◇牧師室より◇
統一地方選挙の前半戦が終わった。注目の東京都知事選は石原慎太郎氏が大差で三選された。石原氏は都政の私物化や不透明性、また貧富の格差を拡大する政策などが批判されていた。私は、偏狭なナショナリズムと人を蔑視する発言に辟易している。
在日外国人を「三国人」と蔑称し、「三国人が騒擾事件を起こすことを想定し、自衛隊・国民の軍隊に治安出動を要請する」と語り、オリンピック招致について議論された時、東大の姜尚中教授を「怪しげな外国人。生意気だ、あいつは」と言っている。また、重度知的・身体障害者療育施設で「ああいう人ってのは人格があるのかね。西洋人なんか切り捨てちゃうんじゃないか。… 安楽死につながるんじゃないか」と信じられない発言をしている。教育現場では「日の丸・君が代」を強制し、歌わない教師を大量処分している。国際感覚、人権感覚を持たない石原氏が都知事を続けたら、日本はますます孤立化し、弱者の権利は守れない。
最近、「従軍慰安婦に軍の強権的な関わりはなかった。また、沖縄の集団自決は軍の命令ではなかった」などという史実を捻じ曲げた発言が政府高官から臆面もなく出ている。
国際基督教大学の千葉眞教授は内村鑑三の「愛国心」を次のようにまとめている。「@愛国心は自国の独立、文化と伝統、礼節を尊重する。A他国を蔑視する利己的な狭い愛国心は真の愛国心ではない。B真の愛国心は他国の権利と発展を希望し、国際主義や恒久平和といった普遍性をもった諸価値を擁護する。C真の愛国心は国が誤った方向に向かった時にはノーと言う。」
内村は二つの「J」を愛する、一つはイエス(Jesus)、二つは日本(Japan)で、イエスは私を世界人として人類の友たらしめ、日本は私を愛国者にし、この二つがしっかり地球に結合せしめると語っている。
私は今、ノーを言う勇気が必要だと思っている。そして、自分と仲間の非・過ちを認めない頑なな精神状況を恐ろしく感じている。人間は間違いを犯す。それを率直に認めるところに人間の尊厳がある。罪と赦しの弁証法の中で歴史は動いている。罪の告白がある時、赦しという新しい展開があるのではないか。