◇牧師室より◇

今年のノーベル平和賞はアフリカとアラブの三人の女性が受賞した。私は率直に喜ぶ。佐藤栄作元首相50年間、戦争のない平和を維持したとノーベル平和賞を受賞した。佐藤元首相は沖縄返還協議の過程で「核の持ち込み」の密約文書を交わしていた。密使として関わった若林敬氏は「沖縄県民に申し訳がない」と自死された。オバマ大統領もノーベル平和賞を受賞した。政治家への授賞は将来の平和を構築する期待を込めたものであろうが、常に問題になる。

今回は、リベリアのエレン・サーリーフ大統領が受賞した。彼女は弾圧を受けながらも、独裁政権を批判し、経済や社会の再建、そして女性の地位向上に取り組んできた。選挙によって、アフリカ初の女性大統領に就任した。

同じリベリアの平和活動家のリーマ・ボウイー氏は難民生活を経験し、「男性だけでは本当の平和は作れない」と実感した。彼女は民族や宗派を超えて女性を組織化していった。内戦が終わるまで「戦争に関わる夫や交際相手とはセックスしない」とセックスストライキを呼びかけた。これが内戦終結に寄与したという。

ある夫婦を思い出した。二人とも洗礼を受けていた。妻は熱心に教会生活をしていたが、夫は教会に頑として来なかった。妻は夫を教会に誘うため色々な手段を講じたが、効き目はなかった。ある日突然、夫婦で礼拝に見えた。私が理由を問うと、うふんと笑い「一緒に寝てあげないって、言ったの」とのことだった。

イエメンのタワックル・カルマン氏はノーベル平和賞の受賞を喜び、「『アラブの春』の全ての活動家に捧げたい」と語っている。彼女も独裁政権に抗議し、デモと座り込みを続け、賛同する若者は日に日に膨れ上がり、「革命の母」と言われているとのことである。

ノーベル平和賞を受賞した三人の女性たちの闘いについて、色々な雑誌で紹介しているが、それこそ命を賭けたものであった。民主と平和を作り出し、女性の人権を獲得しようと、女性の持つあらゆる手段を用いて闘っている。女性の力は大きい。非暴力で活躍する彼女たちを支援し、平和な世界を目指したい。