牧師室より

厚生労働省は、2009年にはじめて日本の貧困率について公表しました。

当時の厚労大臣は長妻昭氏。この公表によって、OECD(経済協力開発機構)加盟国30カ国中で、貧困率が4位(相対的貧困率14.9%)ということが明らかになりました。少なめに表現しても、7人に1人が貧困の中に置かれていることになります。しかも、子どもがいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満)のうち、一人親(母子家庭・父子家庭)の貧困率は58.7%で、OECD加盟国中1位。

 この状況の中で、2011年に日本は震災と原発事故を経験することになります。事態はもっと深刻になっているはずですが、その後の貧困率の発表はありません。「年越し派遣村」で注目された若い世代の貧困の問題も、民主党政権から自民党政権に移る中で、ふたたび見えなくされています。しかし、マスコミが取り上げなくなったからと言って、貧困の問題、仮設住宅で生活せざるを得ない人たちの存在、原発の問題は消えてなくなったわけではありません。

 昨今の「脱法ドラッグ」消費者、もしくは製造・販売者、「振り込め詐欺」犯人の登場も、若者の貧困の問題と無縁ではないでしょう。自らの命を絶つこと、ホームレスになる道を選択しなかった若者たちが、禁じられた生を選択をしているのかもしれないと想像するのです。もちろん、当事者の責任を否定するつもりはありませんが、当事者だけの責任だと、簡単に切り捨てることもできないと感じています。

ある新聞に、大学卒業後に就職できず、奨学金の返済に苦しむ人たちに「防衛省でインターンシップ(就業体験)をさせたらどうか」という発言が掲載されました。文科省有識者会議「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」メンバーで経済同友会の理事でもある人物の言葉です。貧しい若者に徴兵制かと、話題になりました。

 若者が希望を持てる社会を築けるかどうか、私たちの国は今、試されているのではないでしょうか。

            (中沢譲)