◇牧師室より◇
9月14日、沖縄県知事の翁長雄志氏が記者会見を行い、辺野古新基地建設にかかわる埋め立て承認を、取り消すことを明らかにした。
「承認取り消しに至った決め手は?」という記者の質問に答えて知事は、8月〜9月にかけて行われた政府と県の「集中協議」を挙げた。「5回の集中協議の中では、私は考え方をほとんど申し上げたが、返ってくる言葉はほとんど少なくて、残念ながら私の意見を聞いて考えを取り入れようというものは見えてこなかった」「最終日の集中協議の中で、私の方で工事を再開するんですかと申し上げると、そのつもりですという話があったので、その時点で取り消しの決意を固めた」(『沖縄タイムス』2015年9月14日)。
その直後に、東京で行われた記者会見で菅義偉官房長官は、「承認に法的瑕疵(かし)はない」「知事の発言は政府や沖縄県の多くの人がしてきた(普天間飛行場の)危険除去の努力を無視するような発言で残念でならない」(同上)と発言した。まるで沖縄県民を危険に曝しているのは、翁長知事であるかのような発言である。明らかに問題のすり替えだ。
ちなみに、政府が「集中協議」を提案した理由について、沖縄教区の村椿嘉信牧師は、沖縄県と法廷闘争に入る時期を遅らせ、安全保障関連法案を成立させようとしたため、と分析している(『福音と世界』11月号)。
この間、辺野古現地では、基地建設反対派のテントを、賛成派が襲撃するという事件が頻発している。基地建設に反対する人たちを孤立させない支援の輪が、今ほど求められている時はないと思う。
(中沢譲)