◇牧師室より◇
コロナ禍が続いている。秋冬に再び感染が増加する懸念もあるので、用心しつつ生活することは当分続く
と覚悟しなければならないだろう。今より外出自粛が強く呼びかけられ、街から人影が絶えていた頃、たびたび脳裏をよぎったイメージがあった。それは、創世記にあるノアの箱舟と世界を覆う大洪水の記述の中で、ノアが洪水の終息を見極めるために、箱舟から鳥を放つくだりである(8章6−12節)。最初に放たれたカラス
も、二度目に放たれたハトも、乾いた土地を見つけられず舟に舞い戻った。三度目に放たれたハトが、オリーブの葉をくわえて戻って来たので、ノアは、地上から水がひいたことを知ったのである。用心深いノアは、さらに七日待って再びハトを放ち、それが舞い戻らないことによって、洪水の終息を確信した。神様からノアの一行に下船の指示があったのは、さらに後で、実に洪水の始まりから一年後のことと記されている。ただ神様からの下船指示を待つのでなく、鳥を放ってみるノアの好奇心に、私は親近感を抱く。 (中沢麻貴)