◇牧師室より◇
今年の秋、10月29日(土)と30日(日)の特別伝道集会に金 纓牧師を講師にお招きする。子どもの教会リーダー会ではここ数年、特別伝道集会の講師の著作をテキストにして研修会をしている。今年は、金牧師の「チマチョゴリのクリスチャン」の読書会をすることにした。
儒教の伝統を持つ韓国は男尊女卑の風潮が色濃く残っている。歴史を英語で「history」という。これは「his
story」 彼、男の物語である。金牧師は「チマチョゴリのクリスチャン」で、曾祖母、祖母、母、ご自分と四代に渡るキリスト教信仰に生きた韓国の「her story」 彼女、女の物語を書いている。
1910年、日韓併合によって日本の植民地下に置かれた。土地、財産、言葉、名前を奪われ、天皇を神とする神社参拝まで強要された。日本の敗戦により解放されたが、米ソの代理戦争に巻き込まれ「朝鮮動乱」という、同じ民族による殺戮の悲劇を体験した。その後も、軍事政権下で民主化運動は弾圧され、多くの若者が命を落とした。更に、韓国民衆には受け入れ難い「日韓条約」が締結された。韓国の現代史は苦難と悲しみの歴史であった。
韓国のクリスチャンたちは、これらの苦難と悲しみを真正面から受け止め、正義と愛を求めて、信仰を力強く、そして真っ直ぐに表した。この強さが韓国教会を成長させたのではないか。
金牧師の四代の女性たちも、それぞれの時代にあって、耐え難いような苦難を受け、投獄にもひるまない壮絶な生き方を貫いている。その情熱的な信仰に圧倒される。
金牧師は日本基督教団の牧師をしておられる。ご家族も幾代にも渡って、日本との深い関わりの中にある。金牧師の連れ合いの沢正彦牧師は日韓和解のために生涯を尽した。癌に侵され、ご夫妻の共著『弱き時にこそ』を遺し、逝かれた。
昨年、「日韓併合」から100年目を迎えた。両国の関係は隔世の感がある。嬉しいことであるが、血を流した歴史の事実を知ることによって、和解は真実なものになる。北朝鮮とは和解の糸口さえ見出し得ない現実にある。