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《涙の日》
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Lacrimosa dies illa………
Qua resurget ex favilla………
灰より甦る
その日こそ涙の日なり
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若宮の葬儀には教員の本田と司令の善行、二人が参列した。
学兵の合同葬は本部で二日に一度のペースで行われていた。葬儀といっても氏名を読み上げるだけの事務的なものだ。だが人類著しく劣勢の今、全員分を読み上げるだけでも、かなりの時間がかかっているのも事実だった。
戻ってきた善行は、開口一番こう提案した。
「スカウトが空席になりましたが、立候補者はいますか。・・・田代さん、と。
他にはいませんか。・・・わかりました」
あと、とついでのように、善行は小さな木箱を取り出した。
「“傷ついた獅子勲章“です。持っていてもいいという方は、名乗り出て下さい」
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昼休み。
滝川は赤い目をして、裏切られたとでも言いたげな顔をしていた。
自分の席に座って書類を広げている善行を横目で見ながら切り出す。
「なあ速水。善・・・委員長って冷たいと思わねぇ?
若宮とあいつ、付き合い長いって話じゃん?
なのに、泣きもしないのな」
「うーん・・・。」
速水は肯定とも否定ともとれる、曖昧な返事をした。心の中ではこう考える。
(冷たい?・・・そうかもね。
でも上に立つものが、部下が死ぬたびに泣いていたらどうなる?
いずれ全滅だ。そのとき僕らは本当に、ただの無駄死にになる。
だから僕は・・・もし君が死んだとしても、泣きはしないと思うよ。)
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下校時、速水は校門の前で善行と行き会った。
「もう、あがられるんですか。珍しいですね」
「ええ・・・まあ。」
ワーカホリックで知られた小隊司令は、歯切れ悪く答えた。
しばらく並んで歩いた。
あたりに重苦しい沈黙が降りる。
どぶ川べりに差し掛かかり、ここから道が分かれるというとき、ついに善行が口を開いた。
「速水君。あのですね。
私としたことが・・・先ほどは取り乱してしまいました。すみません」
速水ははっとなって、善行の顔を振り仰いだ。
眼鏡に阻まれ、その表情は読み難い。
「気にしなくてもいいと思いますよ。」
速水は努めて優しい声で答えた。
取り乱し方ひとつとっても色々あると、あらためて人の心の玄妙さに驚きながら。
《劇終》
★黒速水? こんな短い話もたまに。 20030106 ASIA
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