牧師室より

米国の「アーミッシュ」と言われる人々の住む学校で5名の女児が銃で撃たれて死亡する悲惨な事件が起った。この事件の続報が新聞に掲載されていた。

10名の子どもたちが並ばされて銃で撃たれそうになった時、最年長のマリアン・フィッシャーさん(13歳)が「私から撃ってください」と言って進み出た。妹のバービーさん(11歳)が「その次は私を」と続いた。容疑者が撃つつもりでいることが分かった時、より小さな子どもたちを助けたい一心で、この言動に出た。病院で意識を回復したバービーさんの話をメディアは伝えた。

更に、アーミッシュの人たちは容疑者の家族を訪ね、赦しを表明し、手をさしのべた。遺族の一部は容疑者の家族を子どもの葬儀に招いた。助かった5名の子どもの内、1人はまだ、重篤だという。

米国のメディアは「女の子の驚くべき勇気」、また暴力をも許し、包み込む生き方に「慈悲の深さは理解を超える」と驚嘆しているそうだが、私たちも同じく驚嘆する。容疑者は「私から撃ってください」と言われた時、何を感じただろうか。彼女たちの真意を受けとめれば、撃てなかったであろう。本当に残念である。彼女たちの優しく、勇気あふれる言動とアーミッシュの人々の対応は、時代に大きな光を与えてくれる。長い伝統と教育の中で養われたのであろう。一般に「力」を信奉し、報復思想から抜けきれない米国にとって、鉄槌を打たれたようなことではないだろうか。

アーミッシュは現代的な文明に背を向け、電気製品も使わない、自動車も使わず馬車に乗っている。そして、徹底した非暴力主義者である。新聞は「アーミッシュ」を「聖書を厳格に解釈し」と説明している。ブッシュ政権を支えている「キリスト教原理主義」も「聖書を厳格に解釈し」と評されている。同じ「厳格」だが、方向は全く違う。聖書は多様な表現をしている。どのように聖書を読むかが問われている。