◇牧師室より◇

 梁石日(ヤン・ソギル)氏の「闇の中の子供たち」を衝撃をもって読んだ。タイの子供たちが置かれている悲惨な状況を小説(フィクション)で描いている。

 国民として認知されていないタイの山岳民族や国境沿いに住む難民キャンプの子供たちが人身売買され、児童売買春・児童虐待を受けている地獄のような実情がある。十歳に満たない子供たちは性交とその意味を知らない。その彼らが体と心をバラバラにする暴力と飢えの恐怖の中で、従順に大人の性の慰み者に仕立てられていく。彼らの心に沈殿した痛みと大人への不信は溶けることはない。人身売買業者、斡旋業者、その背後にあるマフィア、そして賄賂で見逃す警察の姿が描かれている。闇の世界はどこまでも残酷である。そして、お金を持つ先進諸国の大人たちはストレス解消の手段として子供たちを買って弄ぶが、その異常さは想像を越える。

 二人の姉妹の悲劇を書いている。先に売られた姉はエイズに犯され、生きたままポリ袋に入れられ、ごみ捨て場に捨てられる。必死に逃げ出し故郷に辿り着くが、村人から受け入れられない。隔離小屋で蟻の大群に襲われ、父親から焼き殺される。後に売られた妹は、ある時から優遇されるが、それは日本人の子供を救う臓器移植のためであり、殺されるという設定になっている。

 買う側に決定的な罪がある。その罪が落とすお金に群がる組織ができる。その下で子供たちの体と心と命が無残に奪われていく。

 これらに立ち向かう勇気ある善意の人々がいる。その力は弱く、脅されて押さえ込まれたり、暴力で抹殺されたりする。しかし、彼らは子供たちを守ろうと屈することなく、国際機関や世界のNGOと連携しながら執拗に闘っていく。買う側を徹底的に罰するしかない。

 Y兄は百人のエイズ孤児を養育しようと立ち上がり、建物は完成した。既に三十数名の子供たちが入居している。ここで、成長した子供たちがタイ社会で有用な働きをすることを期待したい。