展覧会の紹介
『大地康雄の油絵』展 2001年人間模様シリーズ |
ギャラリーノルテ (中央区北1西6、安田生命北海道ビル3階) 2001年8月27日(月)〜9月1日(土) |
日本人が油絵をかくということには、あるいは、日本で油絵をかくということには、そもそも、どこかに無理が潜んでいるような気がしてならない。
西洋人と同じことをやろうとしたって、どだい不可能なんじゃないか。それでも油絵に取り組むのだったら、自分の資質に反しないような、やり方でいくしかないのではないか。たとえば、中川一政や梅原龍三郎も、そうやって試行錯誤しながら、日本人らしい(つまり自分らしい)油絵を描いてきたのだろう。
日本人らしい、といっても、いかにも日本らしい意匠を盛り込めばいいというわけではない(もちろん、イエローマジックオーケストラみたいに戦略的にやることはありうるけど)。
大地康雄のキャンバスが屏風型になり、画面が土佐派や狩野派を連想させる緑や金で覆われているのも、それは単なる意匠として導入されているのではないだろう。
自分の描きたいものを描いているうちに自然にそうなったというほうが適切ではないだろうか。
今回の個展も、ここ数年と同様、「人間模様」と題した作品が中心。それぞれ、「饗宴」「奪宴」「妖宴」などと風変わりな副題がついている。
モティーフは、肌の白い女性。横たわる女性と、腰をおろして座る女性を、組み合わせた構図だ。それぞれの区別もつかないほどにデフォルメされており、陰影には乏しい。裸婦のように見えるが、華やかな模様の着物をまとっているような女性もいる。副題につく文字が「宴」であることを考えると、芝生の上にシートを敷いて花見を楽しんでいる情景のように見えなくもない。さきほども書いたように、緑や金が地のかなりの部分を覆い、モノクロームの女性たちと著しい対照をなしている。
しかし、もっとも特徴的なのは、画面が二双一曲の屏風のように折れ曲がっていることだろう。なかには、普通の屏風とは90度異なり、横一直線に折れ目ができている作品もある。額縁のように画面を取り囲む板と、屏風状のキャンバスとの隙間には、鏡が張られている。
ただし、昨年まであちこちに散乱していたビール瓶は姿を消した。ところどころに、小さな四角形や丸が風のようにちらばり、画面に動感を与えている。さらに、小さな正方形や細長い四角形に切り取った鏡の破片がコラージュのように貼り付けられているのは、新しい試みだ。とはいえ、画面構成はかなりすっきりと、見やすくなってきているようだ。
作者はここ数年、独立美術で賞を獲得するなど、進境著しい。
個展も、毎年の札幌のほか、東京でも活発に開いている。小品23点なども出品。
札幌在住。全道展会員。