーノス」を執筆。映画『モンスター』を観ながらの執筆なので、結構時間がかかってしまった。それにしてもシャーリーズ・セロンはスゴいなあ。ウォーノスにそっくりだ。役作りのために13kgも太ったそうで、役者の鑑だ。美貌の女優だけに、その姿勢には頭が下がる。かく云う俺は、煙草をやめようにもやめられないのだ。体重は減る一方なのに。


7月10日(金)

 電子書籍『女でも殺す』のアートワークをした後、あるコンペ用に『へんてこ星』の完結編を執筆。


7月12日(日)

 あるコンペ用に『子供たちのための実録犯罪シリーズ〜マルタ』を執筆。実在の事件をモチーフに、子供向けの道徳教育的な作品に仕上げたものである。なかなか面白い試みだったので、これからも機会があれば続けたい。


7月22日(水)

 禁煙6日目にしてようやく禁断症状が薄れる。しかし、脳味噌は相変わらず使い物にならず。何も書けずにいる。

 図書館に「鈴弁殺し事件」について調べに行く。というのも、或るサイトで犯人の「山田憲」を「やまだあきら」と読むとあったからだ。ところが、私が所持している参考文献はすべて「やまだけん」なのである。そこで図書館に赴き『大正ニュース事典・第4巻』を当たったわけだが、当時の報道では「やまだけん」だった。
「山憲(やまけん)事件」としても知られているわけだし、私は「やまだけん」で行こうと思う。


7月23日(木)

 昨晩の8時頃、生まれて初めて「未確認飛行物体」という奴を目撃した。北東の空に3分間ほど浮かんでいやがった。どうせ幻覚なのだろう。それほどに禁煙の禁断症状はシビアである。

 本日は『空飛ぶモンティパイソン』の「サイコな床屋〜ランバージャック」の回に出て来た「レッド・アイ」というカクテルを飲んでいる。作り方は簡単で、ビール半分にトマトジュース半分。お好みでレモンや胡椒、タバスコを加える。初めて飲んだのだが、これがなかなかの美味である。但し、アルコール度数が低いのが玉に瑕だ。飲んでいるそばから酔いが醒めてしまう。途中からいつもの焼酎のお湯割りに変えて、禁断症状と戦うことにする。

 話は変わるが、ビデオ版『呪怨』の続編を初めて観る。前作の映像が30分以上も使われている(全体は76分)。これは果たして続編にすべき作品だったのか? まとめて1つの作品にするべきではなかったか? 思うに、新人監督に試しに撮らしてみたところ、思いのほか良いものが出来たので、無理からにバラして前後編にしたのではないか?
 続編からは大した収穫はない。ただ、ジェニファー・ビールスが夫をフライパンで殴り殺す元ネタが確認出来たのみである。


7月29日(水)

 筒井康隆氏が自身のブログで怒っておられる。
「おれは絶対に民主党には投票しないぞ。なんとばらまき予算の財源のために煙草税を増やすというではないか。煙草が高価になるくらいはしれておるからなんともないが、嫌煙権運動に阿ってのその心根が卑しい」
 本日で禁煙13日目の私としては、いったいどうしたらいいのやら。

 私が禁煙を決意したのは、税金を払うのがいい加減バカバカしくなったからである。また、ここのところ体調が悪く、煙草を不味く感じるようになったからでもある。
「今日も元気だ、たばこがうまい」
 これは往年のハイライトの宣伝コピーだと記憶するが、煙草は確かに健康のバロメーターだ。ここ数ヶ月はとても不味く感じていた。それでも吸い続けていたのはニコチン中毒ゆえである。ニコチン中毒をバカにしてはいけない。その禁断症状は半端ではない。なにしろ「未確認飛行物体」を目撃するほどだ。13日目の今日はさすがにかなり楽になったが(ちなみに、私は禁煙ガムの類いは一切用いていない)、尚も頭痛や腹痛、下痢に悩まされている。明日になればもう少し楽になり、執筆を再会出来るやも知れぬ。

 今日は横溝正史の『本陣殺人事件』を種明かしの前まで読む。映画は何度も観ているが(中尾彬がジーパン姿の金田一を演じているバージョン)、原作を読むのは小学生以来だ。金田一には吃音の癖があり、それを石坂浩二が忠実に演じていることに気づき、思わず笑ってしまった。
「き、き、君!」
 とか、
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
 とか。


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