その他のフィクショ ン  ※著者アオイウエオ順、除・新着図書

 


赤澤 竜也/吹部!(すいぶ)第二楽章

都立浅川高校吹奏楽部は、顧問のミタセンこと三田村昭典(みたむら あきのり)の類まれな音楽センスと指導で都大会金賞という結果を得た。新学期を迎え、更なる飛躍を目指す浅高吹部だったが、新副顧問のカモティこと嘉門陽子(かもん ようこ)が校長を巻き込み、マーチングコンテストにエントリーすることになる。ミタセンはやりたくないとダダをこね、マーチング経験のない部員たちも戸惑う。部長の沙耶はミタセンとカモティの間を取り持ち、なんとか練習時間を確保するのにクタクタだ。しかし、カモティの熱い指導にマーチングにのめり込む部員が増え、次第に座奏VSマーチングの構図が生まれ…(角川文庫)

赤澤 竜也/吹部!(すいぶ)

私は「ブラバン」と言われなければぴんと来ないのだが、最近では吹奏楽部のことを「すいぶ」と言うらしい。

それはさておき、鏑木沙耶(かぶらぎ さや)は、ほぼ崩壊状態の吹奏楽部でのんきに暮らす、平凡な女子高生。ところが新たに赴任してきた顧問のミタセンこと三田村昭典(みたむらあきのり)が「全国大会を目指す!」と言い出したものだから、さあ大変。なぜか部長になってしまった沙耶は、部員集めに奔走し、フルートからチューバに転向させられるハメになる。このミタセンが、また空気を読まない子供のような大人で、部員たちはさんざん振り回されるのだが・・・(飛鳥新社)

阿川 佐和子/恋する音楽小説

某クラシック番組で曲の合間に使われた物語をまとめたものらしい。妹へのレクイエム〜マリア・カラスの思い出、前略アマデウス様、女たちのドン・ファン幻想、男なんてそんなもの、兄の旅〜「冬の旅」より、妻ハリエットの告白〜「幻想交響曲」より、夫に宛てた手紙〜クララ・シューマン、妹の事情〜歌劇「椿姫」によせて、あたいはドルシネーア、もう一つのフランス革命〜「ラ・マルセイエーズ」、チーズ屋のオーロラ姫、興行師とダンサーの愛〜ディアギレフとニジンスキー、妖精たちのシンデレラ、ソルヴェイグの旅、ママちゃんの夢〜明治の歌姫三浦環の生涯、アリス・グッドマン物語、ムーラン・ルージュの密かな恋、アリスと猫の旅、足長おじさんからのEメール・・・の19篇。「幻想交響曲」ってストーカーの曲だったのね(笑)。(講談社文庫)

朝倉 卓弥/四日間の奇蹟

如月敬輔は将来を嘱望されるピアニストだったが、留学先のオーストリアで事件に巻き込まれ、左薬指とピアニスト生命を失う。その事件で敬輔に命を救われたのが、千織(ちおり)という知的障害のある少女。両親を殺され、成り行き上、敬輔の家に引き取られることになるが、彼女は一度聴いた曲は正確に再現できるという特殊な才能の持ち主だった。敬輔は千織にピアノを教え、様々な施設に慰問演奏をするようになる。そして訪れたある山奥の施設で・・・後半は涙なしには読めません。癒し系ファンタジーとでも言ったらいいんでしょうか。コミック化もされました。コミックのコーナー参照。(中公文庫)


浅田 次郎/シェエラザード

昭和20年、R.コルサコフの「シェエラザード」が流れる中、嵐の台湾沖で沈んだ弥勒丸。その船には、多くの民間人を含む2300人の命と膨大な量の金塊が積まれていた。そして今、弥勒丸引き上げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく・・・この船に与えられた使命とは?そして、事件に巻き込まれていくかつての恋人達の運命は?(講談社文庫)
余談になりますが、R.コルサコフは海軍士官の経歴を持っているんだそうです。第4楽章は、弥勒丸の最期にまさにぴったり!圧巻のシーンです。

あさの あつこ/アレグロ・ラガッツァ

allegroは、陽気な、快活な。ragazzaは、女の子、少女、娘

中学でフルートと吹奏楽に挫折した相野美由(あいの みゆ)。ぐじぐじ煮え切らない性格を変えていこうと心機一転迎えた高校の入学式で、大人びた美少女・久樹(くき)さん、人懐こい美少年・菰池(こいけ)くんに出会う。菰池(こいけ)くんは吹部希望。久樹(くき)さんのドラムに憧れてパーカッションを始めたものの限界を感じ、ユーフォニアムに転向。一方、久樹(くき)さんは周りに合わせるのが苦手で不器用な性格。ドラムからも遠ざかっていた。それでも、3人そろって吹奏楽部に入部することになるのだが・・・

結局、美由が選んだというか、やるはめになった楽器はピッコロ。「フルートの君」こと藤原さんは、最強の部長!(朝日文庫)

天沢 夏月/吹き溜まりのノイジーボーイズ

一条亜希は帰宅部の高校2年生。担任の平野から、「吹き溜まり」と呼ばれる旧講堂にたむろするヤンキーたちに吹奏楽を教えて欲しいと頼まれる。亜紀は、中学時代は吹奏楽部だったが、1年前この高校で一旦廃部になった吹奏楽部を立ち上げようとして失敗しているのだ。札付きのヤンキーたちを前にして怖気づく亜紀だったが、下手ながらも音楽を楽しむ彼らの熱意にほだされ、一緒に文化祭を目指す決意をする。ところが、吹き溜まりの中でも一番有名な不良・夏目に1か月で「アルヴァマー序曲」をモノにしろと言われ・・・

青春物のストーリーは嫌いじゃないけど、初心者集団に1か月でアルヴァマーは絶対無理ですって!(KADOKAWA・メディアワークス文庫)


天沢 夏月/マエストロ・ガールズ 〜このコルネット、憑いてます。〜

帰宅部で、のんびり高校生活を満喫していた美香は、ゴミ捨て場でコルネットを見つける。なんの気なしにつかむと、すぐそばで、「あ、そこ触らないでほしい」という声が・・・そのコルネットには、天才演奏家だった少女・紫乃の幽霊が憑いていたのだった。小さい頃から練習練習の毎日を送ってプロ活動をし、難病になって高校へ行かなかったという紫乃の望みは、高校の吹奏楽部に入って大会に出て、普通の学校生活を送ること。吹奏楽部顧問の風間先生に恋する美香は、紫乃の願いを聞きいれ体を貸すことにする。しかし、演奏は紫乃まかせで今ひとつ真剣味が足りない美香の態度は、トランペットの同級生・川崎や親友のマコ、紫乃までも怒らせ・・・(小学館文庫)

あまん きみこ:作/いせ ひでこ:絵/雲のピアノ

ヒロシとチカのおじさん・青木タミオさんは、ピアノの調律師。独身のおじさんを心配して時々お母さんが作る、野菜たっぷりの「エイヨーべんとう」を自転車でマンションまで届けるのが、2人の楽しみだ。おじさんは、調律師の仕事を「いや、それが、なかなかおもしろい。」と言って、2人に不思議な話を聞かせてくれる。

「海のピアノ」「星のピアノ」「野のピアノ」「森のピアノ」「花のピアノ」の5編収録。(講談社)

荒木 源/オケ老人!

「ちょんまげプリン」の作者・荒木源氏のエンタテイメント小説。主人公は高校の数学教師。転勤先の街でたまたま聴いたアマオケの演奏に感動し、ヴァイオリン再開と入団を決意。ところが、楽団名をきちんと覚えていなかったために、間違えて「梅ヶ丘交響楽団」へ入団してしまう。憧れのアマオケは「梅ヶ丘フィルハーモニー」で、やり手のコンマスが梅響団員をひきぬいて創設したもの。残された梅響団員は、老人ばかりのオンボロ・オケだった。。。。。あらあら、なんだかどこかで聞いたような話。で、これにスパイやら有名指揮者来日やらからんでくるのであった。

なりゆきで老人オケのコンマス兼指揮者になってしまった主人公。梅フィルを超大物指揮者がゲストで振ると聞いて、掛け持ちで入団することにする。なんとか2ndヴァイオリンの末席に入ったが、一番下手な者が本番で降り番になるシステム。譜面を見にくくされたり、弾けないところが目立つようにされたり、ボウイング変更を教えてもらえなかったり、意地悪されるのであった。。。。。あらあら、またどこかでありそうなお話。

もちろん、梅響にはフルートのおばあちゃんもいる。もと小学校の先生だった真弓センセイ。真弓センセイは、老人オケの中では比較的まともに吹け、ボケてもおらず、しっかり者である。ところが、あっさりオレオレ詐欺にひっかかり、ショックで退団届を出し、ひきこもりになってしまう。もちろん、それでは終わらないんだけど、まるで自分の将来を見るようである。

これ、映画化したらおもしろいだろうな。10年後だったら、私が真弓センセイをやるぞ。(小学館文庫)

池永 陽/国境のハーモニカ

在日朝鮮人の少女スーインとの初恋の記憶。鋳物職人の章之は、職場で働くタイ人のチャヤンや、やはり在日朝鮮人のフウコと交流するうちに、過去の自分と向き合うことになる。チャヤンたちのことを入管に密告するよう迫る社長。マンガン鉱山から追い出されるように去っていったスーイン母娘の記憶。別れのときに、どうしても受け取れなかった思い出のハーモニカ。そのハーモニカは、今でもスーインの机の中に残されているのだろうか?(角川文庫)

井上 香織/やさしい旋律

母の自殺、友人の裏切り、失恋・・・過去のつらい体験から恋に臆病になってしまった茉莉亞。仕事で知り合った榊に惹かれながらも、いま一歩踏み出せないでいる。ところが、ある雪の夜、粗大ゴミ置き場に捨てられてた古いピアノを拾ったことをきっかけに、自分と向き合うことに。大学時代の恋人・冬馬や義弟・七海への気持ちも確かめながら、運命の人を探していく。(幻冬舎文庫)

小川 洋子/やさしい訴え

夫には好きな女性がいる・・・現実に疲れ、山間の別荘に逃げ込んだ瑠璃子。そこには、チェンバロ職人の新田氏とその女弟子・薫が暮らしていた。新田氏は、ピアニストとして華麗なデビューを果たしながらも挫折、妻とも離婚。薫は、結婚直前に婚約者を他の女に殺されるという過去を持っていた。3人の不思議な関係が、静かな別荘地に築かれていくが・・・(文春文庫)

奥乃 桜子/あやしバイオリン工房へようこそ

上野の楽器販売店をクビになった惠理は、衝動的に仙台行きの夜行バスに乗る。当てもなく仙台の街を歩いているとき、バイオリンの音色にひかれ、「あやしバイオリン工房」を訪れる。そこで出会ったのは、「弦城(げんじょう)」と名乗るストラディヴァリウスの精。惠理には弦城の姿が見えるが、店主の彰志大地(あやし だいち)の他、見える人間はめったにいないらしい。弦城は勝手に音を出すくせに、人間に弾かれることは拒否し、「音の出ない楽器」として持て余されている。何か理由があるようなのだが、弦城は語ろうとしない。惠理は、成り行きで大地や弦城と一緒にE線だけが鳴らない「呪いの楽器」を調べることになるのだが・・・(集英社 オレンジ文庫)

鬼塚 忠/カルテット!

永江開(ながえ かい)は、中学2年生。バイオリン教室の千尋先生に憧れているのだが、最近自分の音楽に何か足りないことを指摘され、悩んでいる。一方、開の家族はというと、リストラで失業中の父、パートに明け暮れ余裕のない母、反抗的な姉・・・と崩壊寸前。なんとかしたいと思い、開は家族でカルテットを組むことを提案する。
姉の美咲がフルートを吹くんですが、これがとんでもない奴なんですね。出来の良い弟に引け目を感じ、弟ばかりに期待する両親に反抗するわけなんでずけど、ステージでは吹けもしないくせに目立ちたがりだし(笑)。(河出文庫)

恩田 陸/蜜蜂と遠雷

2017年の直木賞と本屋大賞をダブル受賞。芳ヶ江国際ピアノコンクールを初めから終わりまで描いている。主役級のコンテスタントは4人。

風間塵(かざま じん)、16歳。フランス在住。養蜂家の息子。ピアノはほぼ独学で正規の音楽教育も受けていない。自宅にピアノもない。ピアノの大家・ホフマンに見出され、推薦状を得る。天然系の天才。通称「蜜蜂王子」。

栄伝亜夜(えいでん あや)、20歳。天才少女としてデビューし、活躍していたが、13歳の時、突然の母の死のショックで舞台で弾けなくなる。恩ある音大の学長・浜崎の勧めでコンクールに出場することになるが、気がすすまない。

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、19歳。日系三世のペルー人の母とフランス人の貴族の血筋の父を持つ。多方面に才能を発揮し、スター性をもつ正真正銘の王子様。幼いころ日本で暮らしたことがあり、その時ピアノと出会うきっかけになったのが亜夜であったとわかる。

高島明石(たかしま あかし)、28歳。国内のコンクールで入賞の経験もあるが、音大卒業後は楽器店勤務のサラリーマン。幼馴染で物理教師の妻と幼い息子がいる。生活者の音楽もあると考え、これが最後との思いで出場を決意。亜夜のファンだった。

私のお気に入りキャラは明石。第1次予選で既に泣けました。塵の影響で他のコンテスタントが覚醒していくところがすごい。ネタバレになるから、コンクールの結果は言えませんが・・・(幻冬舎文庫)

恩田 陸/祝祭と予感

「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編集。亜夜とマサル、そしてなぜか塵が恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔(そうたい)」。コンクールで一位なしの二位に入賞したナサニエルと三枝子「獅子と芍薬」。菱沼が課題曲『春と修羅』を作曲するきっかけとなった教え子の死「袈裟と鞦韆(ブランコ)」。ジュリアード音楽院のプレ・カレッジでナサニエル・シルヴァーバーグに師事したいと画策するマサル「竪琴と葦笛」。ヴィオラに転向し、楽器選びに悩む奏「鈴蘭と階段」。幼い塵と巨匠ホフマンの出会い「伝説と予感」。さらに、音楽エッセイ集「響きと灯り」の特別オマケ付き。

私の好きな明石が全然登場しなくて残念だったけど、ナサニエル・シルヴァーバーグが好きになったよ。この人、かわいいんだもの。そして三枝子、最強!(幻冬舎文庫)

風祭 千/チューニング!

鳴海あさ、中2。2年前に大好きだった叔父・エイト(栄人)を亡くしてから、何に対してもやる気が起きない。エイトは青森県内限定のミュージシャンだった。あさも、小学生の頃はミュージシャンを目指してはいたものの、同級生の男子にからかわれ、エイトを疎んじるようになっていた。ギターを弾いて歌っている時だけが自分を解放できると感じながらも、それを周りには見せないでいる。ところが、男女4人で組む弘前市内自主研修の班で、思いもよらないメンバーと組むことになってしまった。幼なじみでホルン大好き少年のタニシュン、ガリ勉でクラスの嫌われ者の関、小さい頃は仲良しだったのに溝ができてしまったかなみん。班長を引き受けたものの、このメンバーで話し合いがまとまるはずもなく、計画も進まない。なのに、音楽の時間に自主研の班で自由発表をすることになり…(芸文社文庫)

木崎 咲季(きさき さき)/天上の音楽

秋月上総(あきづき かずさ)、高校2年生、男子。3年前に母を亡くしてからは、叔父と2人暮らし・・・だったはずなのに、13年間音信不通だった父、そして1歳違いの姉と一緒に、森川家で暮らすことになる。母の葬式にも来なかったのに、今さらなぜ?有名なピアノの指導者であるらしい父は、留守がちで何を考えているのかわからない。しかし、姉の天音(あまね)は、才能あるピアニストの卵で、「あなたのこと弟なんて思っていない」と敵意をむき出しにする。居心地の悪い日々を送る上総だったが、しばらく箱入りお嬢様の天音を学校から送って帰ることに。甘いものに目がなくて、コンビニにも行くという天音の素顔を知って、少しずつ距離は縮まっていくのだが・・・(メディアワークス文庫)

喜多嶋 隆/A7 しおさい楽器店ストーリー

葉山の海が見渡せる楽器店。店主の牧野哲也は、十代でデビューし注目を浴びたギタリストだが、現在は活動休止中。目が不自由な従妹の涼夏と2人暮らし。ある日、カスタマイズされたギターを売りたいと、木村俊之という中年男が店にやってくる。哲也はギターを預かるが、その2日後に店に来たウインドサーファーの若い女は、どうも俊之の娘らしい。偶然とは思えない。哲也は、海で俊之の娘・彩子を助けたことから親しくなり、事情を知る。俊之は家族に内緒で部屋を借りていた。妻と彩子は浮気でもしているのではと疑ったが、実はギター工房として使っていたのだ。大手の家電メーカーに勤める俊之は、昇進を機にギターいじりはやめようと考えていた。一方、彩子もウインドサーファーのプロとしてやっていくか、マリンウェアの会社に就職するか迷っていた。2人の選んだ道は…(光文社文庫)

喜多嶋 隆/B♭ しおさい楽器店ストーリー

哲也と涼香は、夜遅くに駅ピアノを弾いていて高校生にからまれた久美という小学生を助ける。久美は母を亡くし、腕のいい家具職人だった祖父・匠と2人で暮らしている。
一方、ガールズバンドのさよならライブで歌った涼香の歌声が噂になり、歌手デビューの話が持ち上がる。プロデューサーの麻田は、2、3年かけて準備をする間に、涼香の繊細な歌声に合うギターを見つけるように哲也に依頼する。哲也は亡き父がアイドルタレント・山崎ゆいのアルバムで使ったマホガニー製のギターなら…と考えるが、そのギターは父の遺品の中にはなかった。手がかりを探す哲也だったが、ある日、同級生の男子に嫌がらせを受けた久美が棒切れで殴りかかろうとするのを見かけて止める。よく見ると、久美が持っていた棒切れは、探していたマホガニー製ギターの折れたネックだった。自宅の物置にあったというのだ。父が弾いたギターは匠が若い頃に作ったものだったが、アイドルタレントの録音に使ったことで逆上し、壊してしまったのだ。現実のミュージシャンの生活や山崎唯(かつての「山崎ゆい」)の歌手としての成長を目にした匠は、マホガニー製ギターの復元に同意する。しかし、ワシントン条約のためマホガニーは入手できなくなっていた。マホガニーを探すうちに見つけたのは、陸置きされていた古い木製ヨット…(光文社文庫)

喜多嶋 隆/C しおさい楽器店ストーリー

しおさい楽器店に地元の漁師の娘・ナツキがカスタネットを買いに来る。事故で利き手の左指先に後遺症が残る彼女は、自己流のリハビリのためにカスタネットを使おうと考えたらしい。鯛の手釣りが得意だったナツキは、鯛釣りができず、たこ焼きを焼いて暮らしている。事故で父親も亡くし、生活にも困っている様子だ。しかし、単純な動きのカスタネットでは、リハビリの効果はあまり期待できない。天然物の鯛が食べられなくなったことに腹を立てた匠は、ハワイの知人からウクレレを使ったリハビリがあるという話を聞く。
哲也のかつてのバンド仲間で整形外科医の息子・シナボン(品田雅行)は、最先端の機器を使い、高額な治療費を取る父親の経営方針に疑問を抱いていた。そこで、ウクレレを使うナツキのリハビリに協力することにする。ナツキと過ごすうちに、ナツキ本人に惹かれていくシナボン。しかし、シナボンが付き合っている美由紀は、大きな内科医院の娘。美由紀の父には品田外科と統合して総合病院を作るという野望があり、ナツキは邪魔な存在。シナボンがドイツ留学に発つ日が近づく中、ナツキも鯛が釣れるまでに回復し、リハビリも成功と思われたが…(光文社文庫)

熊谷 達也/調律師

成瀬玲司は、ピアノの調律師。かつては、新進ピアニストとして、専属調律師の妻・絵梨子とともに全国でリサイタルを開いていた。当時の成瀬は、音とともに色が見えるという共感覚を持っていたが、10年前の事故をきっかけにその能力は消える。そして、その代わりに事故で死んだ妻が持っていたピアノの音で香りを感じるという能力を持つことになる。さまざまな問題を抱えたピアノやその持ち主と関わりながら日々を過ごす成瀬だが、いまだに妻の死にとらわれ、忘れることができないでいる。そんなある日、コンサート用のピアノを調律するため仙台に向かうのだが・・・

コミックのコーナーにある「ピアノのムシ」から毒を抜いた感じですね。作者は宮城県出身で仙台市在住。地元の中学校教員の経験もあるそうです。そのため、東日本大震災をきっかけに、執筆中だったこの作品も構想が変わったらしいです。(文春文庫)

小池 昌代/弦と響

結成から30年を経て、鹿間四重奏団がラストコンサートを迎える。雪が降り積もるる中、最後のステージへ向けて、さまざまな人々の思いが交錯する。老いを感じるチェリストの妻。美貌のセカンドバイオリン奏者。かつては鹿間の愛人だったビオラ奏者。ホールの今後の経営を心配しつつ演奏会を支えるスタッフ。タウン誌の記者。たまたまチケットを買った主婦。そして、15分遅れでコンサートが始まる・・・(光文社文庫)

小竹 清彦/その答えは、楽譜の中に

カルテットで活動していたバンドのギタリストが逝き、残された3人・・・ピアニストの“教授”、ベーシストの“スモーキー”、ドラマーの“セーフ”は、遺品の中から見知らぬ楽譜を発見する。そこにはギタリスト以外の3人の曲を巧みに組み合わせながらも彼自身の曲はひとつも入っておらず、コーダには聞いたことのないフレーズが使われていた。3人は、ギタリストの想いをくみ取ろうと思い出を辿り、追悼ライブを計画する。4人は、かつて同じ高校のバスケット部に所属し活躍していたが、無理なプレイを重ねていたギタリストが体を壊し、その後は疎遠になっていた。しかし、それぞれが音楽と出会って再開し、カルテットを組むことになったのだった。(富士見L文庫)

ごとう しのぶ:作/山田 デイジー:絵/カナデ、奏でます!@〜ようこそ☆一中吹奏楽部へ〜

お父さんと2人暮らしの藤堂奏(とうどう かなで)。豊岡中に入ったら、吹奏楽部で全国大会をめざすのが夢。念願のフルートを買ってもらって、レッスンにも通っていたのに、中学入学直前にお父さんが転勤することになり、引越すことに。引っ越し先は祖父母の暮らす「ひぐらし町」。もちろん引っ越し先の第一中学校でも吹奏楽部に入るつもりだったけれど、新入生歓迎会での演奏は悲惨なもの。上手とか下手とかいう以前の問題だった。がっかりしてやる気をなくす奏。でも、出席番号が一つ違いですぐに親友になった藤堂由紀(とうどう ゆき)ちゃんや、サッカーが得意な蒼居明(あおいあきら)くんに応援されて、一緒に吹奏楽部に入部することに。そして、奏はクラリネットをやることになるが…(角川つばさ文庫)

ごとう しのぶ:作/山田 デイジー:絵/カナデ、奏でます!A〜幽霊部員さん、いらっしゃ〜い!〜

廃部ぎりぎりのひぐらし一中吹奏楽部に入った奏。親友の由紀ちゃんはクラリネット、明くんはトランペットをやることになった。顧問の多岐先生は、音楽の授業はおもしろいのだが、部活の指導は全くやる気なしで顔も見せない。でも、奏たちが楽しそうに練習する様子を見て、けがでテニス部の活動を休んでいた支倉柚子(はせくら ゆず)先輩がドラムをやりたい、と言い出す。倉庫に放置されていたドラムセットを皆で発掘に行くと、そこへ学年主任の青山先生が多岐先生を引っ張って来てくれたり、幽霊部員の先輩たちが様子を見に来たり…(角川つばさ文庫)

佐伯 泰英(さえき やすひで)/竈(へっつい)稲荷の猫

十四になる小夏は、日本橋に近い竃河岸(へっついがし)の裏店(うらだな)で、三味線職人の父・伊那造とふたり暮らしだ。伊那造は、玄治店(げんやだな)の三味線の材の管理をしながら、一人で棹(さお)造りをしている。竃稲荷にはオスの黒猫が住みついており、小夏は「クロ」と呼んでかわいがっている。そんな親子ふたりの暮らしに、玄治店に弟子入りして七年の善次郎が棹造りの技を学ぶために加わることになる。善次郎の才を見抜いた伊那造は、異国産の花梨で棹を造る仕事を任せようとするが…(光文社文庫)

坂口 理子/フロイデ! 〜歓喜の歌でサヨナラを〜

水沢裕一は、明響音楽大学の4年生。卒業生オケのコンマスとはいうものの、ジャンケンで負けただけで、やる気も技術もないダメ音大生。なんとか就職も決まり、後は大晦日に行われる演奏会で「第9」を演奏するのみ・・・と思いきや、あまりの演奏のひどさに単位があやうくなる。そこで特訓のため忍び込んだ取り壊し寸前の旧音楽堂で幽霊たちに取りつかれ、奇跡的な演奏を体験する。彼らは、第2次大戦末期に「繰り上げ卒業式」で学徒出陣することになり、しかも空襲警報のために第9を最後まで演奏できなかったのだ。裕一は、幽霊コンマスの佐伯に、自分たちに取りついて第9を演奏するように提案するが・・・(泰文堂)

塩田 武士/女神のタクト

矢吹明菜、崖っぷち&どん底の30歳。恋も職も失い、傷心旅行でやってきた神戸の浜辺で、妙な老人に出会う。その老人から依頼されたアルバイトは、京都にいるある男を大阪へ連れてくること。その男とは、指揮者として華々しい経歴を持ちながらも、ここ3年ほどは鳴かず飛ばずの状態の一宮拓斗であった。明菜は気弱なマエストロを見捨てることができず、瀕死状態のオルケストラ神戸の再建と拓斗の復帰に関わっていくことになる・・・女王様タイプのドS・明菜とおカマっぽいドM・拓斗の掛け合いが笑えます。でも、明菜にも苦い思い出があり、だんだん男っぽくなってきた拓斗との壁ドン・シーンもあったりして。(講談社文庫)

篠田 節子/カノン

39歳になった音楽教師・瑞穂・・・彼女にも、かつてプロのチェリストを目指した時期があった。その頃の恋人・康臣が自殺し、彼が死の瞬間まで弾いていた演奏のテープが瑞穂に残される。それはバッハのカノンで、しかも逆回しに録音されていた。その時から、瑞穂のまわりで奇怪な出来事が起こり始める。彼女に託された、康臣の死のメッセージとは?(文春文庫)

篠田 節子/ハルモニア

チェリストの東野は、精神障害者のための社会復帰施設「泉の里」で、音楽療法のアシスタントをしていた。ある日、施設の職員・深谷から、「あなたの手で、天才を育ててみない?」と持ちかけられる。由希という障害者は、脳の欠損部分を補うために他の部分が発達し、音に関して超感覚知覚を持っているらしいというのだ。由希の上達はめざましかったが、それは他の演奏家のコピーでしかなかった。由希に「自分の音」を見出させようとする東野の周りで、異常な事件が起き始める・・・由希の能力は、音楽だけではなかったのだ。(文春文庫)

瀬川 深(せがわ しん)/チューバはうたう ーmit Tuba

26歳、女性、独身、製薬会社勤務の「私」は我樂多樂團という奇妙なバンドでチューバを吹いている。「なぜチューバを吹くのか?」ときかれるが、答えは見つからない。体がでかいという理由でチューバを与えられた中学時代、チューバの素晴らしさを教えてくれた先輩との幸福な日々。高校では挫折しかけたものの、深夜ラジオから聞こえてきたジプシー・バンドの音に衝撃を受け、現在に至る。そんなある日、そのジプシー・バンドがバルカン半島から来日することを知る。回り始める「私」の運命は・・・?

同時収録の「飛天の瞳」は、戦時中に祖父が暮らしていた南洋の地を訪ねた主人公が知らない日本の歌を聞き、そのルーツを発見する話。「百万の星の孤独」は、北東北の小さな町のさくらまつりに呼ばれた移動プラネタリウムの話なんだけど、我樂多樂團もちらっと登場。(小学館文庫)

瀬尾 まいこ/その扉をたたく音

ミュージシャンになる夢を捨てきれないまま親からの仕送りで怠惰に暮らす、29歳無職の宮路。ある日、ギターの弾き語りに訪れた老人ホームで、神がかったサックスの音色を耳にする。演奏していたのは年下の介護士・渡部。渡部の音をもう一度聞きたいがために、宮路は何かと理由を作って老人ホームに通うようになる。入居者の水木に「ぼんくら」と呼ばれつつ買い物を頼まれたり、本庄にウクレレを教えたりするうち、渡部とも一緒に演奏することになるが…(集英社文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。 〜音楽室の、ひみつのふたり〜

吉川さくら、12歳。中学受験に失敗し、憧れの泉中学校ではなく、定員割れ2次募集の黒羽中学校に通うことになる。当然、やる気ゼロの保健室通い。それでも、小学校からの仲良しでイケメン好きのさっこと加代ちゃんに引っ張られるように、吹奏楽部でフルートを吹くことになる。そこで出会ったのは、カッコイイけどクールでちょっと意地悪なトランペットの伊吹先輩。伊吹先輩ねらいのコも多いが、吹部には「部活内恋愛禁止」という鉄の掟が!一方、さくらはフルート・パートになれなかった同級生の内藤さんを中心に、裏掲示板で悪口を言われるようになる。昼休みに教室に居づらく、逃げ込むようにやってきた音楽室で見たのは、一人で練習する伊吹先輩。なりゆきで、さくらも昼休みに練習するようになるのだが、ぶっきらぼうに見えて、なにかと力になってくれる伊吹先輩の優しさにしだいに気づき・・・

コンクールの自由曲が「海の男達の歌」なのはいいとして、課題曲の冒頭にフルートのフラッターがある・・・って、ありえん!なんなのよ。私だって、今年は絶対フラッターができるようになるんだもん!と、意味もなくむきになるのであった。(角川つばさ文庫)


高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。A 〜近くて遠い、ふたりの距離〜

盲腸炎で入院した高橋先輩の代わりに地区大会に出場し、あこがれの伊吹先輩と同じステージに立つことができたさくら。しかし、高橋先輩が退院し、県大会では選抜メンバーから外される。ところが、関東大会に向けて再オーディションの機会が・・・一旦はオーディションを辞退したさくらだったが、伊吹先輩にシメられ(?)、自分の気持ちに正直になってオーディションを受けることにする。

一方、自由曲で伊吹先輩のソロと一緒に重要なパートを演奏するピアノの森田先輩が急に転校することになる。代わりのピアニストとして絶対入部してもらいたいのは、さくらと同じクラスの美少女・柴田さん。ところが、入部を渋る柴田さんの出した条件は「伊吹先輩とゆっくり話がしたい」・・・そこで、2人きりにするのが心配な崎山くんは、さくらも交えダブルデートをすることに!(角川つばさ文庫)


高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。B 〜伝えたい想い〜

さくらたち黒羽中吹奏楽部は、関東大会で金賞をとり、全国大会をめざすことになった。しかし、全国大会に対する気持ちの違いで、部員たちの間に違和感が生まれる。さらに、体育祭で例年行っているマーチングを今年はやるかどうかで、部長の高田先輩と伊吹先輩の間に意見の食い違いが・・・こんなことで、皆の気持ちはひとつになれるの?

一方、さくらが好きなのは崎山くんだと勘違いしている親友の加代ちゃんとさっこは、見当違いの励ましと応援をしてくれるのだが、本当のことを言えないさくらは苦しくてしかたがない。でも、けがでやめてしまったサッカーをあきらめ切れない伊吹先輩の気持ちに気づき・・・(角川つばさ文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。C 〜あこがれの場所へ〜

あふれる気持ちが止められなくなったさくらは、「伊吹先輩が好きです…!」と、つい告白してしまう。伊吹先輩は、「わかってるよ」とデコピン。(先輩の吹くメロディーが好き)という意味にとられたようなのだが、本当はさくらの気持ちを分かっていて遠回しにふられたのでは?と、あれこれ思い悩む。その上、告白現場を見られたらしく、さくらと伊吹先輩のことが噂になって、部活内恋愛禁止の吹奏楽部内は雰囲気が悪くなり、まとまってきていた演奏もバラバラ。さくらは、親友の加代ちゃんやさっこ、恋バナ仲間の崎山君からも避けられるようになる。

そんなさくらの気持ちを整理してくれたのは、ピアノの月乃さん。加代ちゃん、さっことは気持ちを伝え合い誤解は解けたものの、崎山君とはぎくしゃくしたまま。そして迎えた全国大会…その結果は!?(角川つばさ文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。D 〜ふたりだけのキセキ〜

学校祭の最後、屋上で伊吹先輩と2人きりで花火を見るチャンスを得たさくらは、さくらと崎山君が付き合っているという伊吹先輩の誤解を解こうと、「伊吹先輩のことが好きです」と言ってしまう。ところが、フラれることを恐れるあまり、「先輩とおつきあいしたいとか、彼女になりたいとか、そういうんじゃないんです!!」と心にもないことを言って、その場を逃げ出してしまう。後悔したさくらは、自分の気持ちにうそをつかないことを決め、先輩の誕生日にプレゼントを渡して、本当の気持ちをちゃんと伝えようと決意する。
プレゼントの楽器クロスを渡し、「使ってほしい」という気持ちだけはなんとか伝えたさくらだが、加代ちゃんのクラスに伊吹先輩のフィアンセだという美少女・早乙女カレンが転入してきて大ショック!ピアノの国際コンクールで入賞したこともあるというカレンは、吹奏楽部に入部し、月乃さんに果たし状を突きつける。ピアニストは2人もいらない、1年生の部活内発表会で負けた方は退部するという条件だ。こんな大事な勝負に、月乃さんはどうしてもさくらと組みたいと言う。カレンは優勝候補の崎山君と組むことになり、勝負はやる前から決まっているようだが・・・(角川つばさ文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。E 〜ほんとの気持ちと、言えない言葉〜

クリスマスイブ、駅まで送ってくれた伊吹先輩がさくらに言った言葉は、学園祭のときの告白を「ぜんぶ、聞かなかったことにする」「お前を、傷つけたくない」だった。自分は失恋したのか、このまま先輩を好きでいていいのか悩むさくら。
そして、新年。さくらは崎山くんに誘われ、みんなで初詣に出かける。ところが待ち合わせ場所に現れたのは、伊吹先輩とカレン。やっぱり伊吹先輩が好きという自分の気持ちを思い知ったものの、先輩が卒業後はアメリカに留学すること、崎山くんが日本舞踊の家元を継ぐ稽古のため退部することを知り、ショックを受ける。
それでも、今自分にできることは2人の決意を応援すること、最後の思い出になる定期演奏会でいい演奏をすることだと考え、冬合宿に参加するさくら。崎山くんは退部のことを悩むせいかソロを失敗してばかりで心配するが、伊吹先輩に思いを伝えることで乗り越え、稽古もサックスも両立させようという目標をもつ。
そして合宿最後の日、雪遊び中にやなぎ中の女子たちにからまれて捻挫し、さっこたちともはぐれたさくらを助けに来たのは・・・(角川つばさ文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。F 〜つながる想いと、ひみつの約束〜

バレンタインが近づき、先輩への想いをかたちにして届けようとするさくら。さっこ、加代ちゃんと一緒にチョコ作り。伊吹先輩の好きそうなビターな生チョコを作る。ところが、バレンタイン当日、学校中を巻き込んだ大騒ぎに、校長先生からバレンタイン禁止、チョコ没収の放送が。校内大絶叫!もちろん、さくらも大ショックだが、「ルールを守って、いい恋をしたい」という内藤さんの言葉に、皆チョコを募集箱に入れる。授業後、チョコの画像だけでも、と先輩に見せると、先輩からさくらに特別なプレゼントが…(角川つばさ文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。G 〜ふたつのさよなら、ひとつの始まり〜

「引退したら、お前に伝えたいことがあるんだ」という伊吹先輩の言葉にトキメキつつ、先輩や3年生とと一緒に演奏できる最後の定期演奏会で最高の演奏ができるように、残り少ない時間を大切にしようと決意するさくら。一方、崎山くんも部活を続けることを両親に認めてもらおうと、不安を抱きながらも必死で練習している。定期演奏会は大成功!先輩からの呼び出しで打ち上げを抜け出し、「好きだ」と言われたさくらは幸せいっぱい。でも、「ソロコン全国大会が終わるまでは告白しない」というファンクラブの人たちや、優勝を目指す先輩のことを考えると、当分内緒にしておいた方がよさそう。カレカノになったものの、先輩との距離のとり方にとまどうさくら。そして、先輩が卒業する日がやってくる…(角川つばさ文庫)

高杉 六花(たかすぎ りっか):作/穂坂 きなみ:絵/君のとなりで。H 〜この道を、ずっといっしょに〜

ずっと想い続けてきた伊吹先輩とカレカノになったさくら。先輩は中等部を卒業だけど、卒業式の翌日、さくらの誕生日は先輩と初デート!念願の買い物デートで、先輩から誕生日プレゼントに色違いの楽器クロスまでもらい、幸せいっぱいのさくら。でも、先輩と一緒のところをファンクラブの人に見られてしまい、学校中にうわさが広まってしまう。トゲのある視線やひそひそ話につらい思いをするさくらだが、柴田さんや内藤さん、カレンたちの励まし、伊吹先輩やファンクラブ会長のおかげで騒ぎは収まり、新年度になる頃には公認カップルに。全国大会で金賞をとった吹奏楽部には、たくさんの新入部員が入ったが、コンクールのメンバーを決めるオーディションでは2年生や3年生でも選ばれないという結果に。そのため部の雰囲気がぎくしゃくしたものになり、演奏もなんだかまとまらない…(角川つばさ文庫)

高原 英理(たかはら えいり)/不機嫌な姫とブルックナー団

図書館の非正規職員・代々木ゆたきは女性には少ないといわれるブルックナー好き。仕事で買い損ねた交響曲5番のコンサートのチケットを転売店で入手し、ひとりで聞きにきた。すると、演奏終了後、隣の席の男から声をかけられる。「ブルックナー団」の武田一真(たけだ いっしん、タケ)と名乗る男は、他のメンバー玉川雪之進(ユキ)と一本橋完治(ポン)を紹介する。仲間じゃないと言いつつ彼らとマクドナルドでしゃべり、ブルックナー団公式サイトとをのぞいたりした帰り際、タケから自分が書いている「ブルックナー伝(未完)」も見てほしいと言われる。それが意外におもしろく、感想を送ったり、また別のコンサートで彼らに会ったりするうち、ゆたきは翻訳家を目指そうとしたかつての気持ちを思い出し、短編をひとつ翻訳してタケに送る…(講談社文庫)

武田 綾乃/響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ

積読になっていたのだが、アニメ化されるというので、あわてて読んでみた。美少女アニメといううたい文句で、確かに美少女キャラがいっぱい出てくる。でも、主役格の中で美少女なのは、原作ではトランペットの麗奈だけだと思うんだけどね。

さて、ストーリーですが・・・なにかと人に流されがちな久美子は、北宇治高校でもついつい吹奏楽部に入部して、ついついユーフォニアムを吹くことになる。北宇治高校の吹奏楽部は、かつては全国大会に出場したこともある強豪校であったが、顧問が変わってからは、関西大会にも進めていない。しかし、新顧問・滝の厳しい指導で、部員たちはめきめき力をつけていく・・・

高校の弱小吹奏楽部が新顧問の力で再生するというありがちな話なんだけど、主人公がユーフォで低音パートが中心に描かれるというところ、部員それぞれの吹部に対するスタンスの違いがけっこう出てくるところがちょっと新しいかも。フルートさんは全然出てこないので、笛好きにはやや物足らない。私の立ち位置は、変人あすか先輩にかなり近い気がする(笑)

で、どうでもいいことだが、コントラバスの天然少女がキラキラネームなのだ。「緑輝」・・・これで、「サファイア」と読む。本人は、この名前を恥ずかしがって「緑」と呼んでほしいと言っているのだが。サファイアなら「緑」ではなくて「青」とか「碧」ではないのか?と思ったが、実際に「緑輝」とい名前のコもいるらしい。う〜ん、オバサンは理解不能。。。。。
(宝島社)

武田 綾乃/響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部、波乱の第2楽章

新年度を迎えた北宇治高校吹奏楽部。2年生になった久美子は、1年生の指導係に任命される。低音パートに入ってきたのは、ユーフォニアム希望の奏を含む4人。希望者がいたことにほっとしたものの、この奏がなかなかの曲者で、3年の副部長・夏紀に対して嫌味たっぷりの態度をとる。コンクールのオーディションをきっかけに2人の関係は改善するが、自由曲「リズと青い鳥」でソロを吹くオーボエのみぞれとフルートの希美のかけあいがしっくりこない。それは、お互いに対する2人の思いの食い違いが影響しているとも思われた。青い鳥の気持ちに自分を重ね、感動的なソロを吹いたみぞれに希美は・・・。そして、北宇治高校は全国大会金賞という夢をかなえることができるのか!?

水と油のように対照的な性格だった部長の優子と副部長の夏紀は、次の部長に久美子を指名する。引き受けざるをえない久美子は、ある決心をする。(宝島社)

武田 綾乃/響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部のホントの話

北宇治高校吹奏楽部シリーズの短編集。あすかや香織たちの卒業後や夏休みの久美子たち、奏と梨々花の休日・・・メインは最後のアンコンかな。卓也と梨子のカップルは、ホントに吹部の良心って感じがする。卓也が東京に発つ日を描いた「木綿のハンカチ」は胸キュン☆(これって絶対、太田裕美だよね。)私はあまりアンコンに縁がなかったし、ここ数年ほとんどやってないので、あまりアンサンブル曲も知らなかった。「アンサンブルコンテスト」で、いろいろ勉強しちゃったよ。「マカリッシュ・ソフィア」きれいな曲だね〜!「彩吹〜ibuki〜」もカッコイイ!(宝島社文庫)

武田 綾乃/響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章

部長=黄前久美子、副部長=塚本秀一、ドラムメジャー=高坂麗奈の新体制で新年度を迎えた宇治北高校吹奏楽部。多数の新入部員を迎え、全国大会金賞を目指して練習に励む。そんな中、強豪・清良女子高からの転入生、3年生の黒江真由がユーフォニアムに加わり、久美子の心はざわつく。大会ごとにメンバーのオーディションをすることになり、部内の雰囲気もぴりぴりしたものになりがちであったが、麗奈の厳しい指導がそれに拍車をかける。真由は、久美子がソロを吹いた方がよいと言い、何度もオーディション辞退を口にする。関西大会のオーディションでは真由がソリストに選ばれ、久美子は滝の方針に疑問をもち、麗奈と衝突してしまう。自分自身の進路も決まらない中、悩んだ久美子は、全国大会を前にあすかを訪ねる・・・(宝島社文庫)

武田 綾乃/飛び立つ君の背を見上げる

北宇治高校吹奏楽部3年生の中川夏紀は、「吹奏楽部引退式」をもって部活を引退した。音楽大学を受験することになっているみぞれは準備に忙しいが、同じ大学に進学することが決まっている夏紀、優子、希美はさしあたってやることがなく、中途半端で退屈な日々だ。そんなところに、吹奏楽部を辞めて軽音楽部へ行った菫から、夏紀と優子の2人で自分たちのバンドのイベントのオープニングアクトをやらないかともちかけられる。ギターの練習に励みながら、夏紀は吹奏楽部での日々を振り返る…(宝島社文庫)

武田 綾乃/響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部のみんなの話

卒業旅行の行き先を相談していた久美子たちのもとに、沖縄で演奏しないかという話が舞い込む。「アクアラーク」というテーマパークのオープニングイベントで、メインのパレードは1・2年生がやるが、ミニショーを3年生でやってくれないかという話だ。3年生は格安でホテルに宿泊でき、ゆっくり観光もできそうというので、引き受けることになる。北宇治高校吹奏楽部としての最後の演奏に向け、慌ただしく準備や練習が始まるが、受験のブランクで下手になっていたり、新幹部たちの運営が気になったり…「未来への約束」他、奏と真由の水面下のバトルや男子部員たちの恋バナ、大学生になった優子や夏希たちの夏休みなど。(宝島社)

武田 綾乃/立華高校マーチングバンドへようこそ(前・後編)

「響け!ユーフォニアム」にもちらっと出てきた、久美子の北中時代の同級生・梓が主人公。

小学校からトロンボーンを吹いていた梓は、憧れの立華高校でマーチングバンドをやることを目標に進学する。立華高校はマーチングコンテスト全国大会常連の強豪校。厳しい練習や先輩たちの叱責の中、努力家で完璧主義の梓は1年生ながらコンクールAメンバーに選ばれる。一方、初心者でトロンボーンを始めたあみかは、面倒見のよい梓を慕い、梓も頼られることを快く感じている。しかし、そんな2人の関係を、通学列車の中で出会った芹菜は「梓って、ちっともかわってないんやな」と非難する。梓と芹菜は、中学時代、親しくしていた時期があったのだ。トロンボーンの同級生・志保と太一も、あみかをいつまでも初心者扱いしないよう梓に忠告するのだが・・・(宝島社)

津原 泰水/ブラバン

主人公は、赤字続きの酒場を経営する40代の男。高校時代は、吹奏楽部と軽音楽同好会で弦バスを担当していた。卒業以後、楽器からは離れていたのだが、遅い結婚をする先輩の披露宴で演奏するため、当時のメンバーでバンドを再結成することに・・・私が好きなのは、ユーフォの笠井さん。こんな人になりたいな。性格的に無理があるけど。彼女と娘のバンド結成の話も好き。こんな母になりたい。彼女にバラの花束を持ってくる唐木クンもいいな。「ビゼーを優しいと感じる、あなたが優しいのだ」っていうのが好き。なんのことか知りたい人、80年代にブラバンやってた人は、ぜひ読んでみて。(バジリコ)

中沢 けい/楽隊のうさぎ

いじめられっ子で引っ込み思案の克彦は、なぜか中学校で吹奏楽部に入部することになる。全国大会を目指し練習に追われる毎日、父の単身赴任と浮気(?)、陶器の店を始める母・・・そんな中で、克彦は音楽に夢中になり、胸の中に住みついた奇妙なうさぎとともに成長していく。現役ブラバン少年少女、かつてのブラバン少年少女は、必読!これは、あなたたちのことです。(新潮文庫)

中沢 けい/うさぎとトランペット

人間は音楽の入れ物だった。 音楽はどこか遠いところから静かにやって来る。 ・・・前作の「楽隊のうさぎ」は中学校の吹奏楽部の話でしたが、こっちは立ち上がったばかりの一般バンドの話。花の木中の卒業生たちも顔を出します。 主人公は宇佐子という内気な小5の女の子。彼女は特別いい耳を持っているのです。 転校生のミキちゃんを仲間外れにするクラスの雰囲気に耐えられず、微熱を出したりする宇佐子ですが、ある雪の日、クラリネットのレッスンへ行く途中のミキちゃんと出会ったことをきっかけに、彼女と親しくなっていきます。 ミキちゃんやウィンドオーケストラ・ピンクバナナのメンバーと過ごすことで、ちょっと大人になっていく宇佐子・・・微妙な年頃の少女の成長物語なんですけどね、一応。 「ベスト・フレンド 」「アルメニアン・ダンス 」・・・選曲も、なかなか泣かせるわ。(新潮文庫)

中田 永一/くちびるに歌を

長崎県五島列島のある中学校に、産休に入る音楽教師の代理として、その友人がやってくる。「自称ニート」の美人ピアニスト・柏木だ。柏木は合唱部の顧問も引き受けることになるのだが、彼女を目当てに男子生徒の入部が殺到する。自閉症の兄の世話をしながら通学するサトルは、柏木先生目当てではないのだが、好意を抱いていたコトミの存在となりゆきから合唱部に入部することになる。学校では誰とも口をきかず、友人もいなかったサトルの生活が、合唱部の活動を通して変わっていく。しかし、今まで女子のみだった合唱部では、男子と女子の対立が激化。コンクールを目指しての練習は・・・!?(小学館文庫)

梨屋 アリエ/ピアニッシシモ

どこといって取り柄のない中学生・松葉。 慰めとなっていた隣の家の時子さんのピアノが、ある日運び出される。 これが、スタンウェイなのね。行き先は、紗英という同い年の少女の家だった。 この娘がピアノをやってて、スタンウェイのおひろめパーティーとかやるわけ。成り行きで招待された松葉は、華やかで才能あふれる紗英に憧れ、ふりまわされるが・・・ ちょっと辛口の成長物語、かな。(講談社文庫)

アン・パチェット/山本 やよい:訳/ベル・カント

南米の小国。副大統領邸では、日本企業「ナンセイ」の誘致を図るため、社長ホソカワ氏の誕生パーティーが開かれていた。特別ゲストは世界的オペラ歌手ロクサーヌ・コス。ホソカワ氏は、ロクサーヌの大ファンなのだ。ところが、ロクサーヌが歌い終えた瞬間、武装したゲリラがなだれ込み、副大統領邸は反政府組織に占拠されてしまう。ゲリラの目的は、マスダ大統領の拉致。しかし、大統領はお気に入りのテレビドラマを見るためにパーティーを欠席していた。目的を果たせず膠着状態が続くうち、ゲリラと人質の間には奇妙な絆が生まれる。ロクサーヌは、ナンセイの副社長カトウの伴奏で歌の練習を始める。彼女の歌声は邸内の人々を魅了し、皆ロクサーヌの歌を心待ちにする。ゲリラの少年セサルはロクサーヌの歌う歌を覚え、真似してみせる。セサルの才能に驚いたロクサーヌは、彼にレッスンをつける。ホソカワ氏付きの通訳ゲンは、ゲリラに混じっていた美少女カルメンに文字や外国語を教え、やがて愛し合うようになる。皆その状況に幸せすら感じるようになっていたのだが…(ハヤカワ文庫)

平岩 弓枝/平安妖異伝

あらゆる楽器に通じ、不思議な力を持つ天才少年学士・秦真比呂(はたのまひろ)が、若き日の藤原道長とともに平安京を騒がせる物の怪たちに挑む!「花と楽人」「源頼光の娘」「樹下美人」「孔雀に乗った女」「狛笛を吹く女」「催馬楽を歌う男」「狛麿の鼓」「蛙人(あじん)」「象太鼓」「春の館」・・・10の短編で繰り広げられる、怪しの世界。(新潮文庫)

平野 啓一郎/マチネの終わりに

映画化され、コミカライズもされたので、慌てて読む。大人の恋愛小説、ですね。

2006年、「天才」と称されるクラシック・ギタリスト、蒔野聡史(まきの さとし)は38歳になっていた。デビュー20周年記念のコンサート・ツァーの最終日、国際ジャーナリストの小峰洋子と出会い、強く惹かれる。そして、パリで再会した洋子に自分の気持ちを伝え、婚約者・リチャードと別れてほしいと言う。既に蒔野に気持ちが傾いていた洋子は、リチャードに別れ話を切り出す。しかし、リチャードは洋子の決意を「浮気」と見なし、婚約破棄になかなか応じない。はっきりしないまま今度は洋子が日本を訪れるが、折悪しく蒔野の恩師・祖父江が倒れ、蒔野は洋子を迎えに行けなくなる。様々なトラブルや行き違いに、密かに蒔野を愛しているマネージャー・三谷の思惑も絡み、蒔野と洋子はお互いに相手が心変わりしたと思いこむ。傷心のまま帰国した洋子は、リチャードと結婚するが・・・(文春文庫)

松久 淳+田中 渉/天国の本屋 恋火

リストラされたピアニスト・健太は、不思議なアロハシャツの男と出会い、天国の本屋でアルバイトをすることになる。そこで出会ったのは、子どもだった健太に素晴らしい演奏を聴かせてくれた女性。一方、商店街の復興に奔走する飴屋の娘・香夏子は、若くして亡くなった叔母の恋人・花火師の瀧本と出会う。過去と現在、天国と現世が交差したとき、奇跡が生まれる。(新潮文庫)

三崎 亜記/鼓笛隊の襲来

赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。迷走を続け、勢力を拡大しながら上陸した鼓笛隊は、一千人規模のオーケストラによる防御網を突破。直撃を恐れる住民は、次々に避難を始める。そんな中、「わたし」の家族は、足を痛めているため避難が難しい義母を老人ホームから引き取り、自宅で一夜を過ごすことになる。やがて響き始めたのは、心の奥底に封じ込めた恐怖を呼び覚まさせるような不思議な行進曲・・・一度巻き込まれれば抜け出すこともできず、気絶するまで歩かされることになる悪夢の行進曲だった。

って書くと、すごい怖い話みたいなんですけど、実はそうでもないんです。このおばあちゃんがいい味出してましてね。読後感も悪くない。

不思議な味わいの短編集で、「鼓笛隊の襲来」の他には、「彼女の痕跡展」「象さんすべり台のある街」「遠距離・恋愛」「同じ夜空を見上げて」など。(集英社文庫)

水生 欅(みずき けやき)/君と奏でるポコアポコ〜船橋市消防音楽隊と始まりの日

船橋市消防音楽隊が市民隊員を募集することになる。中学校の吹奏楽部でフルートを吹いていた栗原優芽(くりはら ゆめ)は、新人消防士の兄・洋一に頼み込まれ、幼なじみでオーボエを吹いている笹木智子を誘って説明会に参加する。そこに現れたのは、帝国芸術大学に通う憧れのフルート奏者・近藤奈々子と音楽隊の指導をすることになったという中野翔(なかの しょう)だった。参加を決めた優芽たちだったが、隊員の中には音楽隊の活動に積極的でない者や市民隊員に好意的でない者もおり、ぎくしゃくした雰囲気を感じる。クラリネットの初心者・早瀬泉もなにかと優芽たちにきつく当たり、気に入らない。それでも音楽隊の演奏は日に日によくなり、市民まつりのパレードも大成功に終わった頃、音楽隊の予算がカットされ、存続できなくなるという話が耳に入る…(新潮文庫)

美奈川 護/ドラフィル!〜竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄

音大のヴァイオリン科は出たものの、オーケストラのオーディションにはことごとく落ち、音楽で食べるあてのない響介。楽器商の叔父の伝手でやってきたのは、竜が破壊の限りを尽くしたと思えるほど何もない街・竜ヶ坂。竜ヶ坂商店街オーケストラ(通称・ドラフィル)がコンマスを探しているというのだ。「ニュールンベルクのマイスタージンガー」が1日中流れるさびれた商店街と個性的な職匠歌人(マイスタージンガー)たち。そして車椅子の女性指揮者・七緒。七緒は、ドラフィルが抱える無理難題の解決を、強引に響介へ押し付けてくるのだが・・・

ちなみにドラフィルの首席フルート奏者は、「花畑さん」こと畑山彩花さん。ひと昔前の少女漫画に登場しそうな、つばの広い帽子におさげ髪、白いワンピースといういでたちで、おまけにすぐに卒倒するという得意技(?)の持ち主。しかし、その実体は、亡き夫の後を継いで老舗和菓子屋「華京堂」4代目を名乗る頑張り屋さん。息子の和樹は小学生ながらしっかり者で、リコーダーの名手。第2楽章では、この和樹君の謎の行動を響介が探るはめになるのだが・・・竜ヶ坂女子高等学校吹奏楽部でフルートを吹くアヤちゃんも、いい味出してます。ネットの掲示板で知り合っただけの和樹の呼び出しに無防備に応じ、危険を指摘されると、「竜ヶ坂にそんな変な人はいませんよ!」と言い切るあたり・・・笛吹きって天然さんが多いのかなあ?(メディアワークス文庫)

宮下 奈都/羊と鋼の森

高校2年の時、外村はピアノの調律に訪れた板鳥をたまたま体育館まで案内することになる。するべきことが思いつかない、したいこともないという外村だったが、板鳥の仕事を間近で見聞きして調律に魅せられ、調律師を目指すことになる。卒業後、調律師養成の専門学校へ通い、念願の調律師になった外村は、板鳥のいる江藤楽器に就職。新米調律師として働き始める。忙しい板鳥にはめったに会えないが、先輩調律師の柳や秋野の仕事や考え方にふれ、外村もひたむきに音と向き合っていく。そんなある日、柳とともに訪れた家で、和音(かずね)と由仁(ゆに)という双子の姉妹に出会う。性格も音も対照的な2人。外村は一見おとなしい姉・和音の音に強く惹かれる。2人に会うのを楽しみにしつつ、調律の練習に励む外村。そんなある日、姉妹のピアノ調律がキャンセルされ、どちらかがピアノを弾けなくなったという話が耳に入る・・・コミカライズもされました。コミックのページ参照。(文春文庫)

宮下 奈都/よろこびの歌

有名ヴァイオリニストを母に持つ御木本玲は、音大附属高校の受験に失敗し、新設女子高の普通科に入学する。声楽からもクラスメイトからも遠ざかり、ぼんやりと日々を過ごしていた玲だが、校内合唱コンクールの指揮を引き受けたことをきっかけに心に変化が生まれる。そして、クラスメイトたちにも・・・音楽好きのうどん屋の娘・千夏、肩をこわしてソフトボールを断念した早希、霊が見えてしまう史香、もやもやを抱えながら作品の構図に悩む美術部の佳子、美しい姉へのコンプレックスを抱える学級委員のひかり・・・見えない未来に戸惑う彼女たちが、卒業生を送る会で再び歌うことを目指し、合唱の練習を通して成長していく。(実業之日本社文庫)

宮下 奈都/終わらない歌

「よろこびの歌」の3年後。音大に進学した玲は、自分の歌に価値が見いだせない。ミュージカル女優をめざす千夏は、オーディションに落ちてばかり。で、連作短編の形で、途中にかつての同級生たちのいろいろなエピソードが入るんですね。私が好きなのは、まず「スライダーズ・ミックス」・・・この曲は、もともと吹奏楽をバックにトロンボーン4本がソロを吹く曲なのね。ソフトボール選手として期待されながらも肩をこわし、スポーツトレーナーを目指す早希。たまたま誘われた学生オケの曲目に「スライダーズ・ミックス」を見つけ、野球の球種に関係あるの?と興味本位で出かける。そこでゲスト出演していた久保塚の音に強く惹かれ・・・失恋しちゃった佳子の話、「バウムクーヘン、ふたたび」も、いいんだよ。ダラダラとでも歩いていれば、きっとどこかにたどり着ける。「コスモス」も泣けました。(実業之日本社)

村山 早紀/花咲家の怪 より「別れの曲」

風早駅前商店街の奥にある花屋・千草苑(せんそうえん)。代々そこの主である花崎家の人々は、植物と話ができると言われていた。平成の世、花咲家で暮らすのは、美しい長女・茉莉亜(まりあ)、冷静な次女・りら子、末っ子の桂、父親の草太朗、草太朗の父・木太郎(もくたろう)。中学生の桂は能力に目覚めるのが遅く、徐々に身についてきているところ。夏のアルバイトで店の手伝いをし、観葉植物を届けに来たホテルのレストランでピアノを弾いていると、白いシェパードと金髪の少女が現れる。桂は、その少女・ユリアに1曲だけ弾けるピアノ曲、「別れの曲」を教えてもらったことを思い出すのだが…

花崎家のシリーズは、すでに何巻か出版されているようですが、短編集になっているので、いきなりこの巻を読んでも話が理解できました。この巻は、ちょっと怖い話を集めたもののようですが、読んでいると波津彬子の絵で画像が浮かんできて…同じイメージの作品なんですよね。愛しくて哀しくて怖い。音楽と関係あるのは、桂が主人公の「別れの曲」だけですが、死が近い老パティシエの話「火車」なんて、泣けてきました。(徳間文庫)

森 絵都(もり えと)/アーモンド入りチョコレートのワルツ

海辺の別荘で過ごす少年たちの最後のひと夏を描いた「子供は眠る〜ロベルト・シューマン〈子供の情景〉より」、不眠症の少年と虚言壁のある少女との秘密の時間を描いた「彼女のアリア〜J.S.バッハ〈ゴルドベルグ変奏曲〉より」、ピアノ教室に突然現れたサティおじさんを巡る物語「アーモンド入りチョコレートのワルツ〜エリック・サティ〈童話音楽の献立表〉より」・・・ピアノの調べに乗せて送る、3つの不思議な味わいの短編集です。(角川文庫)

山本 幸久/誰がために鐘を鳴らす

錫之助(すずのすけ)の通う県立諏那(すな)高校は、来年3月末には閉校になる。3年1組42人が全校生徒。しかも、共学とは名ばかりで男子のみ。担任のダイブツ(44歳、独身)につかまって、土屋、播須(はりす)、美馬(みま)と一緒に音楽室を片づけているとき、ハンドベルを見つける。昔、ハンドベル部というのがあったらしい。土屋は城倉女子学園(ジョジョ)のハンドベル部との合同練習目当てにハンドベル部を作ることを思いつく。ダイブツに相談すると、あっさりOKが出た上、高齢の音楽教師・唐沢先生(カラニャン)を指導者に、4人+ダイブツの5人での練習が始まる。もともと気の合うわけでもない4人でチームワークはバラバラ、楽譜が読めるのは美馬だけ。そして、錫之助は部長まで押しつけられる。前途多難かと思われたが、皆次第に演奏の楽しさに目覚め…(角川文庫)

夕貴 そら:作/和泉 みお:絵/花里小学校吹奏楽部 キミとボクの前奏曲(プレリュード)

怜奈は、花里小学校吹奏楽部でクラリネットを担当する5年生。9月、新学期に怜奈のクラスに転校生・省吾がやってくる。実は省吾には夏休み中に一度出会っているのだが、あまりよい印象をもっていなかった。省吾も怜奈のことを覚えていない様子。前の学校でも吹奏楽をやっていた省吾は、花里小でも吹部に入部。クラリネットがうまく、イケメン、しかも女子に優しい・・・と省吾はなにかと注目される存在。怜奈も省吾に対してライバル意識をもったり、なにかともやもやしたり・・・と、なんだか落ち着かない。それでも、一緒に楽器店に行ったり、ファーストフード店に入ったり、練習したりして、省吾と親しくなっていく。そして迎えた全日本大会の日、強豪校の次に同じ曲を演奏するという状況に意気消沈するメンバーたちに、省吾と怜奈は・・・

吹部もの、とうとう小学校版まで出たか!と思い、読んでみましたが・・・やっぱり赤面するほどかわいい。おばさんは、クラ男子にはキュン☆とするかもしれないが、強豪校の次に同じ曲を吹くからって、いちいち落ち込んだりしないのだ。忘れてしまうほど昔のことだけど、私にもこんな時代があったのかしら?と、ちょっとほのぼのしつつ読みました。続編もあり。(ポプラ社)

夕貴 そら:作/和泉 みお:絵/花里小学校吹奏楽部 キミとボクの幻想曲(ファンタジア)

花里小吹部シリーズ2作目。

3学期になり、花里小吹奏楽部では、6年生を送る会と卒業式に向けての練習が始まった。と同時に行われた新部長決めで、なんと怜奈は省吾、光真と同数の票を集め、部長候補に選ばれる。部長なんてとても無理!と悩む怜奈の気持ちにおかまいなく、女子を部長に、と部員を説得する同級生や、省吾派と怜奈派に分かれる下級生・・・吹部内もなんとなくざわざわする。一方、バレンタインデーやホワイトデーなど、ちょっとドキドキもののイベントも☆そして、保留になっていた部長決めの結果は・・・!?

私的には、職人肌のパーカッション男子・光真くん、好きですね。3作目では、もしかして三角関係っぽくなるのかしら?(ポプラ社)

夕貴 そら:作/和泉 みお:絵/花里小学校吹奏楽部 キミとボクの協奏曲(コンチェルト)

花里小吹部シリーズ3作目。

怜奈と省吾も6年生。クラス分けでは仲良しの真央や美羽とは別のクラスになってしまったものの、省吾とはまた同じクラスに。新体制の吹奏楽部も、いよいよ本格的にスタート。新入部員の指導などで忙しい中、トランペットの4年生・真琴を中心に部内がぎくしゃくする。初心者も多い4年生は地元のお祭りでダンスをすることになっていたのだが、経験者の真琴が「ダンスなんてバカらしい」と言い出し、その場の勢いで嫌なら部活を辞めればいいという流れに。練習に出てこなくなった真琴に怜奈は・・・

上手すぎて生意気な下級生・・・うんうん、部活あるあるだな。なんだか4作目もありそうな流れだけど。「協奏曲(コンチェルト)」まできちゃったら次のタイトルは、どうなる?と妙なところが気になるのであった。(飛鳥新社)

夕貴 そら:作/和泉 みお:絵/花里小学校吹奏楽部 キミとボクの輪舞曲(ロンド)

花里小吹部シリーズ4作目。

バンドフェスティバルに向け、夏休みも練習に励む怜奈たち。都大会では緊張したものの、とりあえず順調に金賞&代表の座を得る。しかし、表彰式の後、ロビーで前の学校の吹奏楽部女子たちに囲まれ親しげに話している省吾を見て、怜奈はショックを受ける。支部大会後、ほっとした部員たちは気がゆるみ、遅刻も多くなってきていたが、顧問の大橋先生の一喝で気合いが入り、また支部大会に向けてがんばるようになる。練習に明け暮れる夏休み。でも、町内のお祭りでは省吾と2人になる機会も☆そして迎えた支部大会当日、なんと省吾が本番に間に合わないという事態が!動揺する怜奈。支部大会の結果は・・・(飛鳥新社)

夕貴 そら:作/和泉 みお:絵/花里小学校吹奏楽部 キミとボクの交響曲(シンフォニー)

花里小吹部シリーズ5作目、最終巻。

全国大会を目指し、過酷な練習が続く日々。前年金賞を逃したこともあり、今年こそ!と皆気合いが入っている。しかし、なぜか省吾の様子がおかしい。何か悩んでいるようで、音にも力がこもっていないように思えるのだ。省吾が転校してしまうのかも、と心配する怜奈。思い切って省吾に話しかけるが、「鈴村には関係ないことだから」と言われ、ショックを受ける。省吾とぎくしゃくしたまま修学旅行に出かけるが、光真のはからいでナイトハイキングでは省吾とペアに。2人きりになった時、省吾は本心を打ち明ける。支部大会で自分がいなくても金賞が獲れ、自分はいなくてもいいんじゃないかと思った、と。怜奈は、その言葉を打ち消し、「省吾君の音が好き」「あのとき私は省吾君のために頑張ろうって思った」と励ます。わだかまりも解け、迎えた全国大会は・・・(飛鳥新社)

吉本 ばなな/いいかげん(「体は全部知っている」収録)

吉本ばななさんて、好きなんです。年が近いせいか、(ああ、これこれ!私が言いたかったことなのよ。)って表現がたくさんあるの。この「いいかげん」という短編は、ほんのちょっとだけだけど、泰造君というフルートのうまい小学生が出てきて、その子があんまりかわいい(?)ので、ここに入れました。主人公は飲食店で働く30歳ぐらいの女性なんだけど、その人の家に防音室があって、近所に住む泰造君が「フルート吹かせて。」って来るのよね。二人のからみがいいんだけど、あんまり書くとネタバレするので、あとは読んでみてね。(文春文庫)

 

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