牧師室より

お気に入りの数学パズルの問題。

「『ホテル無限』は、部屋数が無限室の大ホテルなのだが、休暇シーズンとあって千客万来、満室だった。そこへ、宿泊希望のお客さんが1名やって来た。この人を泊めるにはどうしたらよいか?」(ご自分でパズルを解きたい方は、この先は読まないでくださいね。)

 答えは、端っこの部屋のお客さんに、ていねいに声をかけ、隣の部屋に移ってもらう。その部屋のお客さんは、またその次の部屋に移ってもらう。そうやって、順繰りに部屋を交換していけばよい。最初に空けた部屋に新しいお客さんは泊まれる。無限室あるどこか一か所で、部屋の交換が行われていることになるが、みんなに一瞬の好意と不便を経験してもらうだけで、全員が宿泊することができる。無限プラス1イコール無限。これが無限の特徴なのだ。

 戦争しない世の中にするために自分に何ができるか、とか、貧困や差別をなくすために自分に何ができるか、とか、そういうことを考えてみるとき、自分ができることの小ささにがっかりしそうになることがある。そうした時には、このパズルを思い出す。どんなに小さなことでも、無限連鎖させていけば、やがて何かが変わっていくかもしれないと、想像してみる。わたしが、隣の誰かに、「戦争反対。誰の子どもも殺させない!」という、小さな子をもつお母さんの声をリレーしたら、その声が無限連鎖していって、いつまでも消えない声になっていく様子を、思い描いてみる。「母の日」をはじめたアンナ・ジャービスを見習って。

         (中沢麻貴)