◇牧師室より◇
新自由主義経済は先頭を走る機関車に馬力をつければ、後続の列車を引っ張ることができるという考えであろう。時流に乗った企業は構造改革、規制緩和などによって利益をあげ、更に法人税の緩和もあるという。
途上国で16年間、医療協力をしてきた方が「日本に表れた途上国の症状」と題して投書している。途上国はまじめに働いても貧困から抜け出せず、健康や教育をあきらめなければならない人が多い。先進国たるゆえんはカネの有無にかかわらず、自分の人生を選択できることにあるのではないか、と問いかけている。
健康保険料が払えずに病院に行けない人、介護保険の負担が大きく、サービスを減らし自宅に閉じこもっているお年寄り、また望む教育を受けられない子供がいる。全労働者の3分の1までもが非正規社員であるという。彼らの生活は常に不安定である。最低賃金を生活保護を超える水準にしようと新聞は社説で訴えている。先頭を走る機関車と後尾の列車の間に大きな距離ができてしまっているのが事実である。
経済評論家の内橋克人氏が雑誌「世界」で下記のように語っている。「世界経済フォーラム」が発表する企業のランキングでベストテンの中に北欧5ヶ国が全て入っており、1位はいつもフィンランドである。そのフィンランドの企業が日本の企業と受注契約のため来日した。まず、社長に「あなたは自社が排出する廃棄物の最終処理場をご存知ですか」と聞いた。また、従業員にきちんとした住居空間を与えているかどうか視察した。将来の安全と労働者の待遇を確認してからはじめて契約を結ぶ。これが世界に信頼される企業であると報告している。