推理小説のコーナー  ※とりあえず、作者アイウエオ順かな。(除新着図書)

 


赤川 次郎/黒鍵は恋してる

文庫本新刊のコーナーにあったので買ったんだけど(2023.6)、1994年4月に他の出版社から刊行されていました。マンションの上の部屋から聞こえてくるピアノの音をレコードだと思っていた、という会話があるんで、そりゃあCD以前の作品だよね。

夏休み最後の日の夜、高校1年生の米田あかねは課題を片づけるのにも飽きてベランダへ出ていた。上の階からは、夏休みに引越してきたばかりの母娘の娘の方が弾く美しいピアノの音が聞こえてくる。ふと向かいのマンションの部屋に目をやると、その部屋に住む女性らしいシルエットに、もうひとつの影が飛びかかったように見えた。しばらくして、マンションから出てきた髪の長い音がタクシーで走り去り…気になりつつも部屋に入ろうとしたあかねは、真上のベランダの手すりから見下ろす女の子と目が合う。ピアノを弾いていた根津真音(ねづ まさね)だった。
翌朝、向かいのマンションの前はパトカーと警官で騒がしい。あかねの真向いの部屋、8階で殺人事件があったらしい、と教えてくれたのは真音。真音は、あかねと同じ高校の、しかも同じクラスに編入したのだ。ピアノは天才だが、ちょっと、いやかなり人とずれている真音のニックネームは「黒鍵」。真音とあかね、そしてあかねの友人・希代子の3人は、行動をともにすることが多くなる。しかし、殺人を目撃したあかねは命を狙われることに…(徳間書店)

赤川 次郎/盗んで開いて〜夢はショパンを駆け巡る

今野淳一は凄腕の泥棒、妻・真由美は敏腕(?)刑事・・・という人気シリーズの一作。女子中学生・風見涼は、深夜、義父の薬をもらうために訪れた吉村の家で、麻薬ギャング・長浜が吉村を殺すのを目撃してしまう。口封じのために命を狙われる涼!真由美は、涼を守りきれるのか?一方で、真由美の友人・人気ピアニストの中西さよりは、「ショパンの夕べ」の企画を巡る奇妙な事件に巻き込まれていく。さよりの意外なもうひとつの顔とは?(徳間文庫)

赤川 次郎/白鳥の逃亡者

日向涼子は16歳の女子高生。天才美少女チェリストとして多忙な毎日を送っている。ところが、妻子ある指揮者・森川と付き合っていたのがマスコミにばれ、スキャンダルに巻き込まれる。偶然知ってしまった父と体育教師との不倫、森川への不信・・・なにもかもが信じられなくなってしまった涼子は、自分のコンサートを聴きに来てくれた君崎とともに逃避行の旅に出る。君崎は、自分の妻と愛人を殺して逃亡中であった・・・(角川文庫)

赤川 次郎/三毛猫ホームズの狂死曲(ラプソディー)

人気作家・赤川次郎氏も、なんと笛吹き仲間なんですよ。氏の人気シリーズのひとつ、「三毛猫ホームズ」ものの一作。バイオリン・コンクールの舞台裏で起こる殺人事件。優勝候補・桜井マリと心優しい刑事・片山義太郎の恋の行方は・・・・?他に「禁じられたソナタ」「冬の旅人」などもおすすめ。「冬の旅人」は、ディートリッヒ・F・Dなんてテノール歌手が探偵役です。(光文社 カッパ・ノベルス)

赤川 次郎/幽霊協奏曲

男やもめの宇野警部と恋人の女子大生・夕子が活躍する幽霊シリーズの第26弾。美しいピアニスト・川原マリとの恋に溺れ、翻弄された末に服毒自殺した佐原靖男。弟のヴァイオリニスト・照夫はマリを責めるが、彼女は「私はあなたの兄さんに、何もかも捨ててくれなんて頼んだことはない」と冷たく言い放った。
2年後、照夫がコンサート・マスターを務める楽団とマリが共演することになる。マリの頼みでゲネプロにやってきた宇野警部と夕子だが、そこに清掃員として働く靖男の妻・麻美が現れ、平気でマリと共演する照夫を非難する。さらに、指揮者の天王寺とマリが演奏テンポのことで衝突し・・・(文春文庫)

赤川 次郎/幽霊指揮者(コンダクター)

男やもめの宇野警部と恋人の女子大生・夕子が活躍する幽霊シリーズものの一作。若くして自殺した作曲家が最後に遺した「呪われた曲」。演奏しようとすると、必ず事故が起こるという。今回も若手指揮者・桐山のコンサート直前に、重要なソロを吹くオーボエ奏者が腕を折り、その妻が殺される・・・「呪い」の真相は!?(文春文庫)

ポール・アダム/青木 悦子:訳/ヴァイオリン職人の探求と推理

ジャンニは、イタリアのクレモナに住む腕のいいヴァイオリン職人。月に一度、気の合う仲間たちと弦楽四重奏を演奏するのを楽しみとしていた。ところが、ある日、練習後にメンバーの一人である親友のトマソが仕事場で殺される。彼は、「メシアの姉妹」と言われる幻のストラディヴァリを探していたらしい。ジャンニは、四重奏のメンバーでもある刑事のグァスタフェステとともに「メシアの姉妹」の行方を調べ始めるが、今度はヴァイオリン・コレクターのフェルラーニが謎の死を遂げる。「メシアの姉妹」はどこに?そして、トマソを殺した犯人は?(創元推理文庫)

ポール・アダム/青木 悦子:訳/ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密

ヴァイオリン職人・ジャンニの第2弾。あれから1年ほどたった頃、ジャンニのもとにパトカー2台を含む護送艦隊がやってくる。運び込まれたのは、パガニーニが愛用していたと伝えられる「大砲(イル・カノーネ)」。楽器の不調は、パガニーニ国際コンクールの優勝者、エフゲニー・イヴァノフのちょっとした不注意だった。首尾よく修理を終えたジャンニだったが、翌日、ホテルで美術品ディーラー、ヴィルヌーブの撲殺死体が発見されたのをきっかけに、事件に巻き込まれていくことになる。モーゼの彫刻のある金細工の箱、その中に納められていたはずの黄金のヴァイオリン、パガニーニ作曲の未発見の曲「セレナータ・アパッショナータ」、さらにはエフゲニーの失踪まで・・・

私的には、1作目よりこっちの方が好き。前作は、ちょっとマニアックすぎて。パガニーニをめぐる歴史ミステリもおもしろい。(創元推理文庫)

ポール・アダム/青木 悦子:訳/ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器

ヴァイオリン職人・ジャンニの第3弾。ジャンニが講師を務めるヴァイオリン製作学校で、かつての教え子リカルド・オルセンが講演を行う。リカルドは学生の頃からハンサムで女性関係が派手。現在は故郷のノルウェーでバイオリン職人として成功している。公演はノルウェーの民族楽器、ハルダンゲル・フィドルについてで、リカルドが持参した楽器は、渦巻きに女性の頭部の彫刻がついた美しいものだった。ところが、翌朝、リカルドが運河で死んでいるのが見つかる。後頭部には殴られたあとがあり、彼が持って出たと思われるハルダンゲル・フィドルが消えていた。それほどの価値もない楽器がなぜ奪われたのか?

捜査は進まず、ジャンニと友人の刑事・グァスタフェステは、リカルドの葬儀に出席し、手がかりを見つけるため、ノルウェーへ向かう。しかし、そこでも進展は見られないまま、新たな殺人事件が起きる。リカルドの講演にも来ていたヴァイオリンのディーラー、オーンダールが彼のオフィスで刺殺される。また、リーショーエン島のオーレ・ブルの館から高価なヴァイオリンが盗まれ、容疑者とみなされる旅行者が死体で発見される。これらの事件はリカルドの死とどうつながるのか?そして、ハルダンゲル・フィドルはなぜ奪われ、どこへ消えたのか?

今度はノルウェー観光案内風。グリーグとオーレ・ブルについて詳しくなりました。この2人についてのウンチクも楽しい。ノルウェーに行きたくなりました。(創元推理文庫)

鮎川 哲也/モーツァルトの子守歌

しがない私立探偵の「わたし」が持ち込む事件を、あざやかに解決するバーテン。「三番館」シリーズの最終巻。表題作の「モーツァルトの子守歌」には、「わたし」は登場しませんが、シリーズの中ではよくできた作品と思いますが。レコード・コンサートの最中に割られてしまった世界に2枚しかない幻の名盤「モーツァルトの子守歌」・・・出席者全員が疑われるが、真犯人は?アマチュア作曲家の肖像画盗難事件「クライン氏の肖像」、バイオリン奏者の名前を記したダイイング・メッセージ「死にゆく者の・・・」も収録。(創元推理文庫)

上津 レイ(うえづ れい)/横浜ヴァイオリン工房のホームズ

捨て猫を保護したためにアパートを退去するはめになった大学生・広大は、「横浜、本牧、冬馬ビルヂング、家賃4万円、敷金礼金なし、管理費光熱費響子込み」という物件を紹介される。そこは、弦楽器修理工房「響」の4階。店のオーナー響子さんは、元天才ヴァイオリニストで人並み外れた聴覚をもつ風変わりな美人だ。楽器修理とともに持ち込まれる妙な事件を解決する響子さんは、「絶対音感探偵」と呼ばれている。出会ったとたんに直前まで聞いていた曲を言い当てられ驚いた広大だったが、わだかまりをもっている兄のことを話せと言われ、一旦は断る。しかし、兄の元婚約者・詩織さんの自殺の真相を知るため、再び響子さんを訪ね・・・(KADOKAWAメディアワークス文庫)

上津 レイ(うえづ れい)/横浜ヴァイオリン工房のホームズ  2

絶対音感探偵・響子さんに今回依頼された事件は、なんと呪いのヴァイオリン。ナポレオンのものだったといわれる「ジョセフィーヌの吐息」で、現在、広大と同じ大学の詩音さんの父親が所有している。しかし、ヴァイオリンが来てからというもの、会社は傾き、飼っていたオウムが死に、父親も体調を崩し、夫婦喧嘩が絶えない・・・と不幸続きなのだ。呪いの正体は?

二胡をめぐる中華街の大家と放蕩息子の話「中華街に響く二胡の旋律」、ダムに沈んだ村と「依り代様」の風習をめぐる「聖なる夜にはパガニーニを」も収録。(KADOKAWAメディアワークス文庫)

内田 康夫/歌わない笛

倉敷市の山中で、フルートを持った女性の服毒死体が発見された。その数日後、彼女の婚約者だった男性の溺死体が吉井川に浮かぶ。警察は、自殺した婚約者の後追い心中と断定する。しかし、演奏会で津山を訪れていたヴァイオリニスト・本沢千恵子は、死体のフルートを持つ手が左右逆なことに疑問を抱き、浅見光彦に連絡する。事件の背後には、音大移転問題が・・・?
文庫本の巻末には、内田康夫氏の音楽をモチーフとした作品リスト、楽譜を使った暗号等も収録されており、お買い得!(光文社文庫)

内田 康夫/盲目のピアニスト

ピアニストとして期待されながら、事故で突然失明した輝美。彼女は偏屈なピアノ教師・奥野百合子に師事し、新しい人生を歩み始める決意をする。しかしその矢先、奥野の隣人が、そして奥野自身が殺されるという事件が起こる。真犯人は・・・・?テレビドラマ化もされた作品。主演は沢口靖子だったかな?(中公文庫)

内山 純/みちびきの変奏曲

死者1名重軽傷者4名を出した無差別殺傷事件の裁判が終わった。判決は無期懲役。しかし、殺された清藤真空(きよとう まそら)は二度と戻らない。
傍聴席で聞いていた棚橋泰生(たなはし たいせい)は、真空が在籍していた人材派遣会社の社員であり、真空の最期を看取ることになった。棚橋は、真空が死ぬ間際に何度も繰り返した指の動き、その意味を知るために、彼女にゆかりのある人々を訪ねていく。
弁当屋で一緒にバイトをしていた園部りみあは、内気で人の顔を見ることができない。その代わり、人の手を見ると色が見え、その人の気持ちが分かるという不思議な能力をもっていた。りみあは、真空の指の動きは「きらきら星」を弾いているのではないかと言い、派遣で働いていた職場のカンザキという人の話を思い出す。
次に棚橋が訪ねたのは建築デザイン事務所の神崎誠…という具合に変奏曲のように物語が紡がれていく。そして、棚橋と話した人々は、そのことをきっかけにものの見方が少し変わり、今までとは違う一歩を踏み出すことになる。最後に訪れた希望園で棚橋が見つけたものは…癒し系ミステリーとでもいうのでしょうか。なんかいい話です。(集英社文庫)

太田 忠司/ミステリなふたり 〜あなたにお茶と音楽を

愛知県警捜査一課の”氷の女王”こと京堂景子警部補。冷たい視線には誰もが凍り付き、敬われると同時に恐れられる存在である。だが、彼女には秘密があった。自宅では、料理上手な年下の夫・新太郎にデレデレなのだ。新太郎の仕事はイラストレーター。今回の仕事は、紅茶と音楽にまつわるエッセイ集。「白い恋人たち」「小さな喫茶店」「雨にぬれても」「バードランドの子守唄」「夏の日の恋」「華麗なる賭け」「僕の歌は君の歌」おいしい手料理で妻の疲れを癒しつつ、難事件も鮮やかに解き明かす。

紹介文と収録作品のタイトルを見て気に入って買ったんだけど、読み始めたら名古屋の話だった。作者の太田氏は名工大出身、名古屋在住。知らなかったわ。

各短編の冒頭に新太郎がイラストを描いているであろうエッセイ(これがまた、けっこういい話)が入り、新太郎サイドと景子サイドで話が進んでいって、最後にまとまるというオシャレなつくり。私も新太郎のような旦那様がほしい〜!(創元推理文庫)

岡崎 琢磨/歌声は響かない 「珈琲店タレーランの事件簿7〜悲しみの底に角砂糖を沈めて」収録

京都の珈琲店タレーランのバリスタ・切間美星(きりま みほし)が、コーヒーを淹れながら謎を解き明かす人気シリーズ。
タレーランを訪ねてきた高校の同級生・峰岸沙羅(みねぎし さら)。峰岸は「ずっと気になっていることがあったの」と、昔話を始める。高2の5月頭の文化祭では合唱コンクールが行われる。放課後の練習で口パクを責められた峰岸を、切間は「私が歌わないでって言ったの」「峰岸さんって音痴なんだよね」とかばう。もちろん出まかせだが、切間には峰岸が歌わない理由がわかっていたのだ。それ依頼、峰岸は切間を見直し、心を許すようになるが、まだ腑に落ちないことがあった…(宝島社文庫)

奥泉 光/シューマンの指

シューマンを愛する天才美少年ピアニスト・永峰修人に翻弄される「私」こと音大受験生の里橋優。深夜の高校で起きた女子高生殺人事件の犯人は!?切られた指は再生できるのか!?現実と虚構が交錯する中、最後に現れる真相は・・・

推理小説としては「ズル」だと思う。読み物としてはおもしろい。


「音楽」はもう在るのだ。
演奏は「音楽」を台無しにするかもしれない。
しかしだからといって、それで「音楽」が消えるわけではない。
「音楽」は傷つきもしない。

表紙の血痕、リアルすぎ。。。。。思わず、自分が汚したかと思ってしまいました。(講談社)

海堂 尊/ナイチンゲールの沈黙

第4回『このミス』大賞受賞作「チーム・バチスタの栄光」の続編。東城大学医学部附属病院・不定愁訴外来、別名『愚痴外来』の田口公平は、緊急入院した伝説の歌姫・水落冴子を担当することになる。一方で、小児科から網膜芽腫(レティノブラストーマ)という眼球の癌で眼球の摘出をしなければならない子どもたちのメンタルサポートを依頼される。患児の一人は、牧村端人(まきむら みずと)という家庭的に恵まれない少年で、その対応に看護士の浜田小夜は心を痛めていた。端人の唯一の肉親である父親が解剖されたようなバラバラ死体で発見されたことから、田口は事件に巻き込まれ、そこに厚生省の変人・白鳥圭輔も現われて、事件は思いがけない展開を見せていく。さらに、小夜の歌声には不思議な力があることがわかり・・・(宝島社)

フレドン・キアンプール/酒寄進一:訳/幽霊ピアニスト事件

ピアニスト、アルトゥアは死後50年後のカフェでいきなり覚醒した。とまどうアルトゥアだったが、気のいい音大生ペックと知り合い、クラブハウスで学生たちと共同生活をすることになる。同じようによみがえった友人パヴェルとも再会し、常に古風な舞踏会用ドレスを着ているアントワネット、双子霊媒エリザベタとクリスティンたちと、それなりに楽しく日々を送っていた。しかし、もう一人不気味な男もよみがえっていることに気づく。そして、美人ピアニスト、エレーネが殺される。犯人は?そして、アルトゥアたちがよみがえった理由は?50年前、アルトゥアはなぜ死ぬはめになったのか?(創元推理文庫)

鯨 統一郎/オペラ座の美女〜女子大生桜川東子(さくらがわ はるこ)の推理

バー・ミステリシリーズ第5弾!・・・って、他の作品は読んでないけど。

バー「森へ抜ける道」に集まるのは、常連の山内と工藤。マスターの島と3人の頭文字をとって「ヤクドシトリオ」。アルバイトの坂東いるかは最近オペラ鑑賞のためにバイト代を貯めている。そのオペラの演目に見立てて、美貌の女子大生・東子が華麗に謎を解くという短編集。

ドン・ホセはどうしてミカエラから逃げたのか。フィガロの結婚をめぐるドタバタ喜劇の真相は・・・など、オペラのストーリーの裏を読み解き(深読み?)ながら、未解決事件を解きあかし、さらにビールについてのうんちくや、昭和歌謡史も盛り込まれ、結構楽しめます。(光文社文庫)

楠木 誠一郎:作/たはらひとえ:絵/ベートーベンと名探偵!

タイムスリップ探偵団シリーズ。香織・拓哉・亮平は幼なじみの同級生。小学校6年生の時、偶然3人で明治時代にタイムスリップして以来、時々過去にタイムスリップしては歴史上の人物に出会い、一緒に謎を解いてきた。中学1年も終わろうという2月、梅の花見に出かけた3人は、転がったお弁当のおにぎりを追いかけてタイムスリップ。行き先は、19世紀はじめのウィーン。出会ったのは、ベートーベン。ベートーベンは難聴に悩まされながらも作曲をしているのだが、かきかけの楽譜の束が紛失してしまったのだ。楽譜泥棒と思われた3人は、消えた楽譜を探すことに・・・楽譜を隠したのは誰?隠し場所のヒントは4つの音。そして、「運命」誕生の真実は?

小学生向けの話で、推理小説としてはいまひとつだが、歴史的背景や当時の生活などをていねいに説明してくれている。ベートーベンが食べていた料理のレシピや逸話も盛り込まれていて、楽しめます。(講談社青い鳥文庫)

近藤 史恵/スタバトマーテル

プロとしての資質を備えながらも本番で歌えない声楽家の卵・りり子。中途半端な形で音大に残っていた彼女は、新進銅版画家・大地と出会い、付き合い始める。しかし、大地には妙な噂があった。かつて彼と付き合った女性は、精神に異常をきたしたり、交通事故で死亡したり、大怪我をしたりしているのだ。やがて、りり子の身にも危険が迫る・・・「スタバトマーテル」というのは、十字架の下に立つ聖母マリアの嘆きを歌った聖歌。(中公文庫)

沢木 褄(さわき つま)/一曲処方します。〜長閑春彦の謎解きカルテ〜

宮島満希(みやじま みつき)は退屈していた。高校の授業も退屈で、遅刻の常連。彼氏の田中は浮気ばかりしている。日本舞踊の師範である自慢の母は、父との不和からストレス性の胃痛に悩まされている。そんなある日、母親が豹変!大音量のデスメタルを聞くようになる。「のどか音楽院」で処方されたのだという。満希は怪しげな治療を告発しようと、のどか音楽院に乗り込む。そこで出会ったのは、春の海のように穏やかな青年・長閑春彦(のどか はるひこ)。彼は、人の気持ちが楽曲になって聞こえるという、妙な能力を持っているというのだ。長閑に「君の心のメロディは『きらきら星』」と言われた満希は・・・(TOブックス)

沢木 褄(さわき つま)/一曲処方します。〜長閑春彦と謎解きアプリ〜

シリーズ第2弾。宮島満希(みやじま みつき)は医学部をめざして受験勉強中。息抜きでもある「のどか音楽院」のアルバイトにも励んでいる。有能な看護師・友近蘭子(ともちか らんこ)は、無表情の裏に長閑(のどか)への想いを隠し、生活感のない彼の食事の心配までしている。そんなある日、灰瀬(はいぜ)という少々キザっぽい男が訪ねてくる。灰瀬は最近流行っている『Music Prescriber』というアプリの制作者で、心理テストのような質問に答えると、その人の悩みを解き明かし、心を癒す音楽を教えてくれるというのだ。自信たっぷりで冷たい感じさえする灰瀬だったが、心のメロディは美しく哀しげな『イエスタディ・ワンスモア』だった。そして、一人の患者の死をきっかけに、長閑も灰瀬も信念が揺らぐことになるのだが・・・(TOブックス)

沢里 裕二/悪女のライセンス〜警視庁音楽隊・堀川美奈

警視庁音楽隊でアルト・サックスを担当する堀川美奈。打楽器系の専門奏者が5人も新型コロナウィルスの濃厚接触者と判断され自宅待機となったため、交通安全啓蒙キャンペーンの一環として開催される演奏会でドラムスを叩くはめになる。緊張しながらのステージであったが、目の前の客席で始まった麻薬犯逮捕に驚き、手元から飛んだスティックがたまたま容疑者の後頭部に当たってしまう。続けて投げたスティックも別の容疑者の足の間に挟まって転倒。その活躍(?)が認められ、組対部(マルボウ)との兼務を命じる辞令が出る。
音楽隊とはまるで違う新しい部署の雰囲気に慣れる間もなく命じられたのは、森田明久(イケメンだけど、ゲイ)と組んでの潜入捜査。美奈は売れないミュージシャン「堀ミーナ」という設定だ。六本木の店でレゲエを踊る美奈に近づいてきたのは、清水谷多香子と名乗るセレブ風の女医(でも、レズ)だった。美奈は情報収集のため多香子と親しくなり、特殊詐欺の受け子に誘われる。
一方、先代の悪女刑事・黒須路子はイベント会社『プリンシパル』を通じて参院選に関わることになる。美奈と路子、それぞれの捜査が交差したとき…(祥伝社文庫)

杉井 光(すぎい ひかる)/蓮見律子の推理交響曲 比翼のバルカローレ

大学を留年し、ブログで小銭を稼ぎつつ引きこもり生活を送る葉山理久央(はやま りくお)。なぜか天才作曲家・蓮見律子に気に入られ、映画の主題歌の作詞を依頼される。報酬に目がくらんで引き受けたものの、書いたものは目の前でゴミ箱行き、「酒とかっぱえびせん買ってきて」と呼び出されては使い走りをさせられる。そんなある日、作詞の参考になるかと聴講した講義で、たった一人の受講生・本城美紗と知り合いになる。美紗は将来を嘱望されるピアニストだったが、巨匠アダーシェクの弟子になる直前に事故で左手の自由を失った。美紗の弟・湊人(みなと)は、アダーシェクの前で美紗の代わりに美紗そっくりのピアノを弾き、弟子になった。今や人気絶頂のピアニストだ。湊人は律子に作曲を依頼したいのだが、何度も断られている。そこで、理久央に交渉役をもちかけ、何度も会うことになる。理久央は会うたびにありつける高級な食事のため湊人の毒舌に耐えているが、時折垣間見せる湊人の表情にほっておけないものを感じ、付き合うようになる。
そんなある日、本城姉弟の自宅で火災が起こる。美紗は命からがら自力で逃げ出したが、焼け跡から湊人の焼死体が見つかる。湊人は登山に出かけていて留守のはずだった。しかも、死体には縛られたようなあとがあり…(講談社タイガ)

高野 史緒/大天使はミモザの香り

音羽光子、42歳独身彼氏なし。一応翻訳家ではあるが、手がけるものはロマンス小説や軽めのビジネス書、なんちゃって自己啓発本など。仕事も私生活もぱっとしないが、アマチュア・オーケストラでヴァイオリンを弾くことが至福の時間。それも、セカンド・ヴァイオリンの末席ではあるが。
ところが、光子が所属する3つのアマオケが、諸事情で次々に消滅してしまう。新しく立ち上がることになった東京アークエンジェル・オーケストラのオーディションになんとか合格し、同じような境遇の仲間とともに第1回目の演奏会に向けて練習を始める。プルトの相方は、高校生の初心者・小林拓人。お世話係を押し付けられたかと思いきや、拓人はなかなかの逸材で、光子は劣等感を抱く。
演奏会の目玉は、ヨーロッパの小国・ラ・ルーシェ公国に伝わる名器「ミモザ」を使用し、イケメン俊英ヴァイオリニスト・大里峰秋(おおさとみねあき)が演奏するチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ミモザとともに来日したラ・ルーシェ大公の歓迎レセプションで、光子も拓人も演奏することになる。レセプションでは、大公自らミモザを演奏する予定だ。
しかし、レセプション当日、ミモザが会場から消えるという大事件が起きる!

B級エンタメ小説てんこ盛りって感じですが、私の大好物が詰め込まれているので、最後まで楽しめました。おまけに、カバーイラストは小玉ユキ。アマオケの諸事情とか、いちいちうなずけるし、光子のキャラクター設定に至っては、とても他人とは思えなくて、感情移入してしまいました。(講談社文庫)

田中 啓文/落下する緑

永見緋太郎は、ジャズ・サックス奏者。テナーサックスの演奏にかけては天才的だが、音楽以外のことにはほとんど関心を示さず、世事に疎い。カルテットの主催者でトランペット奏者の唐島栄治は、そんな永見を息子のように思い、オフの日にもいろいろなところに連れ出すようにしている。ところが、一見ぼんやりしていてピントはずれの発言をするように思える永見が、意外に物事の真相を見抜くことがあるのだ。抽象画の巨匠の展覧会の目玉作品「落下する緑」が上下逆に展示されていた謎、ジャズ・クラリネットのキングが弟子に譲り渡した楽器の真偽・・・など、日常の謎をアドリブ・ソロを吹くように鮮やかに解いていく。

ジャズには詳しくないけれど、短編の間にはさまれた「大きなお世話」的参考レコード紹介も楽しい。「虚言するピンク」には、尺八と日本文化にに惚れ込んだフルーティスト・デイヴも登場。このデイヴ、思い込みが激しい上に早とちり。で、話がややこしくなるのだ。(創元推理文庫)

田中 啓文/辛い飴

日常の謎的ジャズ・ミステリー〈永見緋太郎の事件簿〉第2弾。「苦い水」「酸っぱい酒」「甘い土」「辛い飴」「塩っぱい球」「淡い夢」「淡白な毒」の7編に、特別編「さっちゃんのアルト」を収録。私が好きなのは、ある島の山間部の村に伝わる“太貝樂(たいがら)”という雅楽とお宝騒動の顛末をえがく「甘い土」。60年代にそこそこのローカルヒットをとばしながらも消えてしまったバンド“JEF CANDY AND HIS FIVE DROPS”の来日の話「辛い飴」。「さっちゃんのアルト」は、かわいい小学生でも登場するのかと思いきや、唐島氏の古い知り合いで、現ヤクザさんがご登場!でも、ほろっとして、切ない話なんです。(創元推理文庫)

田中 啓文/真鍮のむし

〈永見緋太郎の事件簿〉第3弾。これで一旦終了のようです。今回、余命あとわずかと誤解した唐島氏は、誤解は解けたんだけど自分の音楽探しというか再確認のために渡米を決意。永見も同行することになります。タイトルの「真鍮のむし」は収録作の「獅子真鍮の虫」から。他にも「塞翁が馬」「犬猿の仲」「虎は死して皮を残す」などことわざシリーズなんです。

で、今まで気づかなかったけど、「永見緋太郎」というのは作者「田中啓文」のアナグラム。「たなかひろふみ」→「なかみひたろう」なんですって。こういうペンネームを使う人ってけっこういるらしいですね。(創元推理文庫)

永井するみ/大いなる聴衆

『ハンマークラヴィーア』、完璧な演奏をしろ。さもなくば、ミカリは二度とお前の元には帰らない。〜ピアニスト・安積界宛てに、婚約者を誘拐した犯人から脅迫状が届いた。『ハンマークラヴィーア』は、かつて腎臓の生体移植手術を控えた難病の愛娘のために弾き、娘の死後は自ら封印してしまった曲である。界は、札幌音楽祭でのコンサートの曲目を直前に変更し、『ハンマークラヴィーア』を弾くのだが・・・(創元推理文庫)

中山七里/さよならドビュッシー

第8回「このミステリーがすごい!」大賞
ピアニストを目指す16歳の少女・遥。裕福な家庭で何不自由ない生活を送っていた彼女は、火災で祖父と従妹を亡くし、自分も全身火傷で瀕死の重傷を負う。一命をとりとめたものの、指はもちろん手足も自由に動かず、声帯もやられてしわがれ声しか出ない。それでも過酷な運命に立ち向かい、ピアニストとしての道を歩み始めるのだが、そんな彼女の命を狙う影が・・・
作者は1961年生まれ。岐阜県出身。ということで、舞台は名古屋です。トリックは冒頭のへんでわかっちゃったけど、愛知県在住、アマチュア笛吹きである私には、設定自体がおもしろかったです。 遥のピアノ教師・岬氏の音楽レクチャーも興味深かったし、ピアノを弾く場面の描写もおもしろかった。でも、半分ぐらい読むまで、名古屋が舞台だって気がつきませんでした。せっかく(?)地方都市を舞台にしてるんだから、もっと地方色を出していただきたかったな。まあ、登場人物にあまり濃い名古屋弁を使わせるのもどうかと思うけど。。。。。ホールも知っているところばかりだったので、感情移入しやすかったし。 (宝島社)

中山七里/さよならドビュッシー前奏曲(プレリュード)

「さよならドッビュッシー」の玄太郎おじいちゃんが主人公になって大活躍!脳梗塞で倒れ、要介護認定を受け、車椅子生活になっても、その精力と毒舌は衰えず、まわりの人間を怒鳴りつけ、車椅子でカーチェイス、銀行強盗の人質になってもへいっちゃらなのだ。「要介護探偵の冒険」「要介護探偵の生還」「要介護探偵の快走(チェイス)」「要介護探偵と四つの署名」「要介護探偵最後の挨拶」とホームズも真っ青の5つの短編のうち、「最後の挨拶が」岬洋介氏も活躍する音楽もの。ベートーヴェンの交響曲7番の海賊版レコードを聴きながら毒殺された政治家の謎!毒物は、どこにしこまれたのか?(宝島社文庫)

中山 七里/おやすみラフマニノフ

「さよならドビュッシー」と同じく岬氏が(一応)探偵役。そして名古屋が舞台。

ヴァイオリニストを目指す音大生・木戸晶は、卒業を前に実家からの仕送りが途絶えてしまう。奨学金とオケへの就職口を得るために、必死の思いで定期演奏会のコンマスの座を得る。しかし、今度は演奏会を妨害するかのような事件が次々に起きる。完全密室の楽器保管庫からストラディバリウスのチェロが消え、学長でもある天才ピアニスト柘植彰良が使うはずだった特注モデルのピアノが水浸しにされ破壊される。演奏会は無事に開演できるのか!?

  アマチュアではあるが笛を吹く身としては、何があっても音楽に向き合おうとする登場人物たちの姿に、途中何回も泣けそうになってしまった。 探偵役の岬氏も、主人公の晶も、積極的に事件を解決する気はないようだ。 だいたい、その事件というのも殺人とか起こったわけでもないし。読み物としてはおもしろかった。 地元民としては、もうちょっと名古屋色を出してほしいところだが。(宝島社)

中山七里/いつまでもショパン

ショパン・コンクールの会場で発見された刑事の死体は、10本の指をすべて切断されていた。その刑事が追っていたのは、“ピアニスト”と呼ばれるテロリスト。爆破テロが多発するワルシャワの街で、ショパンを愛する聴衆はコンクール会場に詰めかける。“ピアニスト”の正体は?コンテスタントの中にテロリストがいるのか?父親に押し付けられた「ポーランドのショパン」に悩み自分のピアノを探すヤン・ステファンス、生まれつきの全盲にもかかわらず奇跡のピアノを披露する榊場隆平、突発性難聴の発作をかかえる岬洋介・・・決勝は無事行われるのか?そして栄冠は誰の手に?

物語の舞台も内容も、一気に大きくなって、ちょっとびっくり!なにしろショパン・コンクールですから。でも、今回は私にも途中で犯人が予想できたな。そして、「ピアノの森」と話がかぶってしまって困りました。

なにも伝えないものは音楽ではない。私も、なにかを伝えたい。(宝島社)

中山 七里/どこかでベートーヴェン

岬洋介最初の事件。岐阜県立加茂北高校の音楽科2年生のクラスに、転入生・岬洋介がやってきた。たまたま隣の席になった鷹村亮は、なにかと洋介にかかわることになるが、ピアノ以外にはまるで興味のない洋介は周囲から浮きがちな存在であった。夏休みになり、9月の発表会に向けて音楽科の生徒たちが練習に励む中、豪雨による土砂崩れで、一同は校内に閉じ込められてしまう。洋介は決死の覚悟で川を渡り、救援を求めに行くのだが、クラスの問題児・岩倉の死体が発見され、洋介が容疑者となる。容疑を晴らすため、洋介は独自に調査を始める・・・(宝島社)

中山 七里/もういちどベートーヴェン

岬洋介シリーズ。時系列的には「どこかでベートーヴェン」の次になるんだろうか。

2006年。ピアニストになる夢を諦めて法曹界入りした天生高春は、司法試験をトップで合格した岬洋介とくじ引きで同じグループになる。岬とは司法研修所の寮でも隣室なので自然に接触が増えるが、知れば知るほど岬がどんな人間なのかわからなくなる。ふとしたことで岬がクラシック音楽アレルギーなのではないかと思った天生は、いたずら心から岬をピアノ協奏曲のコンサートに連れ込むが、逆に岬がピアノ経験者であること、しかもかなりのレベルであったことに気づく。

一方岬は、絵本作家の夫を刺殺したとして送検されてきた絵本画家・牧部日美子の事件に興味を持つ。日美子は犯行を否認しているが、凶器となった包丁に指紋が付着しているという不動の証拠が存在するのだ。独自に調べ始める岬に天生も関わることになるが・・・

ミステリーとしての内容はいまひとつかな。どうもいつも犯人とトリックがわかってしまう。あまり奇想天外なトリックも好かないけど。

私のお気に入りキャラは、高遠寺静教官!元判事で八十過ぎてもばりばりの素敵なおばあ様。天才・岬にもダメ出ししちゃうんだよ。(宝島社)



中山 七里/おわかれはモーツァルト

岬洋介シリーズ。時系列的には「いつまでもショパン」の次かな。

2016年11月。2010年のショパン・コンクールで2位に入賞した全盲のピアニスト・榊場隆平は、クラシック界の人気を集め、モーツァルトの協奏曲からなるツァーを目前に多忙を極めていた。そこへ、フリーライターの寺下博之が取材ににやってくる。寺下は、こともあろうに隆平の盲目は芝居ではないかと絡んでくるのだ。その後の取材に応じないでいると、寺下はツアー初日、1曲目の協奏曲20番第1楽章が終わった合間にひどい野次を飛ばしてくる。調子を狂わされた隆平の演奏は不本意な出来で、ツアー日程の延期をすることになった。
ところが、隆平の自宅の練習室で寺下の射殺死体が発見される。事件が起きたのは深夜、明かりのない室内ということで、隆平が疑われる。警察に連行されそうになったところに現れたのは、外国にいるはずの岬洋介。かつてショパン・コンクールのファイナリストとして競った
友の窮地に駆け付けたのだが…

物語としてはおもしろいが、あの犯人ではミステリーとしてはどうよ、と思う。多分お互いにかばいあっておかしなことになってるんだろうな…というのは読めちゃうし。(宝島社)

中山 七里/いまこそガーシュウィン

岬洋介シリーズ。時系列的には「おわかれはモーツァルト」の次かな。

ショパン・コンクールで入賞したエドワード・オルソンは、アメリカでも屈指のピアニストとして活動中。大統領選挙の影響で人種差別が激化するのを憂い、自分の音楽で何かできることはないかと考えた末、カーネギーホールでのコンサートで「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏することを思いつく。しかし、やり手のマネージャー・セリーナは、ガーシュウィンでは客を呼べないと反対する。そんな時、エドワードは岬洋介と榊場隆平共演のニュースを目にし、衝撃を受ける。そして、岬との2台ピアノで「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏したいと強く願うようになる。岬とのコンタクトもとれ、有意義な練習の日々が始まるが、その裏では大統領暗殺計画が進行していた。依頼されたのは〈愛国者〉というコードネームで呼ばれる熟練の暗殺者。鉄壁のセキュリティーに暗殺計画はめどが立たずにいたが、クラシック好きのファーストレディがエドワードたちの演奏を聞きたがったため、大統領夫妻がコンサートに来ることになる。〈愛国者〉の表の仕事は楽器演奏者。エドワードのコンサートの主旨に合わせて行われた追加楽団員のオーディションを受け、ステージ上から大統領を狙うことになるが…

ネタバレになるから書かないけど、あれで暗殺の道具になるのか?20メートル先の標的を仕留められるのか?で、岬はまた伝説を作っちゃったね。(宝島社)

西澤 保彦(にしざわ やすひこ)/幻想即興曲 〜響季姉妹探偵 ショパン編〜

“ショパン編”“シリーズ第1弾”ってことは、他の作曲家編もあるんですかね?姉の千香子は編集者、妹の永依子はピアニスト、見た目も性格も真逆な天然姉妹が探偵役・・・って、うたい文句なんですが、この2人は最初と最後にちょっと登場するだけ。ほぼ全編、千香子が担当する作家・古結麻里(こけつ まり)が小学生の頃に身近で起きた事件をもとに書いた小説。1972年に起きた事件から現在に至るまでなので、私にとっては懐かしさ満載で、それなりに楽しめましたけど。

夫の刺殺容疑で逮捕された美人ピアニスト・野田美奈子。麻里と同級生の荘太は、殺害時刻に自宅で「幻想即興曲」を弾く美奈子を目撃していた。アリバイがあるにもかかわらず、美奈子は夫の殺害を自供し、やがて獄死してしまう。大人になった麻里はミステリー作家を目指し、美奈子の事件を自分なりに推理して小説に書きあげようとするのだが、新たな殺人事件が起き、自分もアパートに放火される。事件の真相は?(中公文庫)

初野 晴(はつの せい)/退出ゲーム

穂村千夏(ほむらチカ)、清水南高校1年。高校入学を機に吹奏楽部に入部。フルートを始める。廃部寸前の状態にショックを受けつつも、憧れの草壁先生とともに部員を集め、普門館を目指す毎日。目下の悩みは、草壁先生をめぐる三角関係。しかも、ライバルは幼馴染のホルン奏者・上条春太(かみじょうハルタ)!ハルタときたら、男のくせに二重まぶたに長いまつげ、完璧な容姿と頭脳の持ち主なのだ。チカは、不本意ながらもハルタとともに様々な難題に挑むはめになる。化学部から盗まれた劇薬の行方や六面全部が白いルービックキューブの謎・・・その真相は!?
ハルチカ・シリーズは、2014年12月現在、「初恋ソムリエ」「空想オルガン」「千年ジュリエット」まで続編あり。チカとハルタは2年生になり、1年生の時は出場できなかった吹奏楽コンクールにB部門でエントリー、東海大会まで進む。県大会はアクト・シティー、東海大会は三重県総合文化センター・・・あれ?愛知県はすっとばすの?2人は相変わらず恋のライバルだが、ハルタがチカのテスト勉強の面倒をみたり、チカがハルタのお弁当を作ったり、これはもう「つきあっている」としか言いようがないのでは?(角川文庫)

初野 晴(はつの せい)/惑星カロン

ハルチカシリーズ、第5弾。4冊目から3年以上空いている経っている上、呪いのフルートと不思議なフルート二重奏曲が登場したので、独立させました。

ハルタとチカも高校2年の文化祭を終え、3年生が引退。いよいよ1、2年生の新体制を迎えることになる。「チェリーニの祝宴」では、レベルアップのために楽器の買い替えを考えるチカが“呪いのフルート”に出会う。美しい彫刻の総銀製フルートに魅せられたチカは、呪いをものともせず借り受けるのだが・・・呪いの正体は!?そして、「惑星カロン」では、チカたちの後輩になりそうな中学生・倉沢あゆと出会う。あゆは、アンコンのためのフルート二重奏曲の楽譜を探して、新藤誠一という青年のホームページにたどり着く。誠一は、お礼をしたいというあゆに、奇妙な謎解きを持ちかけるのだが・・・(角川文庫)

東野 圭吾/天使の耳

深夜の交差点で衝突事故が発生。信号無視をしたのはどちらの車か?盲目の少女が、ユーミンの「リフレインが叫んでる」を手がかりに、事故死した兄の嫌疑を晴らす・・・・しかし、その真相は?余談になりますが、東野氏は、確か私の主人と同じ会社にいたこともある方で、後にご登場願う森氏と同時に乱歩賞を受賞しました。(講談社文庫)

深水 黎一郎(ふかみ れいいちろう)/トスカの接吻 〜オペラ・ミステリオ〜ザ

昨年落成したばかりのニュー・トーキョー・オペラハウスの舞台、日本を代表するオペラ演出家・郷田薫の演出で「トスカ」の公演が行われていた。ところが、第2幕の最後、≪これがトスカの接吻よ!≫と、トスカがスカルピアを刺す場面で、スカルピア役のベテランバリトン歌手・磯部太(いそべ ふとし)が本当に死んでしまう。小道具のナイフが、いつの間にか本物にすり替えられていたのだ。リアリティを追求するする郷田の指示で、ナイフは一見本物と区別がつかない精巧な造り、トスカ役のソプラノ歌手・中里可奈子には「相手を殺すぐらいの勢いで頸動脈を狙うこと」という演技指導がなされていた。上演中、舞台下手の舞台に置かれた第2幕のセットには舞台装置係の三瀬(みせ)がいてナイフが小道具用だったことを確認しており、上手には歌手たちが控えていた。ナイフをすり替えることは不可能と思われたが・・・(講談社文庫)

福田 和代/碧空(あおぞら)のカノン

航空自衛隊航空中央音楽隊&ミステリー・・・大好物を並べられたら、手を出さないわけにはいきません。

成瀬佳音(カノン)は航空自衛隊航空中央音楽隊でアルト・サックスを吹いている。サックスの腕前はよしとして、楽器を持っていない時はドジっ子で天然乙女。トラブル体質なのか、なにかと事件や厄介ごとを呼び寄せてしまうのだ。消えたパート譜の秘密とか音大の練習棟の謎のメッセージとか・・・そのたびにサックス・パートの渡会や斉藤、同期の美樹など周りの仲間も巻き込んでしまうことになるのだが。

フルートの隊員は、佳音と同室でお蝶夫人をイメージさせる美貌の安西夫人(独身)。電撃結婚して産休に入ることになった夫人の後任は、テディ・ベアのような天然娘・りさぽん。フルートのイメージって・・・う〜ん。(光文社文庫)

福田 和代/群青(ぐんじょう)のカノン〜航空自衛隊航空中央音楽隊ノート2

相変わらず事件を呼んでしまう佳音(カノン)。第1話は、浜松のアクトシティが舞台。陸海空自衛隊合同コンサートにやってきた佳音たち。ところが、駐車場に止めてあったはずのバスが消えてしまう。戻ってきた時には、バスの中に隠しておいた「あるモノ」が消えていた!?そして、腐れ縁だった渡会が、沖縄の南西航空音楽隊へまさかの転勤!ショックを受けた佳音は自分の気持ちに気づく・・・はずもなく、風疹流行でメンバー不足の南西航空音楽隊の支援に向かう。再会した渡会とともに、今度は隊長室のダルマが入れ替わった謎に出会う。渡会に好意を寄せる絵里や、なぜか佳音を慕う松尾も登場し、沖縄でもトラブルに巻き込まれるのだが・・・(光文社文庫)

福田 和代/薫風のカノン〜航空自衛隊航空中央音楽隊ノート3

シリーズ3作目にして完結編。

基地内の競技会(って、もちろん演奏の。審査員もいて、内輪のコンクールみたいな感じ?)に出場した佳音たち。後輩の真弓は、審査員である向陽(こうよう)交響楽団のティンパニ奏者・神楽良知(かぐら よしとも)が、本物なのか?と言い出す。真弓が音大生の頃に会った神楽とは別人だというのだ。一方、沖縄からやってきた渡会は競技会に燃え、佳音に勝ったら話があるなどと意味ありげだが・・・「サクソフォン協奏曲」。

そして、台風が近づき、合同コンサートの開催が危ぶまれる沖縄で、いよいよ佳音と渡会の関係に決着が・・・!?「イインデペンデンス・デイ」(光文社キャラクター文庫)

バーバラ・ポール/中川 法江:訳/気ままなプリマドンナ

1915年、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場では指揮者・、トスカニーニをはじめ、美人プリマドンナのジェラルディン・ファーラー、テノールのカルーソー、バリトンのアマート、スコッティ等、絢爛たるメンバーによるオペラが連夜上演されていた。しかし、風邪をひいたアマートの代わりにフランスの大歌手デュションが出演することになり、いろいろなもめごとが起こる。傲慢な態度のデュションは、なにかと周りの恨みを買うのだ。そして、「カルメン」の舞台上で、デュションが倒れる。アンモニアが混入された喉スプレーで声帯がダメになり、結局自殺してしまうのだ。倒れる直前のデュションから犯人として名指しされたジェラルディンは、カルーソーの口車にのせられ、真犯人をつきとめようとするのだが・・・

この作品の前に“A Cadenza for Caruso”っていうのも発表されているようなんだけど、翻訳されていない。読みたいなあ・・・(扶桑社)

宮部みゆき/うそつき喇叭(「淋しい狩人」収録)

古本屋「田辺書店」の店主・イワさんの周囲で起こる、ちょっとした事件を集めた短編集。古ぼけた絵本を万引きしようとした小学生の男の子には、虐待の形跡があった。いったい誰が?この子が万引きしようとしたのが「うそつき喇叭」という絵本。宮部氏の創作だろうが、ぜひ出版していただきたい内容だ。〜小さなオーケストラのうそつき喇叭。他の楽器たちは、喇叭がうそをついてもを相手にしていなかったが、やがて戦争が起きる。喇叭は戦争の素晴らしさを説いて大勢の兵隊を集め、戦地へ渡る。そこでは突撃喇叭として活躍。捕虜として捕らえられるが、生き延びて帰還し、古道具屋に売られる。古道具屋では、オーケストラの最後の生き残り・ピッコロと再会。ピッコロは喇叭の行為をなじるが、喇叭はその声をかき消すように町の再建と平和を声高らかに歌う。そして、ピッコロが息絶えた後は博物館で静かに余生を送る。〜うそつきがのうのうと暮らす勧善懲悪とは言えないこの童話に、児童虐待というやりきれない事件がオーバーラップする。(新潮文庫)

森 雅裕/モーツァルトは子守唄を歌わない

乱歩賞受賞作。ちょうど、映画「アマデウス」が話題になっていた頃なので、かえって目立たなくなってしまって損をしていたように思いますが、名作です。モーツァルトの子守唄に隠された秘密とは!?その謎を解き明かすのは、ベートーヴェンとツェルニーの師弟。この2人の掛け合い漫才としか思えないやり取りが、抱腹絶倒のおもしろさ。文庫本版は、魔夜峰央のイラストでおかしさ倍増!続編「ベートーヴェンな憂鬱症」もあり。(講談社文庫)

森 雅裕/椿姫を見ませんか

新芸術学園音楽部のオペラ実習で、「椿姫」役の女子学生が練習中に毒死した。実在の「椿姫」を描いたマリー・デュプレシ像贋作事件が23年ぶりに浮上するなか、その鍵を握る画家が守泉音彦と鮎村尋深(ひろみ)の目前で息絶える。代役に立った第2の「椿姫」も公演初日に倒れ、第3の「椿姫」尋深の運命は・・・・?続編「あした、カルメン通りで」もあり。(講談社文庫)

横溝 正史/悪魔が来りて笛を吹く

昭和22年、世間を震撼させた青酸カリ毒殺の天銀堂事件。その事件の容疑者とされていた椿元子爵が失踪、自殺死体として発見された。「これ以上の屈辱、不名誉にたえられない」という遺書を、娘に残して。しかし、元子爵の遺作“悪魔が来りて笛を吹く”というフルート曲とともに、椿家を次々と襲う死・・・悪魔の正体とは?そして、フルート曲に秘められた謎とは?金田一耕助の推理は、悲劇を食い止められるのか。(角川文庫)


ルシンダ・ライリー/高橋 恭美子(たかはし くみこ):訳/影の歌姫

セブン・シスターズ・シリーズの2作目。変わり者の大富豪パ・ソルトは、ジュネーヴの豪邸・アトランティスで、プレイアデスの7姉妹にちなんで世界各地から迎えた養女を育てていた。(ただし、物語が始まった時点では7人目は登場していない。)パ・ソルトが亡くなった時、姉妹に残されたのは、天球儀に刻まれた各自の名前と座標、養父からの手紙と出生を知る手がかりになると思われる品物だった。
次女・アリーは、ジュリアード音楽院でフルートを学んだが、ヨット選手として活躍中。競技会でセオと出会い、彼のチームに誘われ、やがてはお互いに運命の相手だと思うようになる。しかし、パ・ソルトの死のショックもセオの存在に支えられて乗り切れるかと思った矢先、彼は競技中の事故であっけなく死んでしまう。
打ちのめされたアリーは二度と船に乗る気になれず、パ・ソルトが残した座標が示すノルウェーに向かい、ベルゲンのグリーグ博物館を訪ねる。養父が最後に聴いていたのは、グリーグの「ペール・ギュント」組曲。そして、手紙にはイェンス・ハルヴォルセンという人物が書いた本を読むように指示されており、小さな蛙の人形が同封されていた。アリーは、イェンス・ハルヴォルセンの子孫・トムの協力を得て、自分の出生を調べ始めるが…
3作目以降も出版されているのかと思いきや、ライリー氏は2021年没。3女スターが主人公の3作目は出版されているようだが、翻訳されていない。(創元推理文庫)

 

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