牧師室より

韓明淑・朴聖焌著『愛はおそれない』を感銘をもって読んだ。二人は愛し合い結婚するが、夫の聖焌が新6ヶ月目に、友人から借りた禁書を読んだことで、逮捕、投獄される。13年間もの過酷な刑務所生活を強いられる。妻の明淑は極貧の中、聖焌を支え、家族のために働き続ける。その夫婦の往復書簡(ラブレター)である。

検閲を受けているので、言葉は制約されている。背後にある厳しさ、悲しさを憶測する。35歳の私や40歳を目の前にしたあなたは、すっかり中年と言えますが、心は幼な子のようです。10年以上前に、恋愛中だった頃のあの心そのままです」とあくまで初々しい。

夫妻の信仰に裏打ちされた愛と信頼は、かくまで人格を深め、品位を高めるものかと感動する。

明淑も、クリスチャン・アカデミー事件で逮捕され、24月投獄される。後日、ブログで書いているが、「赤」であると自白せよと、激しい拷問を受け、幾度か失神し、死を予感する。そのような時、ディートリッヒ・ボンヘッファーの『獄中書簡集』の下記の言葉に触れる。「私が苦難をなめること、私がムチうたれること、私が死ぬこと。そのことは、それほどひどい苦痛ではない。私をもっとも苦しめるのは、私が監獄で苦難を味わっている間、外があまりにも静かだということだ」。この言葉が「私を千尋の断崖から救い上げてくれる太いロープとなった」と書いている。

民主化されてから、明淑は初の女性国務総理になり、牧師の聖焌は聖公会大学校NGO大学院兼任教授をしている。

26日の正午前に、衆院国家安全保障特別委員会で「特定秘密保護法案」が強行採決された。いたたまれなくなり、国会に行った。多くの抗議する人々に混じって座った。そこで『愛はおそれない』を読み終えた。特定秘密保護法案は国民から言葉を奪う、戦後最悪の法案であると思う。

韓明淑・朴聖焌夫妻の美しい愛、身を削る闘いに敬服するが、このような時代を招来させてはならない。事柄を正確に知り、自由な言葉を確保できる社会を築くことが、今求められている。