エース失格
Nipponham Fighters
V.S
Fukuoka Daiei Hawks
2002.4.17 Wed.
パ・リーグ公式戦
Fs-H 5回戦[東京ドーム] 観衆:17,000人
2-6
TN
1
2
3
4
5
6
7
8
9
R
H
4
0
0
2
0
0
0
0
0
6
Fs
0
0
0
1
0
0
1
0
0
2

W山田2勝 L岩本1勝2敗 HR城島5(3) 鳥越1 小笠原7 クローマー5



-STARTING MEMBER-
Fs
 
H
1
井 出
柴 原
2
森 本
バルデス
3
小笠原
井 口
4
オバンドー
小久保
5
クローマー
松 中
6
田中幸
城 島
7
木 元
秋 山
8
金 子
バークハート
9
實 松
鳥 越
P
岩 本
山 田

この日の先発は開幕投手のガンちゃんこと岩本勉。12日に故郷大阪で近鉄相手に今季初勝利を挙げたあとの初の中4日での登板だ。
しかし、12日は失点こそ1点だったが被安打5・四死球5。たった5イニングで115球も投げて降板している。
まだ4月。中4日で投げさせるにはタイミングが早すぎる気もする。

その前の試合、10日はロッテ相手にミラバルが準完全試合。
9回の先頭打者、代打・吉鶴にヒットを浴びるまでひとりの走者も出さなかった。結局走者はその吉鶴だけだった。
このときの球数がなんと80球。28人に対して80球ということは、2.857球/人ということだ。
対して12日のガンは5イニングで24人に対したので、4.792球/人となる。
これをイニング平均で比べると、10日のミラバルは8.889球/回、12日のガンがジャスト23球/回となる。

ふたつの差は明らか。ともに極端な例かもしれないが、ガンがいかにムダな球が多いかがわかる。
そして、球数が多ければ多いほど守っている野手に影響が出るし、もともとガンは走者が出ると極端に間が長くなるタイプだ。
以前から好投しても打線の援護がないイメージがあるが、その理由はこの日ハッキリとわかった気がする。
 

1回表・柴原バルデスと続けてセカンドゴロに斬る。しかし、井口を意味なく歩かせると、小久保にはセンター前ヒットを浴びる。
5番はこの打席の時点で打率.255で3本塁打と調子の上がらない松中
もともと前への体重移動で飛距離を伸ばすタイプの松中は、スランプのときは遅い球を待てずに前に突っ込んでしまう。

最初の二人には得意のスローカーブをまったく投げずに抑えたバッテリー。
できれば滑り出しの1回はカーブを使わずにストレートのキレを増しておきたいところだったが、小久保から混ぜ始めた。
ストレートは140km/hが出ない。その影響もあるのかもしれない。
松中にはそのカーブを効果的に使い追い込んだ。明らかにタイミングが合っていない。
しかし最後のツメで高めのフォークを投げた。リードミスか? コントロールミスか?
松中はやはり待ちきれなかったが、カーブほど遅くない分キレイな流し打ちになってレフト前に落とした。
これがタイムリーヒットで0-1

流れを切りやすいのは不調でも5番にいた松中だった。
その後に控えるのは前日効果的な場面で2発のソロを放った城島
2発目は井場の出端をくじき、初登板初先発の寺原の負け星をかき消す逆転のきっかけをつくった。

そんなノってる城島を抑えられる雰囲気はなかった。
何を投げても打たれそうなその空気の中、城島のひと振りは打った瞬間それとわかる完璧な一発。3ランで0-4
打ったのはストレートだったか…あまりの快心の一撃に球種がなんだったか思い出せない。
とにかくお得意の球種を絞った狙い打ちであったことは間違いない。タイミングはドンピシャだった。
城島は前日から2打席連続アーチ。昨年打率が.258で終わったが、今季は3割を残しそうな勢いだ。

ダイエーはこれでは飽きたらず、秋山がレフト線へ二塁打で出るが、バークハートをショートゴロでやっとこさチェンジ。
 

やっとこさ回ってきたFsの攻撃。この日は前日9回にフェンス直撃の二塁打を放ったひちょりが二番に入る新しい打順だ。
ダイエー山田が先発。2年目の選手。昨年も開幕からローテに入ったが2勝2敗に終わった。
私の頭の中ではあまり印象がなく、フツーの右投手のイメージしかない。オリックス川越が入ってきたときのような(笑み)
見ているとストレートの制球が悪い。若さの勢いだけで投げている感じ。140km/hを超え、ガンより球速は出ている。

井出ひちょりオガ… 全員外野フライに終わる。ん〜 打たされてるなぁ…。
 

3回表・井口小久保をともに外野フライで斬り、迎えるは松中
今度は追い込んでからカーブを投げたが、前の打席で味をしめたか松中はまたレフトへ合わせた。こんどはレフト線へ二塁打。
この辺、實松のリードの詰めの甘さが明らかにわかる。しかし、続く恐ろしい城島はフォークで見事に空振り三振。コワイコワイ。

その裏、先頭の金子がライトへクリーンヒット。最近の金子はレフトへの打球がまったくと言っていいくらい出ない。
ヒットはライト方向ばっかり。明らかに引っ張ることを抑えたようなスイングだが… もっと思いっきり振って行こうよ。
どうも金子といい同じショートの鳥越といい、上背があんなにあるのに長いのを捨てすぎだと思うなぁ。
続く實松はランナーを進められずライトフライ。さらに井出はサードゴロで最悪のゲッツー。

城島のリードは見る限り、山田は110km/h前後のカーブと120km/h台のスライダーが勝負球で、ストレートはツリ球・見せ球にしか使わない。
勢いのあるストレートは新ストライクゾーンを逆手にとった武器となった。
昨年までツリ球として使われた高めのストレートは、新ストライクゾーンでは振らないときわどい高さなのだ。
シロウト目にみてもストレートはストライクゾーンに投げさせてないのがわかるのだが、
やはりボックスに立つと振らずにはいられなくなるんだろう。ボール球を効果的に使ったいい例である。
この試合のバッテリー…とくに捕手の差は如実に現れていた。

4回表・秋山バークハートと連続三振で、これで前の回から三者連続三振。
やっとこさ調子に乗ってきたように見えたガン。9番鳥越も追い込むが、しつこいほどのファウルで粘る。
追い込むまでには90km/h台のカーブを3つ投げた。
まったく待てずに球が来るまえに空振りしていた鳥越だが、その後は何を投げてもカットする。
10球は粘っただろうか? やっとこさフェアゾーンに飛んだ当たりは、城島と同じように打った瞬間にわかるホームランだった。
しょっちゅう打ってるような完璧な一発。本人もオドロキの表情だったが、その体格だったら狙えばもっと打てると思うぞ。
金子のところで考えたことが現実になったが、よもや一発を打つとは両軍とも思っていなかっただろう。
これも「打てない」鳥越相手に三振にこだわったバッテリーのミスかもしれないなぁ。ついに満塁弾でも追いつかない0-5になってしまった。

1回に続き二死からの失点、そしてこれまた1回に続き、一発の直後に柴原にレフト奥への二塁打を許す。
バルデスを迎えたところでガンはKO。最後までストレートは140km/hを超えなかった。
脱帽してベンチへ引き下がるその姿、「エース」の称号の信頼感がまったく感じられない。
簡単に二死を獲っても、そこからピンチをつくり、点を簡単に奪われてしまう。
野手にとっては「さぁ、攻撃だ」とノりかけるとそこからダラダラされてしまうわけで、ペースもつかめないってもんだ。

二番手は「ビハインダー」加藤バルデスにこれまたレフト奥へ二塁打を浴びて0-6とされる。
井口はセンター前ヒットになりそうな当たりだったが、井出が前進前進でダイレクトキャッチ。ハァ。

4回裏・先頭のひちょりは落ちる球を空振り三振。
しかし、続くオガがライトスタンドへ一発ブチ込んだ! はや7本目。今季は各方向にまんべんなくアーチを叩き込んでいる。
オバンドーはファウルフライ、クローマーはこれまた変化球にまったく歯が立たず空振り三振。
たたみかけができないなぁ。1-6

5回表・一死一塁で城島を迎え、加藤から武藤に交代。試合前の君が代斉唱でベンチ前に現れていた武藤
前日は一軍に入っていなかったので、この日登録・即登板となった。
落ちたのは誰だろうか。前日の試合でミラバル井口の打球を右足くるぶしにマトモに受け、苦痛にゆがんだ顔で降板した。
ひとりでは歩けず、両脇をかかえられての退場だった。試合後骨には異状がないことがわかったが…。

武藤黒木純司との交換でロッテからやってきた。もともとはエースになれる先発の即戦力として入団したが、泣かず飛ばずだった。
今季はここまでイースタンでまずまずの結果を出していて、満を持しての一軍昇格。さすがに肌は焼けている。
ただ、私としては、昨年までの武藤はたいしたことのない投手のイメージがあったから、
城島なんかにぶつけてまた一発を浴びやしないかと不安でならない。

その城島、やっぱり食らいついた。レフトへの強烈な当たりだが、強すぎてシングルヒットになった。
やっぱりか… そう思いかけたが、秋山バークハートを討ち取ってなんとか抑えた。
 

5回裏・金子が二死からこの日2本目のヒットをセンター前に落とす。
バッターはもともと打撃の期待できない實松。序盤に6失点の責任もあって、代打・野口が送られた。
野口は三振に倒れてチャンスは潰れたが、そのままマスクを被ることになった。
今季は外野での出場が多い野口。そろそろ若い實松のリードを不満に感じてマスクを被りたかった頃ではないか。

武藤-野口のバッテリーは6・7回を三者連続三振を含む六者凡退。いいじゃない、武藤も。

6回裏は三者凡退の後、7回裏・一死からクローマーがこれも打った瞬間のライトスタンドへのホームラン!
15日は一試合2発を放ったクローマー、一発もエンジンがかかってきたぞ。2-6
さらにユキオが三塁線を鋭く抜く二塁打! …と思いきや、小久保がダイビングキャッチでアウト。
こんどこそたたみかけるか、と思ったところでのこのプレー。「きょうは勝てない…」そんな気持ちがよぎった瞬間だった。
木元はピッチャーゴロ。山田のストレートは最後までストライクゾーンに来なかった。

8回表は四番手の建山が抑えた。こちらもいい結果を残して頑張っている。
その裏はなんと鈴木平が3連投。15日はオガに一発を浴びるなど1イニングを2失点。16日は1イニング無失点ながら2四球を出している。
ヤクルトオリックス中日と歩み、今季ダイエーに移り4球団目。
オリックス時代が抑えとして一番活躍した時期だ。サイドスローからのシンカーが武器だが、もともと制球難の投手だ。
今季はストレートも大して速くないが、それがシュート回転してグニャングニャン曲がる。やっかいと言えばやっかいだ。
金子・野口は次々に右へ打ち上げ、井出は空振り三振。
簡単に打てそうで芯を外すナチュラルなクセ球は、井出のような打ち気にはやる打者を料理するにはピッタリなのかもしれない。

9回表。浅野コーチ登場。柴原バルデスと左が続くこともあって、ここは柴田だろうと思った。
なにしろこのところ左のワンポイントには必ず佐々木で、柴田は緊迫した場面にはまったく使っていなかった。
だからいい加減使うだろうと思っていた。
もし、柴田でなければ、前日抑えに失敗した井場が仕切直しかな? と思っていたら、やっぱり井場だった。
前日は2点リードの9回に登板しながら先頭の城島に一発、さらにピンチを招き村松野々垣には
クイックモーションができないところを突かれて立て続けに盗塁を許した挙げ句、柴原に逆転の二塁打を浴びた。
結局バークハートの三振の一死しか獲れずKO、使う予定のなかった佐々木を引っ張り出す失態を演じ、呆然として表情でマウンドを降りた。

その最後の相手の柴原からの登板。ここで抑えれば、また少し自信が戻るはずだ。
柴原は見逃しの三振。バルデス井口は内野ゴロに斬って、三者凡退。
僅差で抑えるのがクローザーの役目。この場面で抑えたって… と思うが、とりあえず結果が出たからよかった。
長い間悩むより、翌日すぐにこうして仕切直しができたんだから。

9回裏は渡辺正和が登板。渡辺秀和が昨年でクビになってしまったので、ただの「渡辺」とコール。なんだかヘンな感じだ。
なんとか打ち込みたいところだったが、ひちょりオガオバンドー、見事に三者凡退であっさりすぎる最終回。
2日連続でオバンドーで試合終了となってしまった。

これで本拠地でのダイエー三連戦三連敗。カードでは五戦全敗となってしまった。いつになったらあのチームに勝てるんだか…。
終わってみれば、ホームラン2本のほかは金子が2安打したのみ。
連続タイムリーとか、ランナーたまったところでドカンとか、そういうのが欲しいんだけど。
きょうのところは城島のリードが光ったということであきらめるか。
 

試合後、武藤柴田と入れ替わりに上がったことを知った。そりゃ出てこないわけだ。
ミラバルは落ちなかったので、ケガは重くない模様。
そして、マスコミにはガンの二軍落ち決定も発表された。
まだ4月。開幕投手が4試合の先発で「再調整」の二軍落ちだ。
昨年までゲンかつぎの三年連続開幕投手だったダイエー西村(昨年は開幕二戦目に二軍落ち)とはわけが違う。
情けない。情けなすぎる。エース失格である。
浅野コーチは「やはり彼を軸にローテを回したい。もう一度調整して戻ってきてほしい」と言ったそうだが…。
中4日は無茶だと思うなぁ。球数が多いんだから。

【●●●今季観戦通算 2勝2敗 勝率.500●●●】



2002年トップへ 観戦記メニューへ Top