牧師室より

「政権交代」と言われた衆議院選挙が行われ、自民党・公明党連立与党は惨敗した。殊に自民党は大敗北を喫した。戦後64年の間に23回、他党が政権を担うことがあったが、ほぼ一貫して保守の自由民主党系が政権を握ってきた。彼らによって、戦後の貧しさから立ち直ってきたことは確かで、その功績は認められて当然であろう。

しかし、近年の自民党は国民生活から遊離していた。国民に問うことなく、次々に首相を変えていった。4年前、小泉元首相は新自由主義経済の旗を振り、「郵政民営化選挙」を強行した。民営化を問うだけの選挙、そして民営化に反対する自民党議員を除籍し、「刺客」とやらを立てて、まさに劇場型の選挙であった。私はこんなバカげた選挙は自民党が負けると思った。しかし、メディアに面白可笑しく報道されて、大勝した。

小泉元首相がもくろんだ「構造改革による経済成長」は、米国発の経済・金融危機と重なり、見事に挫折した。貧富の格差は広がり、働いても生活できないワーキングプアと言われる労働者を多数生み出した。自殺者は年間、3万人を越え続け、理由のない衝動的な犯罪も増え続けている。麻生首相は「責任力を持つ自民党」と言うが、責任を持たないから社会が崩れているのに、それを認めない演説に誰が頷けるだろうか。言葉の空しさを感じたのは私だけではないだろう。国民は自民党に辟易した。「自民党をぶっ壊す」と豪語した小泉元首相が自民党を事実上の崩壊に導き、国民の意思を無視した麻生首相が最後の引導を渡す役割を果たしたように思える。

民主党は衆議院の過半数を大きく上回る308議席を獲得した。戦後初めて、国民が政権を交代させた歴史的な選挙となった。民主党は官僚がお膳立てをした政治ではなく、政治家が主導する政治を行う、また無駄を省き、国民生活を守るように税金の使い方の優先順序を変えると公約している。実行してもらいたい。

民主党には不安があると批判されている。確かに、政権担当能力は未知数だから、不安はある。しかし、この時、政権交代に意味があるだろう。ただ、民主党は国際政治に関して、ウルトラ保守の人もいれば、旧社会党系のリベラルな人もいる。党内調整が困難ではないかと言われている。自・公連立政権下、民主党は平和を模索するような主張をしていた。これを堅持してほしい。

福祉と平和を掲げていた公明党は、そのイメージが変わり、支持を失いつつある。共産党、社民党は現状維持であった。その他の諸々の小政党はどこかの党と合流していくのではないか。突然現れた「幸福実現党」に驚いたが、全く議席を得なかった。 

米国はアフリカ系のオバマ大統領を選び「チェンジ」を求めた。日本も閉塞状況から抜け出す「チェンジ」を求めたのであろう。国民の命と平和を守る堅実な政治への変化を期待したい。