牧師室より

週刊「金曜日」は毎号、憲法を一条づつ挙げて、「伊藤塾」塾長、法学館憲法研究所所長の伊藤真氏が短い解説を載せている。215日号は第99条であった。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」。

この99条に「国民」という言葉がないことが重要である。伊藤氏は下記のように解説している。「およそ近代立憲国家主義の憲法は、国家権力を制限して個人の人権を保障する法です。したがって、憲法を守る義務を負うのは国民でなく、権力を行使する公務員です。本条にあえて国民を含めなかったのは、国民こそが憲法制定者であり、憲法を守る側ではなく守らせる側にいることを明確に示したものといえます。」

憲法の基本的理念は個々人の権利を守るため、為政者の権力行使に歯止めをかけるように作用するという認識である。現在、ある政治家たちは根本的な変更を求める憲法改定を主張している。これは認められることではないが、罰則規定もない。伊藤氏は「あくまでも憲法制定権者であり主権者たる国民が選挙を通じて監視し統制することが求められているのです」と書いている。

駐留米軍がもたらす岩国基地への艦載機移転問題や沖縄の女性への性暴力事件などは国民の生活を守るべき法が全く適用されていない。99条は、主権者である国民が権力を行使する者に憲法理念を実行させる力を有していると謳っている。