牧師室より

 大寒を過ぎてからの一週間ばかりは、本当に寒い日々である。半世紀前のわが幼年期、真冬の外遊びで、「おしくらまんじゅう」をした。砂場などで足元に線を引き、押し合って線から出たら負け、というようなルールだったが、時代を反映したヴァリエーションがあった。線を越えないように押し合いならが、「安保!」「粉砕!」やら、「エンプラ!」「反対!」とかいう掛け声で、おしくらまんじゅうが、盛り上がったのである。そういえば、ジグザグ・デモごっこというのもあった。1960年代の砂場に、大人の世界の関心事が映し出されていたのである。

 ちなみに、安保は日米安全保障条約のことで、砂場の遊びに反映されていたのは、70年安保闘争である。詳細な説明は省くが、在日米軍の存在根拠でもある安保条約が70年に自動延長されることへの反対運動が起きていた。おしくらまんじゅうの掛け声は、そのデモ隊のシュプレヒコールに由来する。「エンプラ」とは、米国の原子力空母エンタープライズのこと。1968年、エンタープライズが佐世保に寄港することへの抗議運動が激しく行われた。反戦、反米、反核の三要素を含む抗議であった。

 いま、真冬の子どもたちは、どこで遊んでいるのだろう。幼年期も室内でゲームしているのだろうか。インフル予防の観点から、おしくらまじゅうのような激しい身体接触を伴う遊びは推奨されないのだろうか。

半世紀前の子どもの目には、「アンポ」や「エンプラ」の意味は、よくわからなくても、そうした問題を真剣に考えてもがく大人の姿は、深く印象に残った。いま、子どもにまねしてもらえる姿を、大人は見せているだろうかと考え、少し自分を恥じる気持ちになる。

でも、嘆くことはない。来週、社会委員会の学習会が開かれる。講師としてお話しくださる鈴木法子さんは、2015年夏に、「安保関連法案に反対するママの会@神奈川」に参加、会は形を変えたが、今も継続した活動をしておられる方だ。70年安保のコールは、おしくらまんじゅうに反映されたが、15年夏の「ママの会」のコールは、『だれのこどももころさせない』という絵本になった。こっちのほうが素敵である! 絵本の帯にもある、「ママ、きょうのよる、せんそうにならない?」「だいじょうぶ。ママはね、せんそうしないときめたの」という親子の会話が胸を打つ。普通の大人の、平和を守る力が、ここに見える。

日本も空母保有の動きありというニュースを聞き、危機感を持つ。エンプラ反対どころか、より悪い方へ時代が動く予感がする。普通の大人として、ちゃんとしたいので、来週はお話をうかがって、しっかり学びたい。        (中沢麻貴)