牧師室より

梶原壽先生はマルチン・ルーサー・キング牧師の研究者である。梶原先生と篠ノ井教会の山本将信牧師は「キング研究会」を立ち上げ、毎年会を開いている。私は可能な限り参加している。今年、梶原先生が「歴史を動かした二人の演説−キング牧師とオバマ大統領−」という講演をされた。講演の中で、ピースフル・トゥモロウズのメッセージを紹介された。911で三千人ほどが犠牲になった。百数十の犠牲者家族が武力による報復は止めて、非暴力による平和を実現しようとピースフル・トゥモロウズを立ち上げ、世界中で活動をしている。彼らがオバマ大統領の核兵器廃絶の演説を受けて、日本の被爆者に送ったメッセージである。

「親愛なる被爆者の皆様へ

平和な明日を求める911犠牲者家族の会より 194586日および9日の広島、長崎への原爆投下64周年を記してのメッセージ

 19458月の両日にすべての平和を愛する人々の心を襲った恐怖と衝撃を覚えつつ、またそれらの日々に平和を愛する人々の苦しみを共に分かち合いつつ、このメッセージをしたためます。

 私たちはまた、被爆者の人々が核兵器の破壊力の持つ恐怖と苦難を他のいかなる人々の上にももたらさないために、多大の努力を払われてきたことに、深い敬意の念を禁じることができません。

 全世界の平和を造り出し、かつ愛する人々の灯火として、被爆者たちが与えてくれた不朽のメッセージは、核兵器の廃絶こそが達成すべき目標であるということであります。今年の4月アメリカ合衆国の大統領はプラハにおいて、自国の民と全世界に向けてそれと同じメッセージを発信してくれました。『核兵器を使用した唯一の国として、米国は行動すべき道義的責任を有する。……… それゆえ私は、核なき世界の平和と安全をアメリカは探求すべきであると、明白な確信をもって言明するものである』と。

 私たち「ピースフル・トゥモロウズ」の会員は、このビジョンを実現するべく努力していきます。私たちは2001年に、被爆者たちが911日に苦しみつつ死んでいった者たちの家族を慰め、そして支えるために太平洋を渡ってきてくれたことを、覚えています。ですから、この8月に、私たちもまた核なき世界、非暴力による紛争の解決、そして平和の創造に向かって悔い改めた世界に向かって、共に努力し、よき実を結ばしめていきたいと思います。」

 梶原先生は、オバマ大統領が国際政治の現実に道義性morality)を導入していることに注目して、話された。道義、道徳は世間の秩序に従うという意味で使われるが、正しくは良心性(conscientiousness)で、自己の良心に照らして、不法な法には従わない市民的不服従の思想的態度であると力説された。