ウィリアム・ガードラー 《監督》 |
『ジョーズ』の二番煎じとしてお馴染みの『グリズリー』を世に放ち、最低映画界にその名を刻んだウィリアム・ガードラーの経歴を改めて見直すと、ものの見事に二番煎じしか撮っていないことが判る。スピルバーグと同い年のこの「若き凡才」がたった30歳で死んだ時、その死を誰も惜しまなかったことが、私には惜しまれてならない。これほどに徹底した二番煎じ男は、なかなか存在しないからだ。 デビュー作『ASYLUM OF SATAN』からいきなり『ローズマリーの赤ちゃん』の二番煎じで始まる彼の履歴書は、エド・ゲインをモデルにした猟奇殺人映画『THREE ON A MEATHOOK』を経て(これとて『サイコ』の二番煎じ)、4作目『アビィー』で世間の耳目を集める。評価されたからではない。ワーナーから『エクソシスト』の盗作だとして訴えられたのである。『アビィー』は上映中止となり、今日では観ることが極めて困難である。 続く『シーバ・ベイビー』はパム・グリアを迎えたアクション映画だが、やはりこれも『フォクシー・ブラウン』の二番煎じ。初めてハリウッドで撮った『プロジェクト・キル』は『燃えよドラゴン』の二番煎じ。しかし、主演が後にコメディアンに転向するレスリー・ニールセンなので、その出来は云わずもがなだ。 で、続く『グリズリー』でようやく一山を当てたガードラーは、再び動物パニック映画を放つ。『アニマル大戦争』がそれだが、今度はヒッチコックの『鳥』の二番煎じ。オゾン層に穴が開き、動物たちが人を襲い始めるという因果関係不明の物語だ。何故かレスリー・ニールセンまでもが発狂し、大暴れするシーンだけが見どころであった。 最後の映画『マニトウ』は、唯一オリジナリティを発揮させた映画だろう。内容はいろんなオカルト映画からの借り物に過ぎないが、女の背中から小人のインディアンが産まれるという無茶苦茶な展開や、そのインディアンと裸の女が宇宙銃撃戦を繰り広げるラストの突飛さには呆気にとられた。 かくして、二番煎じの上に二番煎じを積み上げた挙げ句、遂に前人未到の境地に至ったガードラーは、次回作を撮ることなくこの世を去る。フィリピンでのロケハン中にヘリコプターが墜落したのだ。 |
関連作品 |