牧師室より

クリスマスおめでとうございます。

 子どもの頃、教会のクリスマス礼拝に出かける朝、母から言われたことを思い出します。「今日は、クリスマスで特別な日だから、教会で会った方には、いつものように“おはようございます”じゃなくて、“クリスマスおめでとうございます”と、ご挨拶するのよ」。メリー・クリスマスという、英語由来の挨拶を知るより前に、それが私の中に定着しました。

日本語の「おめでとう」には、その挨拶を送る相手が、「愛(め)でたい」つまり、愛されるべき、祝されるべき状態にある、という認識が込められています。なので、あなたは神様に愛され、祝福されているのですよ、という意味を込めて「おめでとう」という言葉を誰かに贈るのは、クリスマスにふさわしい挨拶だと、改めて思います。メリー・クリスマスと言ってもいいのですが、メリーmerryは「陽気な、祝祭気分の」という、どこか浮き浮きした気分を反映している気がします。それに、キリスト教がアメリカの(もしくは英語圏の)宗教であるという、私の意見としては間違った認識を助長する感じがあって、少し使うのをためらったりもするのです。

この年末は、友人・知人から喪中欠礼のお葉書を何通もいただきました。お葬式のあった家には、年始におめでとうと言うことを遠慮するのが、この国の風習のようです。でも、クリスマスは悲しいことがあった人にこそ、その喜びを届けたいのです。御子の誕生は暗闇を照らす光だからです。クリスマスに「メリー」とは言えなくても、「おめでとう」という言葉は届けたいと思うのです。

クリスマスおめでとうございます、の後にうっかり「今年もよろしく」なんて言わないよう注意ですが。

    (中沢麻貴)