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マイちゃんオランダ滞在記  
Vol.003



こんにちは☆麻衣です。

今月から、Duendeに滞在期間中のプロジェクトを開始しました。

コンセプトを簡単に説明すると、ロッテルダムの住人から“生活必需品”(日用品の中で不要になった“もの”、または現在使用していない“もの”)を集めて、人間の身の周りにある“もの”と“布”と“人”の関係性を探るというもの。その手段として「“もの”に、服を着せる」という工程を用いました。今まで私がやった作品はどれも「布」もしくは「服」を素材としていたので、今回は「なぜ、そこにこだわるのか?」を自分に問うことが目的でした。まず最初に、収集するための生活必需品リストを制作していると、“ないと困るもの”と、“なくてもいいけどあると便利なもの”に2分化されることがわかりました。さて、アートは生活必需品?

☆Date:2004.8.3 
ヘルトさんからウクレレをもらった!
ヘルトさんの部屋。楽器がいっぱい
「これが?本当に?」と聞いたら、PCを立ち上げる時や待機中に弾くので、彼にとって生活必需品ということだ。自分で買いそろえると「プロジェクトに必要だから」で終わってしまうけど、人から集めるとその人の持っている“もの”のエピソードが聞けるのでオモシロイ。


マルレーンのアトリエ
マルレーンからは、作品の素材としていつも使っているカーテン(の影を紙に投射して、それを影絵みたいに切ったりしてる。写真の手前が彼女の作品の一部)をGET。

近所の洋裁店の人が協力してくれて、彼女のうちにもお邪魔した。隣の部屋に住んでいるおばさんも協力してくれた!
協力してくれた人のお庭
どの家もきれいにしていて感心。お庭も素敵にガーデニングしていて、本当に生活を大事にしている人が多い。オランダは気候の関係でもともと大地に何も生えてなくて、入植した時にいろいろ植物を新しく育てたらしい。たぶん、そんな歴史があるから自然と生活にそういう習慣があるのかもしれない。(と、磯崎さんが言っていた。)よし、幸先はいいぞぉ〜! この調子でサクサク集めるぞぅ!



☆Date:2004.8.9 


今日は街で見つけた人から、髭そりをゲット!
お父さんの髭そりをくれた人ですしかし、なかなか協力してくれる人が見つからない…みんな口を揃えて「I'm busy!」。明らかに暇そうにしていても、そう言われてしまうのは仕方ないとして、やっぱり家にお邪魔するってのは結構ハードル高いよな〜。どこの誰かもわからない、しかも外国人を普通家にあげないよね。でも、見知らぬ人から入手する方が苦労する分喜びもひとしお。協力者を見つけるのはすごく大変だけど、そうやって当て所もなく街を自転車で走り回ることで、街を散策できるもの。あと、集めるリストが日々変化するのも「本当の生活必需品とはなにか?」というのを問う良い機会だ。例えば、各カテゴリー(掃除用品、料理用品、衣類、洗面用具など)によって、必ず“布”の素材のものはあるけど、カテゴリーによって名称が違ったり素材が違ったり(それは洗剤も一緒だった!)“必需品”と“便利なもの”との境目もハッキリしてくる。そうして、“もの”と“布”と“人間”の関係性をゆっくりと探って行くのかもしれない。
☆Date:2004.8.12 

今日は、ケルンから裕さんが(現代美術アーティスト。インスタレーションやパフォーマンスをメインに、2年ほどケルンで活動していた。私と同じところから別の年に助成金をもらってきた。今年10月から、ロッテルダムの大学院に通うということで、住むための部屋を探しに)来た。彼女も、本当にいろんなことを知っていて私もこんな風に外国で強く生きれるカナ??と考えると、ちょっとたじろいだ。
倉本祐さんです

彼女について、部屋を紹介してくれるダニエラ(*1 ZiMという街づくり系のアートプロジェクトのオーガナイザーをしている)のところへお邪魔した。頭のよさそうな人で、いろんなプロジェクトを抱えているみたいだ。彼女は、何人かの大家からいくつかの物件を不法占拠されないように管理人(仲介人?)として委託されていて、それで借り主を探しているらしい。今は確実に貸せる物件は保証できないけど、なんとか探してみるとのことなので、とりあえず10月以降のメドはつきそうな予感…まだわからず。

夜は、Foundation Bad(*2)にゲストで滞在している前林さん(サウンドアーティスト。京都造形大の先生でもある。)が来て、オリンピック開催日だったので開会式を観ながら皆でディナー。久しぶりに日本人がいっぱい。でも、予想を裏切らない日本コスチュームのダサさっぷりと、セレモニーの演出が期待外れでちょっとしょんぼり。

*2=Foundation Bad

/ロッテルダムにあるAIR。Duendeの後に、磯崎さんが滞在するところ
☆Date:2004.8.14 



耳栓をくれた前林さんの話で、“生活必需品”、“嗜好品”(=ファッション、物欲、食欲)、“便利なもの”(=電化製品、インテリア)とその人にとっての“必需品”の「違い」というのをもう少し突っ込んで調べて行くともっと奥深く面白くなるだろうという話。例えば、彼の耳栓もしかり、カミール(Foundation Badの主要メンバー。日本に何度も来ていて、建築をベースにいろんな活動をしている。)の場合はやっぱ西洋人だから色素が薄いのでサングラスは必需品だし(ファッションでなく)、喫煙者はシガレットペーパー(か、たばこ)がないと困るし、私なんかはお菓子とアイスと虫さされの薬は必需品な訳で。人によって本当に多種多様に違うから、逆に探るべき新たなカテゴリーなのかもしれない。でも、やるならやっぱ服をつくって行きたいな〜と思うので、それはもうちょっと考えよう…(例えば、布のマテリアルを提供してもらって服をつくり続けるとか?こないだ気づいた各カテゴリーにある布のオブジェクトの名称の違いなんかも調べるのに時間がかかると思うし。)

そこら辺のところが、私の活動ってやっぱりファッションとアートの境目で右往左往しているんだなぁ〜と実感した。うん。

ま、人の話はきちんと聞くけど、それに惑わされず、自分を見失わないことが大事ですな。
☆Date:2004.8.17 

ゲストアーティスト達と主要メンバーが集まって、今度の展示についてのミーティングがあった。自分なりにプレゼンの資料をつくったけど、論点はいつやるのか/DMは誰がどのくらいつくるのか/それは自分でデザイン、発注できるのか/告知はどんな方法か、など実質的なこと。磯崎さんが言うには、こっちの思考回路、というか話の進め方は

1)私は「何」がしたい

2)なぜなら、こういう「理由」だから

3)じゃ、それについて話し合おう

という風に、まず先に自分の希望を明確に述べることから話が始まるので、日本人の曖昧な表現は論点がわかりづらくて話が進まないらしい。(例えば。私は「こう思う」んだけど、あなただったらどう思う?みたいな、自分の希望がハッキリしないものの言い方)
だから、今回の私のような、「みんなに迷惑がかからない方でいい」みたいな消極的な配慮なんかは、欧風的には理解しがたい感情で、そもそも私のアーティストとしての一般的な知識の無さも加えて、彼らの話し合いは難航しているようだった。

結局、話のまとめとしては私が考えている今回の展示は
「オープンスタジオ」
「プレゼンテーション」
「展覧会」
の中で「展覧会」に近い形のものだったのに対して、皆に「オープンスタジオ」と伝えていたので、難航の原因はそこの食い違いからくる論点のずれだった。
一般的に「オープンスタジオ」とは、「展覧会」より略式的なもので、例えば自分のアトリエで過去の作品をスライドで、パッ・パッと見せるだけ、とかつくっている途中のものや、近いうちにやろうとしているプロジェクトの説明だとかが、あんまり片付いていない自分のスタジオの片隅で見せたりなど。DMも1〜2色刷りA4サイズくらいで簡単に告知されたり、E-mailだけだったりと簡単。
それが、どこか共同スタジオとかがあって、そこにいるアーティスト達全員が参加するような「Duende OPEN」(*3)みたいな。そういうのだと、もっと公式なきちっとした「プレゼンテーション」となるらしい。この場合は、一般にはあまり知らせず、ギャラリストやアート関係者に内々にメールで告知するらしい。マルレーンは母心で「彼女はそういうの初めてだから、きちんとした告知がしたいだよ」とみんなに説明してくれたみたいだが、他の人は「一人でつくるのなんてかわいそうだよ(変だよ)みんなの名前が入ったのをつくればいいじゃない。」などなど…

ま、そんな訳で、結論として。E-mailは3人まとめて送る。フライヤーは、私はきちんとしたのを自分でつくる。磯崎さんは、「フェイク・フライヤー」を作成。トーマス(もう一人のゲストアーティスト)は、自分のアトリエで一般的に言うオープンスタジオをする。告知は不明。ということになった。
*3=Artist Initiative Duende/私が2004年7月〜9月まで滞在しているところ
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