牧師室より

国連で開かれていた核不拡散条約(NPT)再検討会議は合意に達することができず決裂した。この決裂は現在の世界を象徴している。第1委員会(核軍縮)、第2委員会(核不拡散)、第3委員会(原子力平和利用)の内、第3委員会は合意を得る可能性があったが、最悪の事態となった。核保有国と非核国の大きな立場の違いが決裂をもたらした。

核は米、英、仏、中国、ロシアが保有し、イスラエルも持っていることは周知である。インド、パキスタンが核実験を成功させ、北朝鮮はNPTを脱退し、保有を明言している。イランも疑惑が取り沙汰されている。今回のNPTでは、米国が「国際条約の会議で妥協するより、合意が得られなくても自国の主張を押し通す方がよい」との考えが支配したらしい。米国は包括的核実験禁止条約を拒否し、臨界前実験を繰り返し、使用し易い小型核兵器の研究にも熱心である。その国が核不拡散を求めても説得力はない。イラン、エジプトが強力に米国の横暴を主張したと報道されている。

核保有は北朝鮮の例のように、国際的に発言力を増すことが証明されている。グローバリゼ−ションの中で苦境に追い込まれた国々は核を盾に反撥するだろう。「核の闇市」の問題も浮かび上がっている。テロリストの手に渡れば破壊的なことが起こり得る。米ソ冷戦時代以上に不穏になっている。

核問題は核爆弾だけでなく放射能を撒き散らすウラン弾が既に使用されている。湾岸戦争で戦車を打ち抜く「ウラン弾」が95万発も使用された。広島型原爆の14千発分の放射能に相当する。今回のイラク攻撃で、更なるウラン弾が打ち込まれた。イラクでは白血病、ガン患者が7倍に増え、異常児の出産は加速するばかりである。ウラン弾放射能の半減期は45億年と言われているから、イラクは「静かなる虐殺場」になると言われている。米兵の70万人の内、25万人が治療を受け、2002年までに1万人以上が死亡した。

こんな非道なことが許されてはならない。まず、保有国が核軍縮を実行することが先決である。日本は唯一の被爆国であるから、核廃絶を強力に主張すべき責任と義務がある。憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と謳っている。川柳で「この国は風太の真似はまだできず」とあった。核問題の時にこそ、レッサーパンダのように二本足で立って発言してほしい。